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薬害イレッサ東日本訴訟


今回の裁判は、東京地裁103号法廷において午後1時15分より行われました。裁判に臨む前、・・アストラゼネカ東京支社への申し入れと社前行動を、また、厚生労働省に対して、イレッサ訴訟の早期解決と被害患者に対する救済を求める署名を提出しました。裁判のご報告に入る前に、この二つの行動について記載いたしましたのでご覧下さい。
午前10時〜裁判開始前にアストラゼネカ東京支社申し入れと社前行動を行ないました
●前夜からの雨は止む気配もなく、ますます激しく地面を叩いて降る中を50人ほどの支援者が東京・文京区のアストラゼネカ社が入るビル前に集まって、申し入れに対する行動の支援と、副作用被害者に対する救済と裁判の早期解決を求めアピールを行いました。
この行動に参加していただいたのは、多くの薬剤師の皆さん、医療関係者の皆さん、各団体の皆さん、主婦連の元会長で現在参与の清水鳩子さん、日本消費者連名の皆さま、司法に国民の風を吹かせよう(風の会)参加団体の皆さま、公害総行動の皆さん、東京大気汚染裁判で11年も闘って勝利判決を勝ち取った原告の皆さん、高尾山の自然を守る市民の会の皆さん、川崎公害患者の会の皆さん、スモンの会、あかつき印刷労組の皆さん、自治労連など他にも多くの皆さんが結集、それぞれに「薬害は起こすな!!、起こしたら償え!!」と風雨に打たれながら抗議の声を上げました。
 ●入り口は閉じられて連絡もつきません...。
原告代表と支援者数名は、申し入れに対する話し合いを求め18階にあるアストラゼネカ東京支社に向かいましたが、入り口は施錠されてインターホンの呼び出しも不通になっています。前もって今日の申し入れについては連絡を入れて対応をお願いしていたにも関わらず門前払いの意思表示なのです。たまたま入り口を利用しようと通りかかった女子社員に、来訪の趣旨を伝え取り次ぎをお願いした結果もどうにか総務担当マネージャーという方に対応していただく事ができました。
 ●申し入れ交渉の対応は...
アストラゼネカ東京支社の総務担当マネージャーK氏は、私たちの訴訟、『イレッサの副作用被害についての裁判の経緯などまったく知らない』,だから、要請と言われても対応のしようがありませんとの事。『副作用被害者の団体であるホームページも一度も見た事がない』し、『全国で自社の薬により死亡被害が起きているということは全く知らない』と、詫びれることもなくまくし立てます。そして、一刻も早く退出してください、そうでないと警察を呼びますよと、まるで私たちを無頼の輩であるかのような対応です。
私たちは、この対応に怒りを以って抗議を致しました。被害の事情に詳しいかたとの話しを希望しましたが、このアストラゼネカ東京支店には支社長も責任者と言える者一人もいないので、申し入れの対応は出来ない。大阪の日本本社でないと要請書は受け取れないと言うのです。
本来ならば、訴訟中の事案ということで、原告よりの要請・要望の類は一切受け付けない、と言うのは理解しています。しかし、この事件は、問題となっている薬剤(イレッサ)は継続使用されていることで、被害は拡大しつづけていることから、訴訟中如何に関わらず、患者の命を守るという観点からどうしても話し合いの必要があると、繰り返し申し入れを行ってきたという経緯です。
たとえ東京支社の社員ではあっても、このイレッサの副作用被害については会社自らが認めていることで、知らないとうそぶく姿勢にはさすが唖然とするばかり、このような会社の薬を信じて、挙句には苦しみの中で家族は亡くなっていったのかと思うと、再びの悔しさがこみ上げてきました。
午前11時30分〜 イレッサ訴訟の早期解決と全ての被害患者に対する救済を願って厚労省に署名を提出しました。
東日本訴訟弁護団事務局長の阿部哲二弁護士と東日本訴訟原告の里見さん、他支援の皆さん数人は、厚労省に対して、全国から寄せていただきました、「イレッサ訴訟の早期解決と、抗癌剤による副作用被害に対する被害救済制度の創設を求める」署名3558筆を提出しました。
裁判所前で訴えました(12時〜12時30分)
 お昼休みの東京地裁前は、雨のためか通行の人もまばらという中、チラシを配ってイレッサ副作用被害の悲惨さと実態を訴えました。
ある患者団体の人たちが、ブログの中で・・・私たちが行なっているこの裁判所前の抗議行動についてこんなことを書いていました。
『毎回・毎回、裁判所前でチラシを配って抗議行動ですって... このイレッサ原告と被害者の会は一体何を考えているのでしょうね。』とまるで、不穏分子か変人扱いのようです。
また、このブログを書いた団体は、今年春の書き込みにこのようにも書いています。
「イレッサで亡くなった方の13人の命は重いものだと思いますが、イレッサで、高いQOLを維持しつつ1年〜2年という期間、腫瘍の増殖を押さえ込んだ患者さんの数はもっともっと多かったはずです。」とも。
イレッサで亡くなったのは13人、と書かれていますが...
