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薬害イレッサ東日本訴訟
◇今回の裁判で原告本人尋問が行われました。
薬害イレッサ東日本訴訟は、2004年11月25日に埼玉県の被害遺族が東京地裁に提訴して5年目を迎えました。東日本の原告数は3家族の4人、これまで25回の裁判が東京地裁で開かれてまいりました。
本日は、原告2人(近澤さんと匿名原告Uさん)に対する本人尋問が、東京地方裁判所103号大法廷で、約80人の傍聴人が見守る中、午後1時30分より、午後5時まで行われました。
●裁判開始前に、
正午より約一時間、街宣行動とチラシを配りました。
丸の内線・霞ヶ関駅出口付近から裁判所前一杯に、たくさんの支援の皆さんや弁護団が結集して「がん患者の命の重さ」を訴えました。
患者の命を軽視して販売した結果のイレッサの被害は許せないとチラシを配って理解を訴えました。
●多くの薬剤師の皆さんの支援
私たちの薬害イレッサ訴訟には、多くの薬剤師の皆さんが参加しています。はっきりとデータを示さないアストラゼネカの態度は、製薬会社として到底許せるものではない。このようなことでは薬剤師として患者さんに安心して薬を渡すことは出来ない。患者の命を守るために断固戦い続けると、心強い支援を頂いています。
原告本人尋問
 午後1時30分開廷。
 まず匿名原告のUさん、そして原告の近澤さんが中央証言台前に立ち、宣誓書・・(良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べないことを誓います。)・・を読み上げました。 本人尋問は、匿名の男性原告からスタートしました。この匿名原告は、昨年、胃がんが発見されて転移も認められ、現在抗がん剤の治療中と言う方で、体調が最悪の中を何としても証言台に立ち亡くなられた奥様の苦しんだ様を証言したいと出廷されました。イレッサの副作用の間質性肺炎に罹って苦しみながら亡くなって逝かれた当時を思い出しながら証言をされました。
被告側の代理人による尋問は、・・・時には、少し意地悪な尋問もありましたが、一つ一つの質問にきっぱりと力強く約一時間半を証言しました。終わってすぐに、用意していた控え室で横になって頂くために退廷しました。
・・・ ◇ ・・・ ◇ ・・・ ◇ ・・・
10分の休憩の後、原告の近澤さんに対する尋問が開始しました。
まず、原告側代理人による主尋問で、全半部分を花垣弁護士より、後半部分を木下弁護士より、娘の三津子さんがイレッサ服用に至った経緯、副作用に関する情報や医師からのインフォームドコンセントの有無について、副作用の間質性肺炎の被害状況などについて尋問を受けました。
イレッサ服用に至った経緯について、
約7ヵ月の抗がん剤治療が終わりもう他には治療法がないからと自宅において気ままに過ごして下さいと、ガン難民宣告を受け、このような時に、他に何か治療薬はないのかと探している中で「夢の新薬・イレッサ」を知り主治医にこの薬について訪ねると、良い薬みたいですよと言われたこと。使用出来るかと医師に尋ねると保険適応前だから自己負担で一錠が9.000円と高いが申請すると使用は出来ますとの事に使用したい旨お願いをした事を証言しました。
服用に際して医療側からどのような説明を受けたか、
2002年当時のイレッサの服用に関しては各医療機関に対して、アストラゼネカでは、それほど重篤な副作用が出ることなど通達をせず効果についてのみ強調している事、主治医からも副作用についての説明はまったく無かった事、主治医も、取材を受けたビデオの中で・・何も説明はしなかったと・・認めていること等、証言しました。
2002年10月3日、訳が分らない状態の中、緊急入院を言われたことについては、
2002年8月15日よりイレッサを服用して、定期の診察日に病院を訪れる10月3日までの服用49回まで、家族や本人も別段異常には気付かずに過ごしていた事を証言。緊急入院を言われ、一体何が起こったのか分らないまま、医師からは、結核か感染症が疑われるので検査をしているとの説明のみ死亡直前まで受けていた。・・ことなどを証言。
緊急安全性情報発出まで、亡くなるまでの二週間
