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薬害イレッサ東日本訴訟

 薬害イレッサ東日本訴訟(東京地裁民事第24部)は、第一回裁判が2005年2月16日に開かれて、今回期日で17回目を迎えます。この訴訟は、肺がん治療の新薬として2002年7月に販売が開始された、「イレッサ」の副作用による間質性肺炎で死亡したことに対する被害の責任と、死亡被害者に対する償いを求める裁判ということで、一見すると、「抗癌剤の使用による副作用死は仕方がないのでは?、」との大方の見方であるのは理解しながら、それでも何故、私たちが裁判に訴えたのか、を皆様にはいつもご理解いただき、傍聴に駆けつけて頂き有難うございます。裁判開始前の裁判所前での街頭宣伝、チラシ配りなどとさまざまにご支援をいただき有難うございます。
 本日は、東京地裁103号大法廷において午後1時15分より、被告側証人として西條長宏医師 (日本臨床腫瘍学会理事長・国立がんセンター東病院副院長) に対する被告側の主尋問が、16時30分まで行われました。
12:00〜 裁判開始前、霞ヶ関駅・東京地裁前において支援のみなさんや弁護団と共に街頭宣伝を行ないました。
支援の皆さん、弁護団の皆さんが集まり、チラシを配ったり街宣車のマイクを使いイレッサ薬害被害を訴えました。
15人ほどの支援の皆さんや弁護団で抗がん剤医療の改革と、イレッサ副作用被害に対する支援とご理解を訴えました。
裁判終了後、弁護士会館5階において
 報告集会が行なわれました。 
主婦連元会長・現参与の清水鳩子さん、高尾山裁判の橋本さんより連帯の励ましをいただきました。
今回の裁判は
今回は、被告側の証人として出廷した、国立がんセンター副院長の西條長宏医師に対する、被告側・国と製薬会社アストラゼネカ社よりの尋問(主尋問)が行なわれました。
証人の西條医師は、イレッサが承認される以前から、医学雑誌などに登場しては、開発途中であったイレッサについて「毒性が少ない、非常に有効な治療薬」と効果を強調し、日本におけるイレッサの宣伝に大きな役割を努め、イレッサの承認以後の販売促進に大きな役割を果たした医師です。
また、日本肺癌学会の「ゲフィチニブ(イレッサ)使用に関するガイドライン作成委員会」の委員長でもありました。
今回の西條証言で特筆すべきは、抗がん剤における死亡は5パーセント以内であれば許容の範囲であると証言、5パーセントを超えた死亡が出るとそのプロトコールは認められないだろうと述べましたが、果たして本当に臨床の現場でも5パーセントは許容と考えているのでしょうか。
また、イレッサによる副作用、間質性肺炎についての証言では、間質性肺炎は医師であれば誰でも知識を有していることで、多少の重篤な症状でもステロイドパルス療法により危険回避は対処可能で普通の療法であると述べました。・・ということは、今回のイレッサによる多くの間質性肺炎での死亡は、それぞれイレッサを処方した医師が無知であったために起こった被害と言っているに等しいのです。
添付文書の記載の問題については、間質性肺炎の記載が、第一版の重大な副作用欄の4番目に記載されていることについて、何番目に記載されているかなどは問題でない、記載されていれば臨床の医師は注意をするのは当然、添付文書の誤りはないと考えると述べ、ここでも西條医師は、処方した医師の責任であるかのごとき証言でした。
このイレッサによる副作用死亡被害は、西條医師の証言をまとめれば、処方したそれぞれの臨床医の知識不足と、そして、患者が使いたいと希望しているから使用しているのであって、副作用で死亡する事は仕方がないのではと言わんばかりの主張をし、致死的な副作用についても、安全性についてもはっきりとしたデータを示すことはありませんでした。 
この西條医師に対して、被告側の代理人たちは、西條証人には何も誤りはないことに導こうとの必死の思惑が見え、そのためか尋問は歯切れの悪いもので、弱弱しく擁護している風があからさまに感じましたが、その雰囲気を察してか西條証人の声は、か細く・小さく聞き取れない証言でした。
この尋問の中で、アストラゼネカの代理人も、国側の代理人も、副作用で死亡している706人の被害者数については証言を避け、ただの一言も触れることはありませんでした。
私達は
 希望を持って治療に頑張っている多くのガン患者の薬を失くそうとしている訳ではありません。国も製薬会社のアストラゼネカもいまだにはっきりと効果について示す事が出来ない、その上副作用による死亡は僅か5年で706人も出ている事を問題にしています。あまりにも多すぎる死亡被害を問題にしています。真の自己責任・自己選択による服用であれば、抗癌剤の治療上それはある程度は仕方のない事として受け入れなければならないことは充分に理解しますが、原告たちの殆どが、副作用はほとんどない新薬であるから自宅の服用でも安全な薬と説明を受けて、医師管理もない中での服用わ余儀なくされました。その結果、間質性肺炎を発症して死亡しました。
何一つとして説明は受けていないことと、当時出されていた効果情報のみの偏った状況の中で、果たして服用した患者の自己責任が問えるのか、どこまで自己責任として患者の責任にできるのか、納得しての服用といえるのかについて異議ありと訴えました。
 「それほど気にする副作用はありません」と説明を受けて、信じ・安心して服用している患者が今も驚くほど多くいます。延命効果は大きく手軽に自宅で治療が出来て副作用は軽い薬ですと説明されて、その結果、副作用に見舞われ死亡しても抗がん剤の副作用被害による死亡は誰も責任は問われない現法。販売が開始されてからこの訴訟が開始されるまでの2年5ヶ月の間に、557人の死亡被害は、既存の抗癌剤の死亡被害の10倍にもなっている事実を看過する訳にはいきません。果たしてこれで良いのでしょうか。これが自己選択と言えるのでしょうか、自己責任として片付けられるのでしょうか。ガン患者の命はガン患者とその家族が守らないと、片手間に軽く扱われ見捨てられてしまう現実。ガン難民として見捨てられることのない抗がん剤医療の改革を私たちは望んでいます。
● 報告集会・・・裁判が終わって・・・午後4時30分より東京地裁に隣接の弁護士会館5階において報告集会が開かれ、たくさんの皆さんに参加して頂きました。たくさんの励ましのメッセージを有難うございました。
報告集会の後、一日の疲れを癒す懇親会にもたくさんの支援の皆さんや弁護団の皆さんが参加して賑やかに談笑しました。お疲れ様でした。
● 私達の訴えをご理解下さい
私達は、イレッサと言う肺がん治療薬によって副作用被害にあったことに対して提訴しました。イレッサの承認取り消しを求めて提訴したのではありません。
@安全な抗がん剤の提供を求めて提起した世界でも初めての抗がん剤の安全性を問うています。
A医薬品の宣伝・広告、そして販売のあり方を問うています。
B被害にあっても救済されない抗がん剤副作用被害者に対する救済制度の創設を求めています。

