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 イレッサ薬害被害者の会

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新薬学研究者技術者集団では、肺癌治療薬イレッサによる副作用被害について下記のようなアピールを発表しました。
イレッサは現在もなお副作用被害を生み出し続けており、この問題の解決に向けての当集団の見解を示したものです。
なお、このアピールは、厚生労働省、アストラゼネカ社、日本肺癌学会などの関係先に送付しています。




イレッサによる副作用被害に関するアピール
2008年7月12日
新薬学研究者技術者集団
肺がん用抗がん剤イレッサ(アストラゼネカ社)は,2002年7月に世界に先駆けて承認された。申請からわずか4か月で承認の方針が決まるという異例の迅速審査であった。

 しかし,承認前から「副作用の少ない夢の新薬」などと宣伝されてきたにもかかわらず,イレッサの発売直後から間質性肺炎などの副作用による死亡者が相次いで発生した。その数は,発売後3か月間で13人,2002年12月中旬(注1)までに114人,2005年3月(注2)までに607人,2008年3月までには734人と増え続け,あたかも“市販後人体実験”とも言うべき様相を呈した。しかも,この数自体,副作用死亡者の全数が把握されたものではなく,その実数は2,000人を上回るとも推定されている(注3)。

 このような事態を招いた根本的な原因はイレッサの拙速な承認審査にある。

 イレッサは,承認後に延命効果を確認するための第III相試験を行うという条件付きで,第II相試験までの結果に基づいて承認された。しかし,イレッサの承認後に海外から報告された一連の第III相試験(INTACT-I,INTACT-II,ISEL,SWOG)では,いずれもその延命効果を証明することができなかった(注4)。さらに,承認条件に従って行われた国内での第III相試験(2007年2月発表)でも延命効果が証明できなかった。

 一方,イレッサの安全性に関しては,動物実験で得られていた肺毒性の所見が隠蔽ないし無視された。国内外の第III試験では呼吸器系の重篤な有害事象が多数観察されたにもかかわらず,そのほとんどをイレッサの副作用とは認めず,国内の試験で発症が確認された間質性肺炎(3例)についても添付文書の「重大な副作用」欄に記載するにとどめ,「警告」欄へ記載するなど,副作用予防のための相応な措置を怠った。

 このような事実の経過にもかかわらず,厚生労働省は「第II相試験までの資料により,…高い有効性を確認し,リスクを上回る有用性があるとして承認したものであり,…適切に対応していた」(注5),「必要な安全対策を講じてきている」(注6)などとする一方,「間質性肺炎等による死亡例が600例以上となっていることの原因は明らかではない」(注6)などときわめて無責任な態度に終始してきた。

 このような状況のなか,2004年,イレッサの副作用で死亡した患者の遺族は副作用被害の救済を求めてアストラゼネカ社と国を提訴した。

 以上のような経緯をふまえてイレッサによる副作用被害に関して次のとおり要望する。

1. 薬事法は「厚生労働大臣は,医薬品が効能効果に比して,著しく有害な作用を有することにより,医薬品として使用価値がなくなったと認めるとき,その承認を取り消さなければならない」旨を規定している(74条の2)。上述のとおり,イレッサはこの規定に該当する可能性が極めて高い。したがって厚生労働省は,薬事法の規定(69条の3)に基づいてイレッサの販売を直ちに一時停止したのち,イレッサの「医薬品としての使用価値」について抜本的な検証を行うこと。

 その存在意義に大きな疑念が残る“医薬品”が,漫然と放置される事態は,この国の薬事制度への信頼を著しく損なうものである。
2. 厚生労働省は,イレッサによる副作用被害の発生と拡大を防止することができなかった原因について真摯に検証し,今後の薬事行政への教訓とすべき点を明らかにすること。

 検証の対象とする事項には,承認審査に直接かかわる問題のほかに,少なくとも次の事項を含める必要がある。
(1) 副作用被害の実態は正確に把握できているのか。
(2) 適応症を,既存の化学療法による未治療例を除くなど,より限定的なものとすることによって副作用被害の拡大を防ぐことができたのではないか。
(3) 承認条件として市販後全例調査を義務づけることによって投与の実態と副作用被害の発生状況を早期かつ的確に把握することができたのではないか。
(4) 緊急安全性情報が発出(2002年10月)されたのちに決定された副作用対策の実施状況は点検されていたのか。
(5) 事実上の承認前広告など,アストラゼネカ社による不適切な宣伝広告活動が副作用被害の拡大を招いたのではないか。
(6) 日本肺癌学会「ゲフィチニブ使用に関するガイドライン」(注7)の作成委員にアストラゼネカ社と利害関係のある者が多数含まれていたことにより,このガイドラインの公正さが損なわれたのではないか。
3. 厚生労働省は,イレッサによる副作用被害者の遺族が被害の救済を求めていることに対して,「重篤な疾病等の治療のためにはその使用が避けられず,かつ,代替する治療方法もない場合には,承認を受けている当該医薬品を使用することに伴い発生する副作用は受認せざるを得ない」としている(注5)。しかし,イレッサによる副作用被害は,すでに明らかになっている範囲でも,厚生労働省が援用するような一般論に解消しうる規模をはるかに超えるものである。

アストラゼネカ社と厚生労働省は被害者遺族の要求に誠実に応えるべきである。
注1:厚生労働省が第1回ゲフィチニブ安全性問題検討会を開催した時期。
注2:厚生労働省がゲフィチニブ検討会の結論に基づいてイレッサの継続使用を認めた時期。
注3:小池晃参議院議員質問主意書(2005年2月8日)・同答弁書*による。
  *参議院<質問主意書情報 http://www.sangiin.go.jp/japanese/frameset/fset_c03_01.htm
  162回(常会),提出番号2。
注4:これらの試験結果を受けて,EUではアストラゼネカ社がイレッサの承認申請を取り下げ(2005年1月),米国ではFDAが新たな患者への使用を禁止している(2005年6月)。
注5:平岡秀夫衆議院議員質問主意書(2008年3月12日)・同答弁書**による。
  **衆議院<質問答弁 http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_shitsumon.htm
  169回,質問番号166。
注6:桜井充参議院議員質問主意書(2006年4月27日)・同答弁書***による。
  *参議院<質問主意書情報 http://www.sangiin.go.jp/japanese/frameset/fset_c03_01.htm
  164回(常会),提出番号51。
注7:2005年3月,厚生労働省がイレッサの継続使用を認めた際,本「ガイドライン」を医療関係者・患者に周知することなどが条件とされた。



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