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 薬害イレッサ東日本訴訟
薬害イレッサ東日本訴訟(東京地裁)は、第一回期日が2005年2月16日に開かれて、今回期日で14回目となりました。ガンの中でも特に死亡率の高い肺がんの新薬として販売された、イレッサによる間質性肺炎という聞きなれない副作用被害の裁判ということで、支援の輪や、ご理解して頂くのは難しい中、皆様にはいつも傍聴に駆けつけて頂き有難うございます。
今回のイレッサ裁判は、前回同様、東京地裁103号大法廷で13時30分より行われました。今回は、原告側証人として出廷していただく福島雅典先生(京都大学医学部附属病院教授、探索医療センター検証部部長)の主尋問ということで、大阪方面からも大勢の学生の皆さんが傍聴に掛けつけていただきました。整理券による抽選は行われませんでしたが、20人ほどの皆さんは法廷に入ることが出来ずに、裁判所外や隣接の弁護士会館の控え室で待機していただくというほどたくさんの皆様に参加していただきました。
●12:00〜東京地裁前において訴えました
裁判開始前、12時より、霞ヶ関駅出口付近(東京・丸の内線)から東京地裁前一帯において、イレッサ被害に対するご理解と、この訴訟の経緯を記したチラシを配りました
私たちの訴訟に、いつもご理解をいただき、支援をいただいているたくさんの薬剤師の皆さん、法科大学の皆さんや各大学の法学部や薬学部の学生の皆さん、薬害団体や公害被害団体の皆さん、肝炎被害の方たちなど多くの方に参加していただきました。また、納得と安心の中での癌治療を望みたいと訴える私たちの訴訟を応援したいと参加していただいた一般市民の皆さん、東西弁護団の皆さんなど、約70人が、東京地裁前で、支援の皆さん方に作成していただいたチラシを配って共に訴えました。
裁判報告
原告側証人・福島雅典先生主尋問報告
イレッサ弁護団 弁護士 木下正一郎
 平成19年5月23日,東日本での原告側証人の2人目として福島雅典先生の主尋問が行われました。
 福島先生は,腫瘍内科学,臨床試験デザイン・管理・評価,薬剤疫学が専門の医師で,京都大学医学部附属病院教授,探索医療センター検証部部長,同病院外来化学療法部部長をされています。
 東京は晴天・東日本で真夏日となったこの日,裁判が始まる少し前に時計の針を巻き戻して,ご報告を・・・
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●<アストラゼネカとの利益相反を問う>
 弁護団では,タミフルで問題になった利益相反が,イレッサでもなかったのか関心をもっていました。
そこで,この日,これまでイレッサの有用性の評価に関与した人や組織と,アストラゼネカグループとの間で利益相反がなかったのか,国とアストラゼネカに明らかにするよう求めました。
 裁判所にその旨の求釈明書を提出するとともに,午前11時より司法記者クラブ,午後5時より厚労省記者クラブで記者発表を行いました。◆
 弁護団では,引き続きこの問題を追求していきます。
 求釈明申立書 −被告ら申請証人等の利益相反の有無について
●<大勢の支援,特に学生の応援>
 正午から,裁判所前で支援・傍聴の呼び掛けのためのビラ配りを行いました(午後からの裁判の前には毎回必ず実施していますので,是非ご参加下さい。)。この日は,普段にも増して,大勢の支援の方,特にたくさんの学生の方が参加下さいました。はしかが大学で蔓延し休校になったという事情が手伝ったとはいえ,支援の輪が広まり多くの方が関心を抱くようになってきているのではないかと感じました。
●<原告支援で埋め尽くされた傍聴席問題>
 裁判が始まる少し前には,傍聴席はすでに8割方埋まっていました。
 裁判が始まると,支援の方で傍聴席がいっぱいになり法廷に入りきれない人も出るくらいになりました。福島先生の尋問を楽しみにして来られた方もいらっしゃったのに,他の多くの方に尋問を見ていただこうと,他の方に席をゆずって法廷の外で待機いただいた,支援の方,ご協力ありがとうございました。
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●<福島先生の尋問内容問題>
