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 薬害イレッサ東日本訴訟
  薬害イレッサ東日本訴訟(東京地裁民事第24部)は、第一回期日が2005年2月16日に東京地裁で開かれて、今回の期日で15回目の裁判となります。(因みに、西日本訴訟(大阪地裁)で第一回裁判が開かれたのは2004年11月1日で、現在までに16回の裁判が開かれました)
今回の裁判は、午前10:20分に開廷、原告側証人への主尋問、被告側からの反対尋問が午後5時まで行われました。
イレッサ訴訟とは、ガンの中でも特に死亡率が高いといわれる肺ガンの、延命治療薬として販売された、「イレッサ(一般名・ゲフィチニブ)」という薬により、販売開始から副作用が多発して多くの患者が亡くなった事に対し、承認した国と、開発・販売したアストラゼネカ社の責任を問う訴訟です。
このイレッサは、ほんの少しの水でも服用できる錠剤タイプの抗癌剤で、延命効果は大きく、副作用も軽いので自宅で服用しながら癌治療が出来る夢のような薬、といわれ多くの患者が当時出されていた情報と、医師の説明を信じて服用を続けたところ、服用、間も無く、間質性肺炎という副作用被害に遭ったもので、発売開始から僅か5ヶ月で180名の死亡被害が発生し、このイレッサ訴訟を提起する2年半までに、557名もの患者が死亡するという被害ですが、「余命少ない肺がん患者の副作用死」、ということから、「何れは死亡する命、仕方がないのではないか・・・」等とご理解頂くのにはなかなか難しい中を、いつも多くの皆様に傍聴に駆けつけて頂き有難うございます。
● 9:00〜東京地裁前において訴えました
前夜よりの雨は明け方には止んで、より一層緑が映える霞ヶ関の東京地裁前で、9時より支援の皆さまと共に、イレッサに関する販売と処方の真実を、被害の実態を訴える宣伝行動を行いました。開廷が午前10時20分からということで、早い時間から参加していただきました支援の皆さまには心からお礼申し上げます。
■裁判報告
今回の裁判は、原告側証人として証言していただく、医薬ビジランスセンター理事長で医師の浜六郎先生への原告側代理人による主尋問が午前10時20分より12時まで行われ、昼食をはさんで午後13時15分より、原告側証人の福島雅典京都大学教授に対する、被告国と被告アストラゼネカ社の代理人による反対尋問が午後5時まで行われました。
午前中は60〜70人と少し空席も目立ちましたが、午後の審理に入る頃には満席となりました。多くの医療関係者の皆さんや、試験の最中を駆けつけていただいた学生のみなさん、例え肺ガン患者の命でも重さは同じといつも支援して頂くみなさんで傍聴席をいっぱいに埋めて頂きました。
●浜六郎先生(医薬ビジランスセンター理事長・医師) 主尋問 (午前10時20分より12時)
.イレッサの危険性について
◇イレッサの危険性はいつの段階から分かっていたのか ◇イレッサの危険性はいつの段階から分かっていたのか
◇イレッサの危険性はいつの段階から分かっていたのか ◇イレッサからもたらす危険性はどのようなものなのか
作用機序について
◇イレッサの副作用はどのような機序をたどって発生するのか
動物実験について
◇イレッサの動物実験ではどのよわうな事がわかっていたか
臨床試験について
◇イレッサの臨床試験ではどのような害作用が出ていたのか
ドセタキセルとの比較対照試験について
◇試験の目的 ◇結果 ◇試験の位置付け
以上の点について尋問・証言して頂きました。
福島雅典先生に対する被告側の反対尋問・・13時15分〜15時00分
被告側の質問は、前回の期日(5月23日)の原告側証人として出廷された際に証言された、以下の1〜9の福島先生の主尋問の証言を元に質問されました。
1).承認当時、イレッサの危険性に関するデータは充分すぎるほど蓄積されていた。報告されている症例報告書(ケースカード)の検証がきちんとされていれば、イレッサの危険性を十分認識できたはずである。
2).イレッサの腫瘍縮小効果のみを有効性として承認されているが、本来の有効性はあくまで延命効果である。
3).イレッサの承認は・・承認したことが誤りである。・・当時の医学的治験に照らせば、リスク・ベネフィットのバランスを明らかに欠いていた。延命効果が不明な薬であり、しかも・死の恐れのある重大なリスクを示す症例が多数あるのだから、リスク・ベネフィットのバランスを失し、承認は許されるべきでなかった。
4).抗がん剤だから副作用で死亡するという考え方は、誤りである。抗がん剤の副作用で死亡することは実地臨床ではほとんどない。京都大学の外来化学療法部では、2005年の全患者818名中、抗がん剤による直接的毒性死はゼロである。
5).イレッサを承認するにしても、せめて,適応(処方する病気の範囲など)を限定すべきであった。肺ガン治療で確立している標準治療を行ったが結果が得られなかった患者に限定すべき。適応限定しなかったことが被害の拡大につながる結果となった。
6).全例調査には、副作用情報の集積、医療機関への注意喚起による慎重投与の効果がある。
イレッサの承認条件として全例調査が付されれば被害の拡大を防止できただろう。
