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◆ 抗がん剤の副作用死は仕方がないの?
何十年も前から抗がん剤による副作用死亡は仕方のない死として片付けられてきました。

その理由は、死亡に至る危険が大きいことを承知して患者は使用している薬剤であるのだから例え死亡に至っても自己責任であるとされています。民法の三大原則のひとつである「過失責任の原則」に照らせば、他人に損害を与えたとき、その損害が故意または過失という帰責性 (わざとまたは不注意という責める点) がなければ加害者はその責任を負わないとする考え方で"過失責任主義"又は "自己責任の原則" ということに合致します。確かに、今回の肺がん治療薬イレッサの死亡被害の問題では,この薬を夢のような新薬と信じて使用する決断をしたのは私たちです。その結果、イレッサの副作用による重篤な肺障害、「間質性肺炎」を発症して呼吸が出来ないまま苦しみ続け、私の娘も含めた多くの患者が窒息死しました。

「しっかりとした情報収集によって、自分の命は自分で守らなければ延命できる筈がない抗がん剤という危険な薬剤を使用するには、その薬剤による副作用死亡もあるものと、予め承知して使用している筈で、抗がん剤治療とはそういうものである。」と死亡被害に遭っても尚言われ続けてきました。しかし、このイレッサを販売するに際して、アストラゼネカ社が出していた情報は、『それぞれの副作用は、服用を中止すれば改善される』、と使用承諾書にも記載して、一般的に医療従事者の間で要注意とされている「間質性肺炎」の副作用に対しても、『風邪のような症状がでる場合がある』と記載して、これを見る限りでは、よもや死亡に繋がるような重篤な副作用などとは思えません。アストラゼネカ社が示すこのような情報を患者たちは信じ、何の不安もなく選択して知らず知らずのうちに死への階段を登っていたことなど思いもよらずに服用し続けています。

余りにも悲惨な家族の死の状況を目の当たりにして、各・関係各所に疑問を問い質しましたが、この被害は、患者側の自己選択、自己責任による死亡であると一蹴されてしまいました。

この被害を、仕方のない死として認め、諦めることは出来ないと、私たちは提訴への道という苦渋の選択したのですが・・・

その直後からさまざまな非難や抗議を受けることとなりました。
 ・・あなた達は、希望をもって服用を続けている他の患者のことは考えなのですか ?
 ・・あなた達の行動は、これから服用しようとする患者を不安に落としいれているのですよ。
 ・・あなた達の行為で、服用を怖がり、その結果死亡している患者が多くいるのですよ。
などなど、真夜中にかかってくる抗議の電話や匿名のメールによるバッシング。

また、イレッサの副作用死亡被害に関し、製薬会社のアストラゼネカ社からもコメントが出されました。『このイレッサという薬は、他に治療法もない重篤な肺ガンの患者が対象であることを考えると、イレッサの副作用で死亡したのか、それとも、当該患者が、死亡する時期にたまたまなっていたのか、亡くなられた患者にはたいへんお気の毒とは思うが、それぞれの患者の病態の悪化が死亡の原因であると考えられる。』、『仮に、イレッサが死亡の原因であったとしても、抗がん剤とは死亡に至る重篤な副作用を伴う薬剤であり、服用する患者は承知して使用している筈で、リスクとベネフイットは付きもの、今回の副作用は許容の範囲である』。とコメントが出されました。

また、この薬を承認した、当時の坂口厚生労働大臣は、『このイレッサという薬は、未承認薬の早期承認をという患者団体の強い要望で実現したもので、多くの患者たちが一刻も早く販売して欲しいという声を受けて早期承認に踏み切ったもの、副作用で亡くなられた患者にはお気の毒とは思うが、今なお、たくさんの患者さんが服用していることを考えると、くれぐれも慎重な行動を取って欲しい』とコメント。

要するに、「癌患者団体の強い要望があったから早期承認したのであって、多少の副作用で亡くなった人達が出たからと言ってとやかく言われてもね....」と言ったような内容なのです。

誰が被害を被るか解らないが、しかし恩恵を受けている人たちも多くいると言われるイレッサ。
助かりたいと願うのは皆同じなのですが、誰にその効果が得られるのかは服用してみない事には分からない。何とか自分は被害に遭いませんように....との思いで、証のない効果を期待し使用という引き金を引く。
まるでロシアンルーレットのように。


