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 イレッサ薬害被害者の会

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夢のような新薬で何故このような被害が起きたのでしょうか
何故、このように拡大したのか当時を振り返ってみました

2002年7月、「肺癌治療に夢のような薬」が登場しました。
その薬は・・、「癌細胞のみを攻撃して健康な細胞は壊さない分子標的薬といわれる画期的な新薬」、と治験の段階から前評判が高く、癌医療に携わる専門家の多くが挙って推奨したことで、この情報は信じられると患者たちがイレッサを求め服用しました。ところが服用間もなく、多くの患者が間質性肺炎の被害に見舞われ、息を詰まらせ苦しみながら対処の術もなく亡くなっていきました。 その死亡被害数は、承認・発売開始から僅か半年で180名、販売から一年間の死亡被害は何と294名が報告されています。この薬でいったい何が起きたのか、何故このように被害が拡大したのか、私たちは製薬会社(イギリスに本社を置くアストラゼネカ社/日本本社・大阪市北区)に、そして厚生労働省に、被害に関する詳細について問い質しましたが納得のできる回答を得ることはできませんでした。
多くの専門家が言うように、このイレッサによる多くの死亡被害は抗がん剤の治療上避けることのできない仕方の無い被害であったのか、やむ得ない治療死だったのか、当時の抗がん剤治療の背景や、このイレッサ被害が発生・拡大した経緯について資料を基に考察してみました。
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夢のような新薬...
たとえ、そのような薬があるといわれても多くの人は安易に飛びつくことなく慎重な判断をされるでしょう。
では、家族が...、自身が...、重い病を患っているとした場合はどうでしょう。
長年苦しい治療を受け続けても効果は得られず、どうすることも出来ない難治性の病を抱えているとなるとどうでしょうか。開発途中の薬剤でも良いから試してみたい、効果がまったくゼロということは無いのではないか。僅かでも望みはあるはず、と微かな期待を抱いて治験に参加している患者は少なくありません。そのような模索の中に、夢のような新薬があるといった情報に触れると、その薬を是非とも使ってみたいと思うのは当然です。
少しでも効果のある薬をと求め、次に選択出来る薬が欲しいと渇望していたガン患者たちが自ら立ち上がり行動を起したのはこのような時でした。・・世界で使われながら、日本での使用が許されていない未承認薬の早期承認を認めて欲しい、ドラッグラグを解消してくださいと、国に対して、製薬企業に対して、訴え行動していた2001年初め頃、肺がん治療に夢のような新薬が登場するらしいとの記事が紹介され始め、この情報は、インターネットの普及にともなって情報交換のツールとして多く利用されている癌等の掲示板でも頻繁に書き込みが見られるようになりました。
新聞・雑誌,学術誌等に掲載されたその新薬情報は信じられない内容で溢れて、多くの専門医により画期的な新薬と賞賛されたイレッサとは・・、「癌の病巣のみをピンポイントに攻撃して健康細胞は傷つけない分子標的薬といわれるもので、何より副作用がほとんど無い。使用するにも、病院で長時間をかけて全身に薬液を行き渡らせるこれまでの抗癌剤治療とは異なり、自宅で僅かの水で手軽に服用できる錠剤タイプであることからこの薬は次世代の癌治療を大きくリードするであろう。」※2001年8月9日・イレッサを紹介した読売新聞記事、と日本中が待ち望んだ癌医療の夜明けと評価・紹介され,癌患者にとってはまさに夢の新薬の登場でした。
このイレッサに関する情報のすべてを、癌を患う本人やその多くの家族が信じたのは言うまでもありません。もっと生きたい、もっと生き続けて欲しいとの願いはいつしか、もっと生きられる、もっと生き続けてくれると変わり、何ひとつの不安も、使用への躊躇もなく多くの患者たちがイレッサの使用を医師にお願いしました。
このように、何一つとして不安を抱くことなく服用に至ったその理由は、やはり多くの専門家より示されていたこの新薬情報が大きく影響しています。患者や家族は、画期的な薬と言われてもその薬を使うか使わないかの判断は、その薬の情報源は何処なのかということを使用への大きな目安とします。特に抗がん剤には死をも覚悟しなければならない大きな副作用があり、どのような副作用が現れるのかなど不安を抱えながら使用するわけですから命を繋ぎ続ける上で、情報の出どころは患者にとって、とても重要なのは言うまでもありません。
