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●厚労省交渉のご報告と今後の方向性について。 |
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午前11時より12時までの1時間、東京・霞ヶ関にある厚労省の一階第5共用会議室において、厚生労働省の医薬・生活衛生局の職員5名に参加していただき、予め提出の要請書に沿って厚労省との交渉・回答を求めました。 |
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今回の交渉には、2016年5月に薬価収載・販売が開始された抗がん剤タグリッソ(製造・販売元:アストラゼネカ株式会社)の間質性肺炎により昨年11月にご家族を亡くされたご遺族の方も参加いたしました。 |
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毎年この時期6月の上旬に交渉を行って来て以来、もう何年にもなりますが、これまでの交渉では、確かな回答が厚労省側から得られたことがありません。そのような経緯もあって今年度の交渉も期待できないであろうとは思いつつも、私たちがこの交渉の根底に持ち続けている、「がん患者の命の重さ」を訴えつづけていけば、必ず門戸は開かれるはずと微かでも期待を抱き、2002年10月17日にイレッサの副作用である間質性肺炎の被害にあって苦しみ続け亡くなっていった娘の写真を胸に交渉に臨みました。 |
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◆質問事項第1問 |
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(Q) |
昨年一年間のイレッサ使用による死亡被害と販売から累積した死亡被害数について。 |
(A) |
昨年の死亡被害は14例(2018年4月1日〜2019年3月31日)。累積死亡数は1037例。と回答 |
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(Q) |
質問事項第2問の、抗がん剤による死亡被害は今日も発生し続けているが厚労省として具体的にどのような対策をとってきたのか。 |
(A) |
今年度5月17日に、乳がん治療薬の「アベマシクリブ」(販売名:ベージニオ錠)にたいして「医薬品の『使用上の注意』の改訂及び安全性速報の配布等について」、「安全性速報」(いわゆるブルーレター)を発出、など今後も患者の安全を第一に適切に対応してゆく所存。 |
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(Q) |
オプジーボ(一般名ニボルマブ)=【日本では2014年、世界初の抗PD-1抗体として切除不能な悪性黒色腫(メラノーマ)に対して承認。2015年12月、切除不能な進行・再発の非小細胞がんにも適応になった。】 による死亡被害が問題とされているが現在までに厚労省に報告された死亡被害は何例か。 |
(A) |
2014年7月の承認以降2019年3月までに厚労省に報告があった死亡症例数は612例。 |
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◆質問事項第2問 |
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(Q) |
この一年間で、厚労省が行った副作用被害救済に関連した調査、検討等があれば明らかとしてください。 |
(A) |
とりあげて報告する件はない。 |
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(Q) |
「医薬品の治験を依頼をしようとする者は、あらかじめ治験に係る被験者に生じた健康被害(受託者の業務により生じたものも含む)の補償のために、保険その他の必要な措置を講じておかなければならない」と規定している。(GCP省令14条)を受けて、医薬品企業法務研究会は、「被験者の健康被害補償に関するガイドライン」をこのように定めています。 |
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「抗がん剤の中には、ホルモン療法剤のように医薬品副作用被害救済制度の対象除外医薬品に掲載されたものもある。また、放射線療法や外科手術療法の局所治療後に再発予防目的で使用される薬剤もあることから、抗がん剤及び免疫抑制剤であることを理由に、一様に、治療費 (医療費及び医療手当) のみを負担し、補償金は支払わないとすることは、必ずしも適切な補償対応とはいえない」としています。 |
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「補償のための必要な措置を講じておかなければならない」と省令で定めた厚労省の責任として、実際の抗がん剤の治験で、どのような補償の措置が講じられているのか当然把握しなければなりません。 |
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この件に対して厚労省は、私たちの問い合わせに対し、「ネットからの情報以上のものは持ち合わせていない」と回答していますがこの対応は決して許されるものではありません。改めて調査し、その上で、治験段階での抗がん剤の副作用死亡被害に対する補償のあり方を検討して下さい。
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(A) |
この要請・質問に対して納得のいく回答はありませんでした。 |
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質問の抗がん剤による死亡被害のところで、タグリッソ(販売開始:2016年5月)の使用によって亡くなられたご遺族の方より、厚労省への要望と、お願いを、以下のように話していただきました。 |
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・・・わたしの母はタグリッソを使用しその副作用である間質性肺炎の被害にあって死亡しました。 |
服用に際しては、以前に、イレッサによる多くの死亡被害のことは知っていましたので、この薬は大丈夫なのでしょうか?、と訊ねましたところ、「この薬はイレッサの改良薬で副作用も軽くて安全な薬です。間質性肺炎の副作用はゼロではありませんが、リスクは少ないと思います。」との説明でした。 |
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服用は、処方の際に頂いた服薬指導通りに自宅で飲み続けていました。退院後初めての外来診察日のときに、「入浴時など息がしづらい」ことを訴えると、医師からは、「レントゲン検査も異常なしです。喘息もあるので仕方ないね。」と言われ服薬は続けられました。 |