このイレッサの副作用で身内を亡くした家族は、よくこのように言われます。
・・これから先、多くのガン患者の命を救うことに繋がるのであって、決して無駄死ではありません。抗がん剤治療とは、昔から多くの犠牲の中で進歩し改善されそうやって来たのです・・と。
肺ガンに罹った以上最早どうしようもない、ならば後世の為に、例え副作用で死亡しても、たくさんの患者たちの為に役立つことであるのだから、と言った考え。

発売当初は医師管理もなく、副作用に対する注意喚起もないままに、それぞれの患者たちの思いのまま、服用していたわけで、(そんなに酷い副作用の発現など、添付文書のどこにも記載されていないから医師も安全と思って処方して、使用時の医師からの説明も簡単なもので、医師達にも・副作用は少なく効果は大きいと、そのように製薬会社からは報告されていたわけで。) それが2002年10月15日に危険情報が出されて、以降,あまりの死亡被害数の多さに驚いて、この年の暮に、厚生労働省は通達を出しました。「最低4週間の入院をさせて医師の管理の下での使用」、を義務付けてからの死亡が激減したことからみても、このイレッサの販売に伴う諸問題、また、処方のあり方は、例え抗がん剤とは言え人命の軽視によるものであり、承認の段階からさまざまな誤りがあったと言えるでしょう。

知識と良識を持った一部の医師たちはこう言っています。
「新薬とは、どのような副作用が発現するかなど全く不明で、すべてを予測することは出来ないのだから、使用する医師や製薬会社、承認している国は、販売後せめて一年間程度は、細心の注意を払って使用して行く義務がある。どのような有害事象が起きるのか分らない新薬とはそう言うものなのです」と言っています。

誰かの為の医療では、何処かで誰かが、何も知らされることなく辛い苦しみを強いられ、そして被害にあう事に繋がります。一人ひとりの人間に優しい一人ひとりの為の医療でなければ何れは自分にも悲劇は巡ってくるのは明らかです。

また、抗がん剤による副作用死亡は、医薬品副作用被害救済制度の中で認められていないということから、例え訴訟を起こしても補償の対象にはならないであろう、提訴など論外であると言った訴訟反対論。また、抗がん剤の早期承認への道を阻むものだといった・・迷惑論など多く聞かれますが、イレッサによる副作用で亡くなったとして、製薬会社のアストラゼネカ社が厚生労働省に報告した数は、発売年の2002年は半年間で180人、2003年は202人、2004年が175人、と大きな被害へと拡大し、販売開始から僅か2年半で557人が亡くなっています。しかし、訴えが起こされたり、添付文書の改定が行われ注意喚起される毎に死亡被害数が激減しています。

アストラゼネカや臨床現場の医師は、・・この死亡人数について次のようにコメントしました。
「抗がん剤の副作用死亡から言ってこの副作用は決して高い数値ではない。今後も安心して使用しても心配はいらない」...と。
人命軽視も甚だしい考え方です。
そればかりか、既に死亡被害は減少に向かっているとしながらも、その死亡減少の中味については・・「訴訟が起こされた事で、医師が訴訟を嫌い使用を控えたことが大きな減少理由と考えられる。また患者も、副作用を恐れ使用しなかったこと等が死亡被害減少の原因である。」、とコメント。「使用していれば多くの患者の命が救われたのに訴訟原告たちの行動が患者の命を奪っている。」と主張。延命の治療薬として開発されたイレッサを、まるで服用すればすべての患者で癌が完治できるといわんばかりの誤った考えで、被害を訴えた側にこそ大きな罪があると、発売僅か1年で294人もの死亡被害者が出ても尚、このような事を公言して憚らない。・・怒りも恐怖も感じます。
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余命宣告を受けた明日をも知れない肺ガン患者の命は、格好の新薬の実験台でしかないのでしょうか。一体何人の患者が死亡すればこのようなモルモット実験的な考え方を変えるというのでしょうか。詳しい説明もなく効きます論で使用するイレッサ治療は即刻改めるべきです。医師との話し合いで危険についての情報の総てを開示して双方が納得した治療でなければなりません。
「仕方のない死」と片付けてよい命など一つもありません。
2006-05

被害にあって 黙っていては癌治療は変わらない



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