7).承認前に、少なくない数の、死の恐れのあった重篤な間質性肺炎例が報告されており、死との関連性が否定できない症例もあった。承認時の添付文書から、間質性肺炎について警告欄に書くべきであった。
8).承認条件とされていたドセタキセルとの比較臨床試験の結果で、イレッサの非劣性(劣っていないこと)が証明出来なかったというのは、承認時の承認条件をクリアできなかったことを意味するのであり、承認は取り消すのが筋である。
9).患者の自己決定権の観点から、選択肢としてイレッサを残すべきだという議論もあるが、医薬品として認めるに足りるベネフィットと安全性のない薬は選択肢とは言わない。
福島先生は以上の点について、丁寧に誰にでもわかりやすく証言されました。
◇福島雅典先生のご紹介
京都大学医学部付属病院教授,探索医療センター検証部部長,同病院外来化学療法部部長。腫瘍内科学、臨床試験デザイン・管理・評価,薬学疫学が専門。
大学付属病院で化学療法によるガン治療に携わる傍ら、全世界でもっとも広く読まれてきた医学書で、医師のバイブルとも呼ばれる「メルクマニュアル」という書物の日本語訳を行い、日本において、最新の医学情報の提供のために、情熱を注いでおられます。また、1989年、世界有数の科学雑誌「ネイチャー」において、「日本における医薬品の過剰使用」という論文を発表。日本における医薬品の使用承認制度について警鐘をならしてきました。
イレッサの問題にも、被害発生当初から取り組まれ、イレッサの承認に関する意見書を3通提出されたほか、公開質問状及び要望書を提出されております。
平成18年11月13日、平成19年1月31日に大阪地裁で行われた薬害イレッサ西日本訴訟の原告側証人として証言していただきました。
●裁判終了後の報告集会
裁判終了後、東京地裁に隣接した霞ヶ関の弁護士会館において午後5時過ぎより報告集会を開催しました。
◆午前10時20分より12時まで、原告側側代理人による質問(主尋問)で証言に立っていただいた、浜六郎先生(医薬ビジランスセンター理事長・医師)<写真向かって右側>、そして、13時15分から15時00分まで、被告・国と、被告、アストラゼネカ社の代理人による反対尋問を受けていただきました、京都大学医学部付属病院教授・福島雅典先生(写真中央)、お2人が、お疲れのところを報告集会に出席していただき、ご挨拶をいただきました。
イレッサによる死亡被害について、「前代未聞の薬害で、医療を信じ、薬を信じて服用し、亡くなった患者の皆さんには何とも酷い事件で言葉もありません、厳しく長い裁判ですが頑張ってください」、と温かな言葉をいただきました。
◆次回以降の裁判期日◆
 東日本訴訟(東京地方裁判所)
◆9月12日(水)
午後1:30〜東京地裁(103号法廷)
原告側証人・医師・浜六郎先生に対する被告側の反対尋問
西日本訴訟(大阪地方裁判所)
◆10月9日(火)
午前10:00〜大阪地裁202号法廷
福岡正博氏(近畿大学医学部教授)の原告側の反対尋問
●裁判後記・・・私たちは願っています
◆誹謗・中傷について
 私たちが受けた被害の実態と、どのような処方で被害に遭ったのか等の真実から目を逸らし、製薬会社のアストラゼネカの一方的な情報を鵜呑みにした一部の医師の方たちが、自身のブログや提言などにおいて、「お金欲しさのとんでもない原告たちで、この訴訟の原告たちが、生きようとしている患者の命を奪っている」等と、私達の訴訟に対し事実無根の痛烈な誹謗・中傷を繰り返しています。
幾度となく起こされて来た悲惨な薬害の歴史の中で、非難や中傷は繰り返されて来ました。しかし、どのような非難や中傷も後の日に、何れも誤りであったことが明らかとなっています。誹謗や中傷からは何も生れませんでした。
私達の訴訟を非難している多くの医師の皆さま、勉強会や学習会を開いた時、私達を呼んでいただけませんか。たとえ末期と言われる肺がん患者ではあっても、このような販売方法による処方が許されるのか、何故、今回のような大勢の死亡被害が起きてしまったのか、私たちの話を聞いていただけませんでしょうか。癌患者の命の重さについて、話をさせてください。
私達は全国薬害被害者団体連絡協議会の加盟団体の一員として、全国の大学の医学部や薬学部、看護学部や法学部などの要請を受け、今回のイレッサの副作用について、講義の中で聞いていただき学生の皆さんと共に考える行動を続けています。
非難よりも対話をと・・・そのような日が来ることを願っています。
(私達、イレッサ薬害被害者の会へのアクセスは・FAX:048−651−8043・・メール:iressa-higainokai@nifty.com)
・・ お問い合わせ ・・
イレッサ薬害被害者の会
代表・・近澤 昭雄

電話・048-653-3998
FAX・048-651-8043
mail: iressa-higainokai@nifty.com
薬害イレッサ訴訟東日本弁護団
豊島区西池袋1-17-10
池袋プラザビル6階
城北法律事務所
電話・03-3988-4866
FAX・03-3986-9018
事務局長・弁護士 阿 部 哲 二
次回東日本訴訟・第16回(2007年9月12日)裁判報告