違います!!
厚生労働省の発表では、イレッサで亡くなったのは今年3月末時点で706人にも上っているのです。
この13人とは、死亡被害が初めて報道された時の数です。
この団体の情報の収集の有り方についてとやかく言うつもりはありませんが、このような誤った情報でも、国は、企業は、好んで、患者団体の参考意見として取り上げて来た経緯をみると、憂うべき問題といわざるを得ないでしょう。誤った情報を独り歩きさせていることが、さまざまな医療の改革に大きな障害となっているのも事実ではないでしょうか。
この患者団体が問題なのではなく、被害の発生から既に5年たった今でもこのような情報しか知らないままの人たちが多くいる事が問題と思っています。この死亡被害者数の誤りは訂正しなければとの思いから敢えて取り上げましたが、悲しいことですがこのような話はまだまだ一杯聞こえて来ます。
いつの日がきっと・・私たちのこの裁判が、私たちの行動が、皆様に理解していただける日が来ることを信じています。
午後1時15分より、東京地裁103号法廷において、約80人の傍聴人が見守る中イレッサ薬害東日本訴訟第16回裁判が行なわれました。この裁判は2005年2月16日の第1回期日からこの期日で16回の裁判が開かれてまいりましたが、抗がん剤の副作用被害という特殊な薬剤の裁判という事で、極めて厳しい裁判と言われる中を、ずっと東京地裁では大法廷での審理を続けて頂いていることに対して有り難く思っております。例え世間での関心は少なくても706人(2007年6月1日・厚生労働省報告)もの死亡被害者が出ているという事の重大さに、東京地裁は深く理解して頂いている表れではないかと感じているところです。
この日も、傍聴の皆さんの中には医療関係者のみなさんや、法律を学ぶ学生の皆さん、不安の中で家族にイレッサを服用させていると言うご家族の方は、・・新たに服用する患者さんが、何も知らされず被害に遭って死亡するようなことがあってはならない・・応援していますと傍聴に来られました。
この裁判では、原告側証人の浜六郎先生に対する、被告・国と、被告・アストラゼネカ社よりの反対尋問(1時15分〜4時50分)が行なわれました。この反対尋問の詳しい報告を、東日本弁護団の木下正一郎弁護士に寄せて頂きましたので以下に掲載いたしました。
・・●・・浜六郎医師への被告・国と,アストラゼネカ社による反対尋問の報告・・●・・
・・・浜六郎先生反対尋問報告・・・
薬害イレッサ東日本弁護団
弁護士・木下 正一郎
平成19年9月12日,東日本で3人目の原告側証人である浜六郎先生に対し被告より反対尋問が行われました。浜先生は,現在医薬ビジランスセンター所長,医薬品・治療研究会副代表として薬害を防止し,科学的な医薬品のあり方を追及するためのさまざまな研究活動を行われている医師です。
<主尋問の概要>
反対尋問に先立ち7月18日に行なわれた浜先生の主尋問の概要は,次のとおりです。
●臨床試験で単に有害事象とされた症例が,イレッサとの関連が否定できない症例,あるいは,積極的に関連ありと考えるべき症例であったこと。
●単に病勢進行死とされた症例の中にも,イレッサとの関連が否定できない症例があると予想されること。
●したがって,臨床試験でイレッサの危険性が正しく評価されなかったこと。
●イレッサによる肺の障害は,イレッサのEGFRチロシンキナーゼ阻害作用によってもたらされるものであり,イレッサ証人以前に公表されていた,あるいは,公表されようとしていた医学論文から説明ができること(これを模式図を使って説明いただきました。)
●人での臨床試験が行なわれる以前の,動物実験段階でも,イレッサによって,重篤なイヌやラットで肺の障害が現れていたこと。
●今年2月に発表されたイレッサとドセタキセルとの国内第V相試験で,イレッサの有効性が証明されなかったこと・・・等など
<無駄に終わった被告の反対尋問>
以上に対する今回の被告の反対尋問の内容は,ひどいもので,とことん細かいことを聞いて,浜先生から「知らない」という証言を引き出そうとしたり,浜先生自身の証言の中に矛盾点を見出そうとしたりするものでした。
例えば
・イレッサの動物実験でラットに現れた事象について,アストラゼネカ代理人が,人の食道と胃を模したとんちんかんな図を使って,アストラゼネカ側の意見を強引に押し付けようとしたり,
