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 イレッサ薬害被害者の会

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JCPA・(Japan Cancer Patient Alliance)
NPO法人 日本がん患者協会理事長・・山崎文昭氏と
イレッサ薬害被害者の会・・近澤昭雄の久しぶり対談

NPO法人
日本がん患者協会理事長山崎文昭さん
2008年1月26日 ・・・午前10時に埼玉県大宮駅のコンコースで待ち合わ、山崎氏と久々の再開をしました。
山崎氏と初めて会ったのは2004年、私がイレッサ副作用の問題で厚労省で記者会見を開いているところへ、別の件で厚労省に来ていた山崎氏が、肺がん治療薬の副作用問題の記者会見を開いている団体がいると聞いて尋ねてくれて挨拶を交わしたのが始まりで、それ以来時々メールや電話で交流を深め今日に至っています。
今回は、山崎氏が主宰する「がん情報ネットワーク」という月刊誌の取材ということでカメラ担当の方や、医療コーディネーターの方、日本がん患者協会の副編集長も同席しての話しとなりました。
イレッサ薬害被害者の会
近澤昭雄
山崎氏とは久々の再会です。
私近澤は、さいたまの大宮駅は地元ですが、山崎氏は群馬県前橋市から出掛けて来てくれました。
今回は、山崎氏が主宰する「がん情報ネットワーク」という月刊誌の取材ということでカメラ担当の方や、医療コーディネーターの方、日本がん患者協会の副編集長も同席しての話しとなりました。
※この日の対談は、「がん情報ネットワーク・2008.3 Vol.7」に掲載されています。

●近澤昭雄 ・ イレッサ薬害被害者の会 代表
全国薬害被害者団体連絡協議会 世話人
●聞き手・山崎文昭 NPO法人日本がん患者協会理事長
●構成・撮影・朝美 淳 医療ジャーナリスト
リード)・・・
医薬品は「両刃の剣」といわれるように、薬効がある代わりに副作用を伴います。とりわけ、がんの3大療法の1つ、化学療法に用いられる抗がん剤の副作用は激しいものです。

 この副作用が引き起こす健康被害が薬害で、サリドマイド、米国売血由来非加熱血液製剤命、フィブリノゲン製剤……などがよく知られています。

 今回は、そのような薬害被害に詳しい近澤昭雄さんをお迎えして、薬害被害者とがん患者の立場を超え、互いに通低する「抗がん剤の承認」「薬害の防止」「製薬企業の情報公開」などを主軸に据えた話をうかがいました。

●副作用は防止できないが、薬害は防ぐことができる


山崎・・今日は「いい薬を早く承認してもらい、かつ薬害をなくすためには、どうすればいいのか」というテーマでお話をうかがいたいと思っています。まず確認です。標準治療が終わってしまったがん患者さんの中には、未承認薬でも使いたいと思っている人もいます。逆に、薬害被害者の方々からすれば、そんな安全が確認できていない薬をなぜ使うのか、ということになると思います。このように、がん患者さんと薬害被害者の方々とは、相反する概念がある。それでも、いい薬を世の中に提供してほしいという思いは、一致しているはずです。

近澤・・おっしゃる通りです。私たちは、その抗がん剤に付き物の副作用を薬害のレベルまで持っていってはいけない、と考えています。今の日本の医療レベルなら、それが可能です。それなのに薬害にしてしまうのは、人命の軽視が最も大きな問題ですが、知恵と決断する勇気が足りないからだ思います。というのは、1〜2人の薬害被害が出た時点で、情報を素早くフィードバックさせる。そうすれば、被害の拡大を未然に防ぐことができます。それができれば、薬害は副作用で終わるんです。

山崎・・ 薬には効能があれば副作用もある。それは、近澤さんも認めていると思うんです。では、副作用と薬害の違いはどのような点だとお考えでしょうか?

近澤・・ 副作用は、薬を開発・販売する過程において、臨床中に出てくるのを前提として避けられないものです。それに対し、薬害とは、医薬品の使用による有害事象を放置し規模が拡大したもので、特に不適切な医療行政の関与が疑われるもの、防ぐことができるものです。

山崎・・ 一言で言ってしまえば、どのような副作用があり得るのかわからないまま使われたり、そのまま放置されたりすると薬害になるということでしょうか?

