HOME

 イレッサ薬害被害者の会

リンク集 お問合せ

HOME > 私たちが信じたイレッサ >地裁から最高裁までの判決比較




夢のような新薬で何故このような被害が起きたのか
何故、このように拡大したのか当時を振り返ってみました。

2013年4月12日、最高裁判所において、薬害イレッサ訴訟の判決が下されました。
判決は、「主文・本件上告を棄却する。上告費用は上告人らの負担とする。 」、以上、閉廷しますと短いもので、2004年7月、大阪地裁への提訴から実に8年9ヵ月をかけた長い裁判は、原告側の完全敗訴で終結とされました。
 この裁判は、最後まで理解が得られることなく誤解のままに終結とされたことに対しては、残念としかいいようがありません。私たち原告が訴えたこと、求めていたことは今後の活動の中で語り続けていかなければならないと考えていますが、ここでは9年余を掛けた地裁から高裁、そして最高裁までの判決を比較して振り返ってみます。
・・ 地裁から最高裁までの判決の比較 ・・
◆地裁判決
【医師等の1〜2人が添付文書を読み誤ったというのであればともかく、多くの医師が読み誤ったと考えられるときには、医師に対する情報提供の方法が不十分であったとみるべきである。】
 東京・大阪両地裁は、全国的に起きたこの被害を、処方した一人や二人の医師の責任とするには無理があり、危険性に対する記載方法に不備があったと考えるのが適当である。と添付文書に不備があったとの判断を下し一部国とアストラゼネカに責任ありとする判決を下しました。
 提訴から6年、漸く下されたこの判決で、多少の不満はあるものの原告側は訴訟の終結を願い東京地裁、大阪地裁で示された、被告・国と、製薬会社のアストラゼネカ社との和解勧告を受け入れ、イレッサ被害の検証と再発の防止等、今後の抗癌剤医療の改革へと歩を進められるものと期待しましたが、裁判所が示した和解勧告は、厚生労働省が一体となって流した、「和解勧告拒否へ向けた声明のお願い」、なる要請メールが、各・学会に対して一斉に出され、裁判所が示した和解勧告は受け入れられないとする声明を出してください・・と、声明文案までも作成して各・学会に配布、この配布された声明文は、要請を受けた、各・学会より一斉に声明文として出され、悪質で陰湿とも言えるこれなる行為が功を奏して、裁判所が示した「和解による解決が望ましい」と勧告した和解は成就せず、国、そしてアストラゼネカは、「地裁判決は不服で到底承服は出来ない」と、各・学会より一斉に出された声明の後、高等裁判所へ控訴(2011年4月控訴)されて再び泥沼の審理が続けられることとなりました。それから1年を費やし審理された上告審は、2012年5月に判決が下されました。
◆高裁判決
【添付文書の・副作用の項の中ほど4番目に重篤な副作用である間質性肺炎に関する記載があるからとしても、添付文書の説明の対象者は患者ではなく癌専門医及び肺がんに関わる抗がん剤治療医であることから、指示・警告上の欠陥とは言えない。】
 高裁判決は、「がん治療は専門の医師が行うもので、それぞれの医師がしっかりと添付文書を見ていればこの被害は起こらなかった」として、国と企業のアストラゼネカに対する責任は無しとして、先の東京・大阪両地裁が下した判決とは間逆の判断を示しました。
・・ 地裁と高裁の判断の比較 ・・
東京・大阪両地裁の判断は
間質性肺炎等の重大な副作用情報は添付文書の冒頭に警告欄などの赤枠で囲むなどで記載しなければ十分と言えず、指示・警告上の欠陥があったと認め、製造物責任法上の指示・警告上の違反として損害賠償を認めました。
高裁判断は
間質性肺炎等、重篤な副作用が現れることが添付文書の中程4番目に書かれていたとしても、説明の対象者は患者ではなく、癌専門医及び肺がんに関わる抗がん剤治療医であることから、指示・警告上の欠陥とは言えない。
 高裁の判決には、何故、全国的に死亡被害が拡大したのかについて何も示されておりません。と言うことは薬害そのものについて、高裁として何も示していないということになります。先の地裁の判決が示すとおり、一人や二人の医師が添付文書を読み誤ったのならともかく多くの医師が読み誤ったと考えられるときは、情報提供の方法に不備があったとみるべきである・・という考えが被害の拡大防止には最も大切で、このことを無視した高裁の判断には、薬害被害そのものをまったく理解していないということになります。
 この高裁判決では、患者は何を信じて医療を受ければ良いのか。誤った医薬品情報により決断した自己責任とは何なのか。問わなければ医療そのものの崩壊に繋がると、私たち原告は最高裁判所への上告を決意しました。