・イレッサの副作用が,イレッサのEGFRチロシンキナーゼ阻害作用で説明できるとしていることに対して,HGFやFGFなど他の因子まで持ち出して,その点については研究が及んでいないのでないか,というような尋問を続けたり
・EGFRチロシンキナーゼ阻害作用によってさまざまな副作用が引き起こされることを説明した模式図について,その図に示したこと一つ一つについて,根拠があるのか,という質問を長い時間を使って繰り返したり,
・挙句の果てには,この模式図で説明しているEGFRチロシンキナーゼ阻害作用から肺障害が起こる作用機序を,浜先生がイレッサの承認当時に知っていたのか,というような質問までする始末でした。
・これらに対し,浜先生は,細かい質問に対しても的確に答えられ,およそ本件と関係のない質問については,その質問に答えることが重要なことでないことをきちんと説明されました。
結局,被告らは,浜先生の反対尋問で,主尋問の証言を覆すことが全くできませんでした。
・・・・・・・・・・・・・・・◇・・・・・・・・・・・・・・・
<次回からは被告側承認の尋問です。傍聴お願いします。>
原告側の証人の尋問は,今回の浜先生の反対尋問で最後となります。次回,10月31日の裁判からは,いよいよ被告側証人の尋問が始まります。
東京の裁判で被告側証人のトップとして証言台にたつのは,国立がんセンターの西條長宏医師です。
弁護団としては,西條医師ほか被告側証人の反対尋問において,イレッサが有効性を欠き,その危険性を承認時点で知り得たことを明らかにし,イレッサの承認が誤りであったことを明らかにしていく予定です。
まずは,次回10月31日(水) 午後1時10分からの東京地方裁判所103号法廷での西條医師の主尋問に,たくさんの方に傍聴に来ていただいて,イレッサによって発生した副作用死をいい加減に扱う証言をさせないように厳しく監視していただきたいと願っています。
以上
●裁判終了後の報告集会
裁判所に隣接した、弁護士会館において、大勢の皆さんに参加いただき報告集会を開催いたしました。
◇原告代表の近澤さんはご挨拶の中で、本日の早朝からの行動と裁判傍聴まで、長時間参加していただきましたお礼を述べられ、そして、裁判に対する思いを次のように話しました。
被告側の、アストラゼネカの代理人も、国側の代理人も、一体この裁判で何を審理しようとしているのかと、聞いていて虚しくなりました。
この訴訟の目的は、
この訴訟により、不安に感じている多くの患者さんたちが安心して治療が受けらるように。そして被害の拡大防止のためにどのようにこの裁判を活かし取組めば良いのか。
また、新たな死亡被害を発生させないために。
を一番の目的として努力すべきところを、自社の利益と、国の権威を守ることのみに奔走し、子供の喧嘩にも劣る、下らない口撃のみの中から何が生まれると言うのでしょう。
被告側は、『効いている患者が大勢いるのは事実です。・・・』と主張していますが、効いている患者がいれば700人死んでも800人死んでもそれは抗癌剤の治療上、仕方がないこと、と実に何とも乱暴な主張をしています。このようなことで、新たな被害を防止することが出来るのでしょうか。
患者の命が守れるのでしょうか。
少しでも・人の心が残っているのなら、抗がん剤治療の発展のために、そして被害に遭って亡くなった被害者が無駄死とならないために、この訴訟を通して変えていく努力は出来ないのでしょうか。通じないかも知れませんが・・切に希望します。
◆次回以降の裁判期日◆
東日本訴訟 (東京地方裁判所)
◆10月31日(水)午後1時10分〜 
東京地裁・103号法廷 
国側証人・西條医師への被告側による主尋問が行なわれます。

西日本訴訟 (大阪地方裁判所)
◆10月9日(火)午前10:00〜午後5:00
大阪地裁・202号法廷
国側証人・福岡正博教授への原告側の反対尋問が行なわれます。

・・ お問い合わせ ・・
イレッサ薬害被害者の会
代表・・近澤 昭雄
電話・048-653-3998
FAX・048-651-8043
mail: iressa-higainokai@nifty.com
薬害イレッサ訴訟東日本弁護団
豊島区西池袋1-17-10
池袋プラザビル6階
城北法律事務所
電話・03-3988-4866
FAX・03-3986-9018
事務局長・弁護士 阿 部 哲 二


次回東日本訴訟・第17回(2007年10月31日)裁判報告