近澤・・ そうです。

山崎・・ 今のお話から推察すると、副作用は、薬自体によるものと、使用方法によるものの2種類があるように思いました。どのような副作用があるのか明確にわかっていれば、薬の用量を抑えたり、場合によっては使用しなかったり、と患者さん一人ひとりの状態を考えていけば問題がないということですね?

近澤・・ そう思います。問題が生じても患者への不利益を極力少なくする努力が必要です。患者さんが抗がん剤の副作用で亡くなった場合、医療機関や医師は厚生労働省のへの報告が義務付けされています。副作用報告制度というものです。しかし、報告しなくても罰則がない。製薬会社からの報告も一九九六年の薬事法の改正により報告が義務付けられましたが,それまでは任意の報告が許されるという非常に曖昧であったわけです。たとえば、2007年3月時点で、イレッサの副作用で亡くなったという報告が出されているのは706人。罰則規定がないことを考えれば、実際はかなりの数であることが想像できます。つまり、患者さんががんで亡くなり「死因は副作用によるものです。厚生労働省に報告しますか?」と医師が患者さんの家族に話したとします。家族が「うちはいいです」と言うと、それで終わってしまうことが多いのが現状です。

山崎・・ その報告は、どこから製薬企業にいくのですか?

近澤・・ 医療機関からMRを通じて報告されます。

山崎・・ ということは、製薬企業に情報が伝わるまでタイムラグが起こってしまう場合もある?

近澤・・ はい。だから、新薬の承認申請がおりたら、医療機関と厚生労働省、製薬企業は連携を密にすることが要求されるわけです。

●優れたデータが証明されたジェネリック薬品は、使用させるべき

山崎・・ 薬害のお話を聞きましたが、1日でも早く新しい承認薬を待ち望んでいる患者さんは、どうすれば安全な薬が使えるのでしょうか。現在、日本の薬の承認は、欧米に比べて7〜8年も遅れています。ただし、この問題は2つに分けなければいけません。まず、日本で開発される薬は、第1相試験(健常人に対して開発中の薬剤を投与し、その安全性を中心に調べる)や第2相試験(比較的少数の患者に対して安全性が確認された用量の範囲で薬剤を投与し、その安全性を調べる)をしなければいけない。それなのに、患者さんのなかには「マウスで効いたから、すぐに使わせろ」と言う人もいますが、それはナンセンスです。それに対し、欧米で承認されている薬を日本で使うケースは「日本人と欧米人では違う」と、承認を待っている間に患者さんが亡くなってしまう場合がある。だから、承認を待っている人には、そのような薬を自己責任で使わせていく。ただし、なにか起こったら、すぐに報告させる。そんなシステムを確立させたほうが、患者さんにはプラスになると思うんです。

近澤・・ たとえば、アメリカで使われている標準治療薬が、140〜150種類あるとします。これらの薬を日本に持ってくることは可能だと思います。ただし、法制度が必要です。なぜかというと、先発薬(新薬)と後発薬(ジェネリック薬)がありますが、日本の医療機関は後発薬を使いたがらない。儲けが少ないから……。パテント(専売特許)が切れた薬を日本に持ってきて「アメリカではいい薬です」と言われても、メリットが少ないから、なかなか持ってこられない。

山崎・・ ジェネリック薬に関しては、まったくおっしゃる通りで、失敗だと思います。以前、ジェネリック薬品業界に「後発薬なので安くしろ」と言ったら「後発薬品企業はみんな潰れてしまう」と言われました。

近澤・・ ジェネリック薬には臨床の場でデータの集積されたものが多くあるし、それを早く使用したいと望んでいる人はたくさんいます。第3相試験(多数の患者に対して薬剤を投与し、実際の治療に近い形での効果と安全性を確認する)でも、その薬効などのデータが証明されているので、どんどん使わせるべきです。

●相談窓口のPRが大切

山崎・・ ぼくは薬害被害について、あまり詳しくないのですが、薬害の情報公開・情報提供をするというのは肝心だと、はっきりと言えます。その部分に関しては、近澤さんのご意見に共感できますし、そのことを徹底的に追求していくことが、がんの患者さんたちのためにもなると思うんです。もちろん、イレッサを使ってよかった、という患者さんもいるので、この薬がなくなってしまっては困ります。ただ、イレッサに関しての情報は公開してほしい。その結果、患者さんたちがイレッサを使うか否かを決めればいい。がん患者さんたちも、いつ薬害の被害に遭うかわからないので、情報公開は求めているんです。

近澤・・ そうですね。理想を言えば、有害事象(薬物を投与された患者に起こる、あらゆる好ましくない出来事)が起きたときに、がん患者さんたちと、私たちのような薬害被害者の会の人たちが一緒になって情報を共有できる場は、必要だと思います。そのような機関ができれば、医療関係者も製薬企業も、その中に入ってもらい、薬害の拡大を防ぐことができるはずです。今まで、がんの患者会と薬害被害者の会は、分断されていたように思います。

山崎・・ そうかもしれない!