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次回の外来診察は2週間後でした。
受診日の前日、いつもより苦しそうな母の様子に不安を感じました。息苦しさはずっと続いていましたが緊急性を感じることができませんでした。診察を受けると・・、こんなになるまでどうしてもっと早く連れて来なかったのと言われ...、このあと母は亡くなりました(2018年11月)。処方に際して受けた説明との違いなど疑問や不信、死亡例はありませんと説明されたことに対しても、「標準治療です。特別な経過でした。」と曖昧な説明があっただけでした。医師に詳しい説明を求めても取り付く島もなく、診断書をと求めると担当の主治医ではない別の先生の名前で出されました。 |
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・・母の死を思うと、医療側の対応に不信と憤りが消えません。このタグリッソは医師の言うようになんの心配も要らない薬であったのか。はっきりとしたことを教えて欲しい。このように死亡するほどの重篤な副作用があると説明で聞かされていたら、高齢(服用時84歳)の母には飲ませることはしませんでした。自分を責め続ける毎日です。 |
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今年3月4日の新聞記事で、タグリッソを服用していた患者さんが52人も亡くなられていることを知って、医師の言うような、副作用の軽い心配要らない薬なんかではなかったのだとびっくりいたしました。母はタグリッソ80mgを服用続けていましたが、少しでも異常が見られたら休薬なり40mgに変更するなどすべきではなかったのでしょうか。迅速な対応をとっていただけていたら母は死亡することは避けられたのではないのかと思うと悔しくてなりません。 |
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この方のお話では、・・服薬手帳も頂いて、そして服用承諾書にはサインもされているとのことから、イレッサの被害と同様で、又しても「使用する患者側の自己責任、患者側が受忍しなければならない仕方のない被害」、とされるのではないかと思うと、何とも釈然としないものを感じます。医療側としては、投与に際してしっかりと訴えられない諸々は確保しながら、安易な処方と医師管理から離れた投与のあり方は、イレッサ被害と何ら変わらない治療が累々と続いているという現状に、イレッサ事件の教訓は生かされてはいなかったのかと、言葉もありません。 |
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※2016年5月の販売開始から2019年1月までに厚労省に報告のあったタグリッソによる死亡数は98名。 |
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◆交渉に対する今後の方向について |
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11時より12時まで、一時間をかけて行われました厚労省交渉は、次に繋がるような期待のできる回答が得られることなく終了いたしました。 |
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私たちの要請を受けて、参加していただきました厚生労働省の担当の職員の皆様、また、当会の活動をご理解していただき出席していただきました皆様方に、心よりお礼を申し上げます。 |
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何年も何年も、継続していけばきっと何かが得られるとの思いを胸に、厚労省との交渉を続けて来ましたが、今回の交渉を以て私たちの会は、以後厚労省に対する要請・交渉は行わないことといたします。 |
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この決断に至った背景には、10年にも及んだ厚生労働省交渉におけるその中身において、まったくといっていいほど有意義な回答が得られることはなく、これ以上の交渉は双方において無益であるとの思いから決断するに至った次第です。この決断理由となる問題には、厚労省も含め各学会、臨床の現場の先生方の多くに、私たちの団体について以下のように誤った認識を持たれていることが交渉への大きなハードルとなってきました。 |
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1)抗がん剤を否定している団体である。 |
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2)日本中が待ち望んでいる癌撲滅に向けて開発され続けている分子標的治療薬の抗がん薬に対しても、効果が得られず副作用が大きな危険な薬であるとの考えで使用・販売を否定している団体である。 |
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3)イレッサによる死亡被害は単なる抗がん剤の使用により発生したもので抗がん剤治療ではある程度使用する患者側が受忍しなければならない仕方のないものであるにも関わらず、これを理解せず否定し続けている団体である。
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・・・等々から生じた誤解、曲解が今も尚、根深く残り続け、厚生労働省の職員の多くに浸透していることには何ともし難く、交渉以前に、認識のスレが根底にある以上これを取り除くことは不可能であり、従ってこれ以上何年続けても有益なしとの判断に至りました次第です。 |
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まことに残念には思いますが、来年以降は、交渉の月日を見直し有志の皆様方により、例えは「抗がん薬のより良き使用を求める会(仮称)」。とするなどで新たに、「抗がん剤の使用により受けた死亡被害にたいする被害救済制度の創設を求める」交渉が発足できればと期待して、この度の発表といたしました。 |
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これまでの皆様方のご理解とご協力に深く感謝いたします。 |
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2019年6月7日 |
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イレッサ薬害被害者の会・近澤昭雄 |
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