 メインの福島先生の尋問が始まりました。
 福島先生には,まず,承認前にアストラゼネカから国に報告された間質性肺炎・肺障害の症例報告をご覧いただきました。これに対し,福島先生は,いずれも急激かつ重篤な経過をたどり死亡した事例,死亡しないまでも強力な治療を行って何とか回復できた事例であったと述べられ,イレッサの危険性が承認前からアストラゼネカのみならず国も把握できていたはずということを証言されました。
 かたや抗がん剤の有効性は延命効果で判断されるところ,イレッサが承認される時点においては,延命効果に結びつくとは言えない腫瘍縮小効果しか認められていなかったことを述べられました。
 これらのことからすると,イレッサは,承認時点においてリスク・ベネフィットのバランスを欠いており,決して承認されるべきではなかった,まして承認しておきながら上記のような危険性があることを警告欄に記載しないことは全く誤りであると明確に証言されました。
 さらに,イレッサは既存の抗がん剤ドセタキセルとの比較試験で有効性を明らかにすることが承認条件とされていましたが,今年2月1日,この試験でイレッサの有効性は立証されませんでした。この事実を踏まえ,福島先生は,承認条件を達成できなかった以上,もはやイレッサの承認は取り消されるべきであるとの証言をされました。
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 福島先生の証言内容は,極めて明確かつ一貫しており,傍聴をいただいた方からも「分かりやすかった」「傍聴に来て良かった」という声を多数いただきました。また,初めて来ていただいた学生さんの中には,今回のことをきっかけに,支援の会に入って下さった方もいらっしゃいました。
●裁判終了後の報告集会
裁判終了後、東京地裁に隣接した霞ヶ関の弁護士会館10階1006で報告集会を開催しました。
◇本日の報告集会には、lawスクールの伊藤塾から、イレッサ訴訟の裁判を傍聴したいと、弁護士を目指している皆さんが30人も裁判傍聴していただきました。裁判終了後は報告集会にも参加して頂き、被害の実態や裁判の中での原告側、被告側の代理人のやり取りなど、弁護団からの説明に、熱心にメモを取る姿も見られました。
◇原告側証人として出廷していただきました、福島雅典先生
2時間にも亘る証人尋問で大変にお疲れのところを報告集会に参加していただきました。
イレッサ裁判の証人として出廷していただくようになった経緯や、イレッサの死亡被害に関して専門家の立場から、イレッサが承認される段階から、厚生労働省に対して、有効性と安全の確保が保障されないのではまだ承認するべきでないと強く訴えてきたが無視されて承認されてしまい、このように大きな被害が起きてしまった、と怒りを込めたお話をしていただきました。
間質性肺炎による副作用の危険性が蔑ろにされたまま販売が開始された経緯について、このようなことが繰り返されてはならないと、厳しい口調の中にも解り易く丁寧に説明していただきました。たいへんお疲れのところを参加していただき有難うございました。心よりお礼申し上げます
◇弁護士会館の1006号会議室に入りきれず通路もいっぱいになるほどでした。特に今回は参加者の半数近くが学生の皆さんということで、イレッサ被害の始まりから、被害の実態、訴訟の経緯、裁判の進捗状況、原告側の主張、仕方のない被害で許容されている死亡と主張し続けている被告側などを、弁護団より解説していただきました。
● 次回証人尋問傍聴のお願い
次回7月18日は、午前10時20分より医薬ビジランスセンター代表浜六郎先生の主尋問、午後1時15分より福島先生の反対尋問が行われます。これまで西日本で福島先生、浜先生、東日本では別府先生の反対尋問が行われましたが、被告側が、本来関連性のない尋問、被害者を全く考慮しない不当な尋問を平気で行うことは明らかです。
次回期日も今回と同様、たくさんの方々に傍聴に来ていただき傍聴席を埋め尽くし、丸一日の長丁場となりますが、被告側に不当な尋問を許さないよう注視していただきたいと心よりお願いします。
◆次回以降の裁判期日◆