近澤・・ 医薬品の問題に関する厚生労働省の検討会でも「患者会の人たちがたくさん入っています」と言うのですが、患者さんの意見を取り入れていない。そこに、うちのメンバーが何人か入っていても、結局はその意見が通ったためしは、あまりありません。それでも厚生労働省は、患者会や一般市民の声も参考にしているというスタンスだけは取る。この考え方は、そろそろ改めてもいい時期にきていると思うんです。

山崎・・ おっしゃる通りです。第三者の意見を取り入れないとダメです。

近澤・・ それと、薬害の相談機関は機能しているのですが、あまり知られていません。イレッサに関しては、うちに相談の電話やメールがくるんです。そんなとき、私は「主治医と相談しましたか? イレッサのことをよく知っていますか? そして、それによって判断するのは、あなた自身ですよ」と答えるだけで、使用を止めさせたことは1度もありません。

山崎・・ ぼくも同じ状況で、家に相談の電話がかかってくることがあります。でも、2007年にがん基本対策法が施行されてから、がん診療連携拠点病院内にできた相談支援センターで、がんに関する相談ができるようになったんです。しかし、そんな相談窓口があることを知らない人が多い。だから、先月、日本中の拠点病院に、「もっと相談支援センターのPRをしてほしい」という文章を送ったんです。よく知られていないだけで、システムはあるわけですからね。

近澤・・ ほんとうにそうですね。

●情報公開には、第三者を交え、透明性を確保すべき

山崎・・ 話は変わりますが、患者さんに対して、薬や治療に関する正しいデータがわかりやすく提供されることは大切ですが、患者さん自身も自らデータを収集することも大切だと思うんです。

近澤・・ おっしゃる通りで、抗がん剤のデータは絶対に必要です。明確なデータを知り、主治医とコミュニケーションをとったうえで、患者さん自身が薬の使用を選択することが、本当の自己責任です。情報をはっきりさせないまま選択するのは、真の自己責任とは言えません。ただ、どこで、どのような情報を取るかが問題ですが。

山崎・・ それと、薬というのは、それ自体の問題だけでなく、どのような医療施設が、あるいはどんな医師が使うのかということを、国なり医療提供者もよく把握しておかなければいけない。あと、日本の場合は、承認したらしっぱなしで、よほどのことがない限り、承認は取り消されない。薬害があったら、すぐに謝罪して、しっかり追跡調査をすることが大事です。

近澤・・ その謝罪も被害に遭って亡くなった人に伝えるのは当然ですが、薬を使用している人たちに対して「ごめんなさい、早く情報を出します」と、素早い対応が必要です。

山崎・・ がんの情報に関しては、相談支援センターなどから開示されるようになってきています。ただし、抗がん剤を使える腫瘍内科医が少ないとか、被害の状況がスムーズに伝わっていない、といった課題はあります。

近澤・・ ただ、日本の抗がん剤医療が大きく変わったのは事実です。その1つの転機になったのは、イレッサの薬害訴訟だと思っています。

山崎・・ それをきっかけにして、患者会活動も変わっています。

近澤・・ 山崎さんたち、がん患者会の人たちは、FDA(日本の厚生労働省にあたる米国厚生省)に視察に行ったことがあったでしょ。アメリカで薬害が起きたら、そのFDAが製薬会社にデータの提出を求めたら、政府を介してすぐに出てくるそうです。

山崎・・ それは政府と製薬企業が密な関係だからでしょ。日本の場合は、両者が密になり過ぎると、癒着の問題も起こってくる。だから、情報公開は透明性が伴わないといけない。