◆次回以降の裁判期日◆
◆東日本訴訟(東京地方裁判所)
1月31日(木)午前10:00〜5:00
東京地裁(103号法廷)
被告側証人・国立がんセンター副院長
・西條長宏医師への反対尋問
西日本訴訟(大阪地方裁判所)
11月28日(金)13:15〜16:30
大阪地裁(202号法廷)
被告側証人・愛知がんセンター副院長
・光富医師に対する被告側による主尋問
●今年の東京地裁の裁判は終わりました
 今年のイレッサ訴訟(東京地裁)の裁判はこの期日で終わりますが、この先まだまだ果てしなく続きます。来年は1月31日に第18回期日が開かれます。今年は・2月7日、4月25日、5月23日、7月18日、9月12日と今回10月31日の裁判で都合6回開かれ審理されて来ました。たくさんの皆さまに傍聴していただき真に有難うございました。
 また、今年は、原告側、被告側双方の証人出廷で難しい尋問が続きました。来年・年明けても被告側の証人に出廷してもらい審理が行なわれます。これからがイレッサ裁判の最も大事な部分になると思います。来年は1月31日の国立がんセンター副院長・西條医師への原告側の尋問でスタートします。
今後とも宜しくご支援のほどお願い申し上げます。
・・ お問い合わせ ・・
イレッサ薬害被害者の会
代表・・近澤 昭雄
電話・048-653-3998
FAX・048-651-8043
mail: iressa-higainokai@nifty.com
薬害イレッサ訴訟東日本弁護団
豊島区西池袋1-17-10
池袋プラザビル6階
城北法律事務所
電話・03-3988-4866
FAX・03-3986-9018
事務局長・弁護士 阿 部 哲 二


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