東日本訴訟(東京地方裁判所)

◆7月18日(水) 午前10時20〜
浜六郎医師への主尋問(10:20〜12:00)
続いて午後から福島雅典教授への被告側代理人による反対尋問(13:15〜17:00)が行われます。
西日本訴訟(大阪地方裁判所)

◆7月30日(月)大阪地裁202号法廷
(時間は決まり次第お知らせします)
近畿大学・福岡正博教授に対する被告側の主尋問が行われる予定です。
◆10月9日(火)大阪地裁202号法廷10:00〜
近畿大学・福岡正博教授に対する
原告側による反対尋問が行われる予定です。
●裁判後記・・・私たちは願っています
◆私たちはこの裁判によって次の事を求めています
@販売前から行っていた宣伝広告によって患者も医師も皆信じて処方・服用した結果被害に遭った医薬品の承認前の広告宣伝は厳しくこれを禁止している。今回のイレッサの販売の在り方は薬事法上違法でないのか。
A第2相試験の段階から副作用による被害報告が出ていたのにそれを隠蔽・無視して国は承認した。誤りではないのか。
B副作用による676人の死亡(2006年末時点の公表数)は製薬会社自ら認める所である。たとえ時には死亡も受忍しなければならない抗癌剤による副作用死亡としても一時期にこれほどまでの大量死は異常というべきであり、患者遺族に対して謝罪をすべきではないのか。また,今後抗がん剤によってこのような悲劇が起きないように、抗がん剤による副作用の救済制度を早急に設けるべきである。
ガンという忌まわしい病気に罹り必死に生きようと苦しい治療に挑み、思い半ばでイレッサの副作用に苦しみながら亡くなって逝った事実を認め訴訟の早期解決と、安心して治療が受けられる抗がん剤癌治療の改革を願っています。
◆私達への誹謗・中傷について
 私たちが受けた被害の実態と、どのような処方で被害に遭ったのか等の真実から目を逸らし、製薬会社のアストラゼネカの一方的な情報を鵜呑みにした一部の医師の方たちが、自身のブログや提言などにおいて、「お金欲しさのとんでもない原告たちで、この訴訟の原告たちが、この薬によって生きようとしている多くの患者たちの命を奪っている。」等と、私達の訴訟に対し事実無根の痛烈な誹謗・中傷を繰り返しています。
 これまで、スモン事件、サリドマイド事件、HIV(エイズ)事件と、戦後、起こされて来た悲惨な薬害の70年間の歴史を紐解くと、非難や中傷を、被害者に対して、その遺族に対して繰り返し浴びせています。被害者やその遺族たちはどのような非難・中傷もじっと耐え続けてきたのが日本の薬害の歴史です。しかし、どのような非難や中傷も、後の日に、何れも誤りであったことが明らかとなっています。また、誹謗や中傷からは何も生れませんでした。
 私達の訴訟を非難している多くの国会議員の皆様、厚労省の皆様、医師の皆様、製薬企業の皆様、マスコミの皆様、勉強会や学習会を開いた時、私達を呼んでいただけませんか。たとえ末期と言われる肺がん患者ではあっても、このような販売方法による処方が許されるのか、何故、今回このような大勢の死亡被害がいちどきに起きてしまったのか、私たちの話を聞いていただけませんでしょうか。癌患者の命の重さについて話をさせてください。
 私達は全国薬害被害者団体連絡協議会の加盟団体の一員として、全国の大学の医学部や薬学部、法学部などに出掛けては、今回のイレッサの副作用について講義の中で聞いていただき学生の皆さんと共に考える行動を続けています。
 非難よりも対話をと・・・そのような日が来ることを願っています。
(私達、イレッサ薬害被害者の会へのアクセスは・FAX:048−651−8043・・メール:iressa-higainokai@nifty.com)
・・ お問い合わせ ・・
イレッサ薬害被害者の会
代表・・近澤 昭雄

電話・048-653-3998
FAX・048-651-8043
mail: iressa-higainokai@nifty.com
薬害イレッサ訴訟東日本弁護団
豊島区西池袋1-17-10
池袋プラザビル6階
城北法律事務所
電話・03-3988-4866
FAX・03-3986-9018
事務局長・弁護士 阿 部 哲 二
次回東日本訴訟・第15回(2007年7月18日)裁判報告