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 東京高裁判決

2011年11月15日,午後1時15分より,東京高等裁判所101号大法廷において,
薬害イレッサ東日本訴訟控訴審裁判が開かれ原告側完全敗訴の判決が下されました。
 【 主 文 
第1審被告らの各控訴に基づき,原判決主文第1項及び第2項を取り消す。
第1審原告近澤昭雄及び第1審原告○○○○の第1審被告らに対する各請求をいずれも棄却する。
第1審原告らの各控訴をいずれも棄却する。
第1審原告近澤昭雄及び第1審原告○○○○と第1審被告らとの間においては,訴訟費用は第1,2審とも上記第1審原告らの負担とし,第1審原告近澤昭雄及び第1審原告○○○○と第1審被告らとの間においては,訴訟費用は第1,2審とも上記第1審原告らの負担とし,第1審原告○○○○及び第1審原告○○○○と第1審被告らとの間においては,訴訟費用は上記第1審原告らの負担とする。
※(以下,判決文一部抜粋)
第2事案の概要
(3)  第1審被告会社
間質性肺炎が多数の医薬品により発症する副作用であることは,医師にとっては常識的な知見であり,かつ,その予後は,薬剤によって良好な場合もあれば不良な場合もあることが知られていた。しかも,特に抗がん剤による間質性肺炎については,比較的予後が不良になりやすいということも知られていた。これらは,イレッサ承認当時の一般の医学文献にも記載されていたことである。また,間質性肺炎は,平成4年の厚生省薬務局安全課長通知「医薬品等の副作用の重篤分類基準について」,に掲げる分類基準において,軽微な副作用である「グレード1」や重篤な副作用でないが軽微ではない「グレード2」に属さず,重篤な副作用と考えられる「グレード3」,すなわち「死亡又は日常生活に支障を来す程度の永続的な機能不全に陥る恐れのないもの」に区分されているのであって,医師であればイレッサの副作用としての間質性肺炎について,死亡に陥るおそれがあると認識できたといえるのであり,したがって,本件添付文書第1版について指示・警告上の欠陥はなかったものというべきである。
指示・警告上の欠陥の有無の判断の前提となるイレッサの特質
(2) イレッサの処方を受ける者とイレッサを処方する医師
 イレッサは要指示薬であり,劇薬であり,新医薬品であり,肺癌の中の「手術不能又は再発非小細胞肺癌」のみを効能・効果の対象疾患とし,本件添付文書中に「本剤の化学療法未治療例及び術後補助療法における有効性及び安全性は確立していない」とされている医薬品であって,イレッサの処方を受ける者は,肺癌患者の中でも手術不能又は再発非小細胞肺癌に羅患した特に治療が困難な者であるといえる。また,イレッサのこの特質を考えると,本件添付文書第1版ないし第3版に基づいてイレッサを処方する医師は,癌専門医又は肺癌に係る抗癌剤治療医であるものといえる。
 本件患者らの治療に当たった担当医は,いずれも癌治療の態勢の整った総合病院における癌専門医であったと認められる。
11  広告宣伝上の欠陥の有無
第1審原告らは,第1審被告会社がイレッサは画期的な分子標的薬であるとして効果と安全性を強調する広告宣伝をイレッサの販売開始以前から繰り返し行ったことは,薬事法66条から68条において禁止される虚偽広告,誇大広告又は事前広告に該当するものであり,仮に該当しなくとも,製薬会社として正確な情報提供を行わず,患者に期待を抱かせてその薬を服用させるものとして,「明示の保証」類似の広告宣伝上の欠陥に当たると主張する。しかし,イレッサの広告宣伝が薬事法の禁止する虚偽広告,誇大広告又は事前広告に該当することを認めるに足りる証拠はなく,また,上記主張は,イレッサに有効性がなく,本件添付文書に指示・警告上の欠陥があるとの主張を前提とするものであるところ,その前提事実が認められないのであるから,理由がない。
13  第1審被告国の責任の有無について
第1審原告らの第1審被告国に対する損害賠償請求は,第1審被告会社には欠陥のある製造物であるイレッサを輸入・販売した製造物責任又は不法行為責任があるとの主張を前提とし,第1審被告国は適切な規制権限を行使しないで輸入承認をし,その後も適切に規制権限を行使しなかったために第1審原告ら損害を被ったのであるから,第1審被告第1審原告らに対し,国家賠償法1条1項に基づき損害賠償責任を負うものとするものであるが,第1審原告らが第1審被告会社に対して主張する上記前提事実が認められないことは,前記5ないし12認定のとおり(16〜53頁)であるから,第1審被告国の輸入承認及びその後の規制権限不行使が違法であるかどうかについて論じるまでもなく,第1審原告らの第1審被告国に対する損害賠償請求は理由がない。
14  結論
以上の認定判断によれば,第1審原告らの各請求は,いずれも理由がないから棄却すべきであり,原判決中第1審原告近澤昭雄及び第1審原告○○○○の請求の一部を認容した部分は不当であって,取り消しを免れない。
 よって,
第1審被告らの控訴に基づき,原判決主文第1項及び第2項を取り消し,第1審原告近澤昭雄及び第1審原告○○○○の第1審被告らに対する各請求をいずれも棄却し,第1審原告らの各控訴は理由がないからこれらをいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。

