判決文を一部抜粋ですが,以上のような判決が下されて
これまでの7年間の裁判闘争を振り返りますと,悔しいというより,一気に体中の力が抜けていくような,ガクッと奈落に落ち込むような感覚を覚えました。 |
|
2004年11月の提訴から6年半もの歳月をかけて,東京地裁では29回もの裁判が開かれ漸くの思いで今年3月23日に一審の東京判決を迎え,その東京判決では、原告側の勝利,国とアストラゼネカ社の法的責任を明確に認め、私たち,原告への賠償を,そして抗がん剤医療の改革を求める判決が下され,一先ずは安堵していたところでした。 |
|
そして,東京判決の後,和解による解決が望ましいとして,裁判所は和解勧告を出して解決を促したものの,被告側としては,完全敗訴のままに和解に応じることには当然出来ないでしょうし,和解交渉すべてにおいて不利になるのは明らかなのですから,産官学がスクラムを組んだ被告側による和解拒否工作は,すざましいもので,厚生労働省が一丸となって和解拒否の働きかけのメールを各・学会へ送り,そして,厚労省が和解拒否の文案の下書きまで作成して各・学会に配り,この下書き案を参考にして各・学会は一斉に和解拒否の声明を出すという前代未満の裁判潰しが行われたのは,実に悲しく感じました。これが「薬害イレッサ訴訟和解拒否に関するヤラセメール事件」というものですが,この卑劣な行動は,被告側としては一応の成果をみせ何とか和解拒否を果たし,上告審への控訴となり,裁判は高裁へと移されました。 |
|
舞台が東京高裁に移されて,
第1回目の裁判が9月6日に開かれましたが,この裁判で,冒頭・裁判長より・・「この裁判は一審ですべて尽くされてきたので新たな証拠書証などは要りません」,と述べられ,次回期日も双方の代理人の都合が付かなくても10月25日とし,この期日で結審とします,と半ば強引な裁判進行には大きく不安は感じていましたが,ほとんど審理もされないままに結審を迎えると言うことは先の判決とそれほど違いのないもの,原告にある程度は有利な判決が下されるのではないかと,半ば楽観視していたところはありました。そして,提訴から7年を経過した11月15日,結審から僅か20日しか経っていないという異常ともいえるスピード判決を迎え,このような判決が下されたことに対しては,現実として受け入れなければならないと思っています。 |
|
しかし,この判決の中味で到底受け入れ難い部分,
一つに添付文書の問題があります。添付文書に関する東京高裁の判断は,おおまかに言うと,もっとも重大な警告であっても添付文書の何処かに記載さえしていれば十分に責任は果たしているとして,後は,この添付文書を見る医師がしっかりと熟読していれば被害が起きることはないとの判決です。 |
|
今一つは,大勢の死亡被害が起きた原因について,
高裁の判断では,原告らは指示警告上の違反を主張しているが,違反があったと認められるものは何もない,抗癌剤治療とは専門医が行っているものでそれぞれの医師がしっかりしていればこの被害は拡大はしなかったと,あたかも医師に責任を押し付けるきわめてずさんな判決と言わざるを得ません。一人や二人の医師による被害ならばともかく,日本中の医師が処方したイレッサで,このような大勢の死亡被害が起きた事実と被害の実態を無視したこの東京高裁判決に,これでは,危険性は何も知らされずに,育薬のためと主張する企業の犠牲となって死亡した多くの被害者は浮かばれません。また,これまで薬害被害者が培ってきた薬害根絶の礎を根底から覆すものであり,司法への不信を感じます。 |