近澤・・ 透明性というのは、個々に透明だと思っていたら、それが透明性だということになってしまうかもしれないし……。

山崎・・ それを担保するのが、第三者の目です。そういう意味で、薬害被害の会と、がんの患者会が一緒になって、監視していかなくてはいけません。つまり、情報公開には、第三者の目を入れて、透明性を持たせろ、ということです。それは、安心して薬を使うためには最低限のことですからね。薬害被害の会の人たちも、情報公開のことは言ってください。こちらも応援しますので……。

●5年、10年先の製薬企業に期待している

近澤・・ 私は、製薬企業の情報公開によって患者さんが得るのは安心だけではなく、「その薬のデータを知ったうえで使用している」という相互信頼だと思います。副作用被害が起きても、情報の公開で最初からわかっていれば、なんとか対処の可能性がありますから。

山崎・・ おっしゃる通りです。ただ、それ以前に、製薬企業の倫理観に期待していないんです。倫理は、人が変われば変わってしまうし、企業の文化によっても違ってくる。あくまでも、第三者を通しての透明性のあるものにシステム化してかないといけない。第三者機関に製薬企業や厚生労働省、自分たちみたいな患者会の者が入って、質を担保していくのが、いちばんいいシステムではないかと個人的には思います。

近澤・・ 私は、5年、10年先の製薬企業に期待したいと、医学部の人たちに啓蒙活動を続けています。医学生のうち、MR(製薬企業の医薬情報担当者)になる人が確実に1割強はいるので、大学の医学部の講義を主に活動しているんです。裁判のほうは、勝ち・負けではなく、事実がどうであったかを知る事が重要なんです。そして、その過程を世間に問うていく。その結果、製薬企業に間違いがあれば、それを認めて復習してくれればいいし、厚生労働省は今後の医療を見据えて法制化を目差してほしい。そのための訴訟でもあります。

山崎・・ それはまったく同意見です。一部の人だけがわかっていてもダメなわけで、一般の患者さんたちにも問題提起していかないといけません。

●国・医療機関・企業と共に団体の垣根を超え、いい医療をつくっていきたい

山崎・・ ぼくらには、日本がん医療の均てん化、つまり地域による医療格差をなくそうという考えがベースにあるんです。そのためには、まず診療のガイドラインがあって、そのうえでエビデンスと経験が必要だと考えています。

近澤・・ その土台を早くつくらないといけませんね

山崎・・ それがシステムであって、そうものをつくる活動が必要ですし、一般の患者さんたちも求めていかないといけない。

近澤・・ それで私は、医薬品副作用被害救済制度(医薬品を適正に使用したにもかかわらず、副作用による健康被害が発生した場合に、医療費・医療手当・障害年金・遺族年金などの諸給付を行い、被害者の迅速な救済を図る制度)の対象に抗がん剤を入れてほしいと訴えているんです。抗がん剤の副作用は、ある程度、抑えられる技術は付いてきている。だから、医薬品副作用被害救済制度に組み込んでもらったら、医師たちは訴訟を嫌い勉強する。大学の医学部の中でも専門医の育成に力を入れる。抗がん剤を勉強しなければならなくなる。私はそう思っているんです。

山崎・・ 大部分の医療従事者は一生懸命にやっていて、もっと給料を上げてもいいと思いますが、その分、医療の質をしっかり担保してもらいたい。だから、医師には「一生懸命、勉強しろ」と言っていかないといけない。近澤さんたちも、ぼくたちも「日本のがん医療をよくしたい」という1つのテーマを別な角度から見ているだけの話で、言いたいことは同じなんですね。以前は、近澤さんのような被害者の方々とか、ホスピス医などが発言することを嫌がるがん患者さんもいたのですが、現在は変わってきていて、がん医療には治療だけでなく予防があったり、看取りがあったりすることがわかってきています。だから、互いに協力し合えるところはし合って、国民に事実を伝えていきたいですね。あとは、医療機関や厚生労働省、製薬企業にも「悪いことは悪い」と指摘するけれど「共に日本の医療をよくしていきましょう」と言いたいですね。

近澤・・ その考えは、私たちも同じです。反目してはダメですよね。考え方はいろいろあるんだから、互いに聞き入れないといけません。

山崎・・ 意見がまったく同じ人間なんていやしない。今日の近澤さんとぼくのように、考えが100%同じでなくても、一致する部分があればそれでいいんですよ。垣根を取り払って、日本にいい医療がつくられるよう、互いにがんばりましょう。今日は、貴重なお話をありがとうございました。
本インタビューは2008年1月26日に行われたものです。



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