※メディカルトリビューン10月号(対談・21世紀の癌治療をめぐって)
※メディカルトリビューン11月号(対談・肺癌のEBMとテーラーメイド治療)
この頃の抗がん剤医療はと言うと、まだまだ未解明な部分が多くどの程度の効果が得られるのか、またどのような副作用が発現するのか等、不確かなままに使用されていたことも多く、患者やその家族は使用する抗がん剤の効果について、ある意味、運不運は多少覚悟しなければなりませんでした。酷い副作用には我慢を強いられ、効果についてはまったく得られないといった抗癌剤への不信と不安の表れとして、夫々の患者やその家族たちは、癌に効く、癌に効果があるとして販売されていた何らかの補助食品に微かな期待を抱き、多少とも不安の解消になればとほとんどの家族で使用していました。今であれば考えられないくらいの、単に営利目的のみの効果情報でも、何かをやってあげたい、やらなければの思いから、疑わしい情報と薄々は知りながら医薬品紛いを装ったものに手を出した家族は少なくありませんでした。
毎日飲み続けるだけで癌が消えるといわれた○○水、すべての癌に効くとして、多くの有名人を登場させ私もこれで癌を治しましたと連日のように宣伝を繰り広げていた○○○クス、サルのこし○○などのきのこ類等など、不確かな物とは承知していながら、多くの患者は毎月、何万も、何十万も大金を費やし万一の奇跡を夢見て、奇跡が起きる可能性はゼロではない筈と科学的に何一つとして証明のないあらゆる物に微かでもと救いを求めていました。そして、全く効果はなかったとしても、「やれることはやってあげた...。きっと当人も満足してくれたはず...。」と患者のためにはならないものまで家族たちは求め取り入れていました。
しかし<、このような補助食品で癌が縮小したり腫瘍が消えてしまうことなどあろうはずはありません。悪質と思われる効果情報に対して、科学的根拠も延命の効果もないと、漸く国は、誇大広告の禁止や、また薬事法で処罰の対象とするなど規制へと動き、癌に効果があるとして販売されていたあらゆる商品は市場から消えて行きました。このような苦い経験を経て、多くの患者やその家族たちは、癌治療には確かな情報が我が身を守り家族の命を救うことに繋がる、それが多くの大学病院などで研究が進められて、ある程度は安全性が確認されている治験薬、欧米諸国では承認されているのに日本では未承認となっている薬など、科学的データ等による信じられるものがなければ使用するべきではないと、情報収集の大切さを痛感したのです。
このような時です。
専門家による華々しい効果情報を満載した治験名:ZD1839、「イレッサ (ゲフィチニブ)」が登場したのは...。
使用すればもっと生きられると信じて、服用したいと主治医に伝え、服用承諾書にサインをした患者、その家族は、これでガンが克服できる。生き続けることができる、と明日への未来が明るく輝いて見えたことだけは間違いありません。
この当時の服用承諾書にはいろいろと副作用についての記載はありましたが、特に重大な副作用としての記載等はなく、服用開始に際して行われた医師からの説明でも、・・特に注意をしなければならない点はありません・・、と副作用に関する注意説明は何一つありませんでした。(※5分間のビデオ放映)。間質性肺炎についての記載は末尾の中程にありましたが、服用を中止したり他の薬を使用することで改善すると書かれてあり、それほど気にすることもないようで、一刻も早く服用したいと胸を弾ませながら同意書にサインを済ませて服用の第一歩がスタートしました。

2002年当時のイレッサ服用の承諾書
一日一錠、好きな時に僅かな水で何処ででも手軽に服用できる。飲み続けることで癌が消え社会復帰も果たすことが出来ると華々しい未来を信じて飲み続けたのです。今思えば・・・、重篤な、時には死亡することもある抗癌剤を、まるでビタミン剤でも処方するかのような扱いで2週間、1ヶ月分が処方され、医師の管理も無い中で、飲み忘れや重複服用が生じた例など、とても抗癌剤の治療とは思えない安易な処方が行われて、イレッサに対する安全・安心情報は医療機関に深く浸透し、使い勝手の良い素晴しい薬! として投与され続けました。
(5分間のビデオ放映)
患者たちは、何も疑わず、まるで宝物のように、"生きる源"と、何処に出掛けるにも大切にピルケースに入れて持ち歩き、職場で、出掛けた場所で服用を続けたのです。
2011年8月
近澤 昭雄
イレッサ薬害被害者の会代表
薬害イレッサ訴訟原告団代表



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