判決文を一部抜粋ですが,以上のような判決が下されて
これまでの7年間の裁判闘争を振り返りますと,悔しいというより,一気に体中の力が抜けていくような,ガクッと奈落に落ち込むような感覚を覚えました。
2004年11月の提訴から6年半もの歳月をかけて,東京地裁では29回もの裁判が開かれ漸くの思いで今年3月23日に一審の東京判決を迎え,その東京判決では、原告側の勝利,国とアストラゼネカ社の法的責任を明確に認め、私たち,原告への賠償を,そして抗がん剤医療の改革を求める判決が下され,一先ずは安堵していたところでした。
そして,東京判決の後,和解による解決が望ましいとして,裁判所は和解勧告を出して解決を促したものの,被告側としては,完全敗訴のままに和解に応じることには当然出来ないでしょうし,和解交渉すべてにおいて不利になるのは明らかなのですから,産官学がスクラムを組んだ被告側による和解拒否工作は,すざましいもので,厚生労働省が一丸となって和解拒否の働きかけのメールを各・学会へ送り,そして,厚労省が和解拒否の文案の下書きまで作成して各・学会に配り,この下書き案を参考にして各・学会は一斉に和解拒否の声明を出すという前代未満の裁判潰しが行われたのは,実に悲しく感じました。これが「薬害イレッサ訴訟和解拒否に関するヤラセメール事件」というものですが,この卑劣な行動は,被告側としては一応の成果をみせ何とか和解拒否を果たし,上告審への控訴となり,裁判は高裁へと移されました。
舞台が東京高裁に移されて,
第1回目の裁判が9月6日に開かれましたが,この裁判で,冒頭・裁判長より・・「この裁判は一審ですべて尽くされてきたので新たな証拠書証などは要りません」,と述べられ,次回期日も双方の代理人の都合が付かなくても10月25日とし,この期日で結審とします,と半ば強引な裁判進行には大きく不安は感じていましたが,ほとんど審理もされないままに結審を迎えると言うことは先の判決とそれほど違いのないもの,原告にある程度は有利な判決が下されるのではないかと,半ば楽観視していたところはありました。そして,提訴から7年を経過した11月15日,結審から僅か20日しか経っていないという異常ともいえるスピード判決を迎え,このような判決が下されたことに対しては,現実として受け入れなければならないと思っています。
しかし,この判決の中味で到底受け入れ難い部分,
一つに添付文書の問題があります。添付文書に関する東京高裁の判断は,おおまかに言うと,もっとも重大な警告であっても添付文書の何処かに記載さえしていれば十分に責任は果たしているとして,後は,この添付文書を見る医師がしっかりと熟読していれば被害が起きることはないとの判決です。
今一つは,大勢の死亡被害が起きた原因について,
高裁の判断では,原告らは指示警告上の違反を主張しているが,違反があったと認められるものは何もない,抗癌剤治療とは専門医が行っているものでそれぞれの医師がしっかりしていればこの被害は拡大はしなかったと,あたかも医師に責任を押し付けるきわめてずさんな判決と言わざるを得ません。一人や二人の医師による被害ならばともかく,日本中の医師が処方したイレッサで,このような大勢の死亡被害が起きた事実と被害の実態を無視したこの東京高裁判決に,これでは,危険性は何も知らされずに,育薬のためと主張する企業の犠牲となって死亡した多くの被害者は浮かばれません。また,これまで薬害被害者が培ってきた薬害根絶の礎を根底から覆すものであり,司法への不信を感じます。
東京高裁判決,各社新聞記事
・・2011-11-16 読売新聞一面トップ ・・2011-11-16 日本経済新聞社会面 ・・2011-11-16 朝日新聞社会面
・・2011-11-16 読売新聞 ・・2011-11-16 毎日新聞社会面 ・・2011-11-16 毎日新聞一面トップ
・・2011-11-16 読売新聞 ・・2011-11-16 朝日新聞一面トップ ・・2011-11-16 東京新聞社会面
・・2011-11-16 産経新聞社会面 ・・2011-11-16 東京新聞一面トップ.pdf
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戦い済んで・・・
東京高裁の判決が下されて,さまざまな思いが去来します。
7年もの長い歳月を,大勢の支援のみなさんと,弁護団の皆さんと共に,人の命の重さ・大切さを訴え続けてきました。苦しいこともいっぱい,辛いこともいっぱい,その思いは時々の懇親会で憂さ晴らして,また次の苦難に立ち向かい続けて7年,漸く二審の判決を迎えました。
確かに,この上告審の判決は私たち原告にとって,それは厳しいものとなりましたが,しかし,一方で,この訴訟のもう一つの目的,「死亡被害の拡大防止」に関しては,裁判を始めた翌年から死亡被害は減少続け,今年1月から3月の死亡被害の報告は僅かに4人と激減しました。危険でも良いから使わせろ!等と唱えていた一部の医療者も含めた患者と称する人たちは,死亡被害の減少は,訴訟を起こしたために医師が裁判を嫌がり,そして患者たちは使用を怖がったための死亡被害数の減少であると主張していましたが,アストラゼネカ社が2005年より報告の,新規投与患者数,販売錠数等からみると,この主張は誤りであることが判明しました。
・・危険でも良いから使わせろ・・ではなく,危険であればその危険を知り使うのが医療の原則です。
・・何も解らない患者に,なにも知らされないままに,自己責任を求めるのは誤りです。
今回の被害は,明日の抗がん剤医療の育薬のためと主張し続け,がん患者の命を実験台にしたアストラゼネカに,何の反省もないのであれば,私たちは断固戦い続けます。
お問い合わせ
イレッサ薬害被害者の会
薬害イレッサ訴訟原告団団長
近 澤 昭 雄

電話:048-653-3998
FAX:048-651-8043
mail: iressa-higainokai@nifty.com
薬害イレッサ東日本訴訟弁護団
城北法律事務所
弁護団事務局長・弁護士 阿部 哲二
弁護士 津田 二郎
担当事務員 新 庄  聖
東京都豊島区西池袋1-17-10
エキニア池袋6階
電話:03-3988-4866
FAX:03-3986-9018
次回・最高裁判決(2013年4月12日)の報告
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