 提訴から8年9ヶ月を費やした、イレッサによる死亡被害の裁判の最後の審理の最高裁判決は2013年4月12日に下されました。
◆最高裁判決
【添付文書とは・・医薬品の製造業者または輸入販売業者が作成するものであり、その投与を受ける患者の安全を確保するために、これを使用する医師等に対して必要な情報を提供する目的で記載されるものであって、医薬品を治療に使用する医師等が必ず確認し、そこに記載された使用上の注意事項に従わなければならないものである。と法で規定している。なお、医療用医薬品のように医師等が使用することが予定されるものについては、これを使用する医師等の知識、経験などを前提としても当該医師等が添付文書に記載された使用上の注意事項の内容を理解できる程度に記載されていれば足りるものと解される。】
 最高裁は、上告を棄却して原告側敗訴の判決を下しました。
 判決では、被害が起きたことについては認めながら、しかし、国や製薬会社の責任は認めませんでした。この判決の意味するところは、原告側の主張している点、(全国的に起きたこの被害について、処方した医師の責任とするには無理があり、承認した国と、開発・販売したアストラゼネカ社に責任あり)、として提訴していることに関して、国と製薬会社はこの被害についての責任はない、添付文書の記載は、医師が理解できる程度に記載されていれば良い・・という判決を下したということは、責任を負うべきは他にあると言っていることになります。。
 この被害を、暗に処方した医師の責任とするかのような判決の中身には到底納得できません。
 被害の責任の所在を曖昧にしたままの最高裁の判決は、落語ネタの大岡裁きの三方一両損にも似て、表面では温情判決とみせながら、実は薬害被害の実態を無視した巧妙なマヤカシの判決と言わざるを得ません。
 臨床の現場の医師に対しては、・・抗癌剤医療の専門医であればしっかりと添付文書を読解しなさい、この死亡被害に関しては決して無関係とは言えませんよと遠回しに諭し、国・厚労省に対しては、使用した患者にのみ被害・苦しみを負わせるには疑問であり、今後に向けた被害の救済が図られるべきであると救済制度の創設の必要性について言及、原告たちへの心情に配慮してか、判決では5人の裁判官の中で実に3人の裁判官が異例の補足意見を付けました。
最高裁が示した補足意見
 「副作用が重篤であり、本件のように承認・輸入販売開始時に潜在的に存在していた危険がその直後に顕在化した場合について、使用した患者にのみ受忍を求めることが相当であるか疑問が残るところである。法の目的が、製造者の責任を規定し、被害者の保護を図り、もって国民生活の向上と国民経済の健全な発展に寄与することにあるならば、有用性がある新規開発の医薬品に伴う副作用のリスクを、製薬業界、医療界、ないし社会的により広く分担し、その中で被害者保護、被害者救済を図ることも考えられてよいと思われる。」
※補足意見に示された 被害者保護、被害者救済とは
 医薬品副作用被害救済制度の中では、抗がん剤により受けた死亡被害については、(適正な使用ではあっても)、救済の対象から除外されているという点を指摘しているわけです。今回、イレッサのように全国的な被害として多く発生すると、信じて服用し死亡したその被害について救済される仕組みつくりが必要であるという考え方です。既に、臨床研究の場においては、抗がん剤であっても副作用被害に対し一定程度の無過失補償がなされています。
 これまで何度も申し上げてきたことですが、私たち原告は、このイレッサによる被害を薬害被害と捉えて提訴しました。その理由は、全国的に発生し、僅か2年余で500人もの患者が死亡したこの被害を、医療過誤として、処方した夫々の医師の責任とするには無理があり、この被害の真の解決にはならないとの判断からです。
 たとえどのような病気に使用する薬であろうと、重篤な副作用に関する情報ははっきりと解り易く表示しなければ、見落とされる危険性があるということで、訴訟が提起されて以降、また、添付文書でも冒頭、赤枠の警告欄の中で重篤な副作用として赤字で注意を記されて以降は、死亡被害は著しく減少していることが、訴訟を提起した私たちが唯一、安堵とするところです。
※【参考資料】薬害イレッサ訴訟・最高裁判決文
2013/10
イレッサ薬害被害者の会
代表・近 澤 昭 雄



 Copyright (C) Iressa Yakugai Higaisyanokai.All rights reserved.
裁判関連資料
Topics一覧