1. |
薬事法は「厚生労働大臣は,医薬品が効能効果に比して,著しく有害な作用を有することにより,医薬品として使用価値がなくなったと認めるとき,その承認を取り消さなければならない」旨を規定している(74条の2)。上述のとおり,イレッサはこの規定に該当する可能性が極めて高い。したがって厚生労働省は,薬事法の規定(69条の3)に基づいてイレッサの販売を直ちに一時停止したのち,イレッサの「医薬品としての使用価値」について抜本的な検証を行うこと。
その存在意義に大きな疑念が残る“医薬品”が,漫然と放置される事態は,この国の薬事制度への信頼を著しく損なうものである。
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2. |
厚生労働省は,イレッサによる副作用被害の発生と拡大を防止することができなかった原因について真摯に検証し,今後の薬事行政への教訓とすべき点を明らかにすること。
検証の対象とする事項には,承認審査に直接かかわる問題のほかに,少なくとも次の事項を含める必要がある。
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(1) |
副作用被害の実態は正確に把握できているのか。 |
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(2) |
適応症を,既存の化学療法による未治療例を除くなど,より限定的なものとすることによって副作用被害の拡大を防ぐことができたのではないか。 |
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(3) |
承認条件として市販後全例調査を義務づけることによって投与の実態と副作用被害の発生状況を早期かつ的確に把握することができたのではないか。 |
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(4) |
緊急安全性情報が発出(2002年10月)されたのちに決定された副作用対策の実施状況は点検されていたのか。 |
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(5) |
事実上の承認前広告など,アストラゼネカ社による不適切な宣伝広告活動が副作用被害の拡大を招いたのではないか。 |
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(6) |
日本肺癌学会「ゲフィチニブ使用に関するガイドライン」(注7)の作成委員にアストラゼネカ社と利害関係のある者が多数含まれていたことにより,このガイドラインの公正さが損なわれたのではないか。 |
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3. |
厚生労働省は,イレッサによる副作用被害者の遺族が被害の救済を求めていることに対して,「重篤な疾病等の治療のためにはその使用が避けられず,かつ,代替する治療方法もない場合には,承認を受けている当該医薬品を使用することに伴い発生する副作用は受認せざるを得ない」としている(注5)。しかし,イレッサによる副作用被害は,すでに明らかになっている範囲でも,厚生労働省が援用するような一般論に解消しうる規模をはるかに超えるものである。
アストラゼネカ社と厚生労働省は被害者遺族の要求に誠実に応えるべきである。
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注1:厚生労働省が第1回ゲフィチニブ安全性問題検討会を開催した時期。 |
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注2:厚生労働省がゲフィチニブ検討会の結論に基づいてイレッサの継続使用を認めた時期。 |
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注3:小池晃参議院議員質問主意書(2005年2月8日)・同答弁書*による。
*参議院<質問主意書情報 http://www.sangiin.go.jp/japanese/frameset/fset_c03_01.htm
162回(常会),提出番号2。 |
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注4:これらの試験結果を受けて,EUではアストラゼネカ社がイレッサの承認申請を取り下げ(2005年1月),米国ではFDAが新たな患者への使用を禁止している(2005年6月)。 |
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注5:平岡秀夫衆議院議員質問主意書(2008年3月12日)・同答弁書**による。
**衆議院<質問答弁 http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_shitsumon.htm
169回,質問番号166。 |
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注6:桜井充参議院議員質問主意書(2006年4月27日)・同答弁書***による。
*参議院<質問主意書情報 http://www.sangiin.go.jp/japanese/frameset/fset_c03_01.htm
164回(常会),提出番号51。 |
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注7:2005年3月,厚生労働省がイレッサの継続使用を認めた際,本「ガイドライン」を医療関係者・患者に周知することなどが条件とされた。 |
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