緊急安全性情報が出されてから二日後の10月17日、娘の三津子が横になって眠る事も出来ず座ったままで苦しみながら亡くなっていったことを証言しました。亡くなった後、病院からの解剖のお話に・・この地獄のような苦しみの中で死亡したことは何が原因だったのか大きな疑問が生じ、亡くなった娘にも事実を知らせてあげたいと解剖をお願いすることに決めた苦渋の思いをを証言。そのときの解剖の検査結果を知らせる「剖検報告書」には、「死因は呼吸不全と考える。他の原因は見出されず、ゲフィチニブ(イレッサ)との関連が充分にあり得ると判断する」と記載されていることを証言。
被害に関するアストラゼネカの対応
娘・三津子が死亡した後、アストラゼネカ社本社に電話を入れ、副作用の被害状況を知りたいので教えて欲しいとお願いをした際、アストラゼネカ社では「イレッサによる副作用の情報は入っていないと回答されたこと。また、新聞やテレビ等で報道されている件について、「当社(アストラゼネカ)では副作用の死亡とは考えていない。夫々の患者のガンの悪化が死亡の原因であると考えている。」、と回答されたことを証言。
・・・約一時間の原告側代理人による尋問は終わりました。
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続いて、被告側、国と製薬会社のアストラゼネカ社代理人より尋問が行われました。
ある程度は厳しい尋問を予想していましたが意外と柔らかな質問が多く、それでも時には意地悪く、また尋問ではない詰問も織り交ぜながら、事実確認を主に約30分ほど受けました。
最後に、何か言いたいことはありませんかと聞かれ次のように述べました。
「アストラゼネカ社は、例え抗がん剤と言う特殊な薬ではあっても副作用による間質性の肺炎が発症する確立が高いのは承知しているのであるから、危険情報は、はっきりと示し販売をするべきである。未だに効果のみを強調して販売を続け、服用の後に副作用で死亡しても全てを患者の責任とするこれまでの姿勢を変えないのであれば、このイレッサに対する販売の停止も求めて行かざるを得ないだろう。」と考えを述べました。
・・・この後、次回期日までに提出の書証の確認などが行われこの日の裁判は終了しました。
報告集会
裁判終了後・・裁判所隣接の弁護士会館10階において報告集会が開かれました。
原告本人尋問で証言した2名の原告と弁護団、支援の皆様など50名近くの参加者で溢れる中、弁護団より裁判の報告があり、参加していただいた皆さんから多くの質問や励ましを頂きました。
ご支援へのご挨拶
2004年11月に東京地方裁判所に提訴から5年が経過して、実に様々なことがありましたが、いつも私たちを支えていただき有難うございます。ご存知の通り、抗がん剤による副作用死に対する訴訟ということで、中々に理解が得られず非難中傷や抗議等は後を絶たず、辛く、苦しい活動の連続ですが、最後まで頑張り抜く所存ですと、今後への決意を込めて、皆さまにお礼の言葉を述べました。
記者会見をおこないました。
原告二人と弁護団は、東京地裁の記者クラブにおいて会見を行いました。会見では主に弁護団より、アストラゼネカ社が裁判所に提出した証拠書類に関して、肝心な部分が数枚に亘って黒く墨塗りされている件に触れ、この書類は申請書類の一部であるとアストラゼネカが主張しているが、信じられないこと。墨塗りしていない原本の提出を要求したところ、この墨で塗られたものが国に申請の際に提出したものでこれ以外他にはないと回答された。国は、このようなもので審査をしたのかと詰問したが明確な回答は得られなかった。・・・ことなど含めて、この黒塗り書証については今後も問題として取り上げて行きたいと、弁護団より説明されました。
訴訟への理解も
イレッサ訴訟が始まって以降、これまで軽々に扱われてきた「がん患者の命の重さ」が大きく見直されて、様々な動きが現実化してきました。腫瘍専門医育成制度がスタートして日本のガン治療は大きく変わりつつあります。また、平成16年度から取り組みが開始された「第3次対がん10ヵ年総合戦略」で、治療の地域格差をなくし、全国どこでも質の高いがん医療が受けられることを目的とした「がん拠点病院」が設置されました。
イレッサ副作用被害の発生から既に7年が経過して、当時は批判的であった患者団体や、まだほんの一部ですが、臨床の先生たちからも、イレッサの販売は拙速であった。添付文書の記載の不備や、インフォームドコンセントの不実行など、多くの問題があったと声が出始めて、少しづつですが理解が得られるようになって来ています。
※イレッサ被害と訴訟のおさらいです
イレッサとは
ガンの中でも特に死亡率の高いのが肺がんです。その肺がんの延命治療の新薬として、2002年7月に、承認申請から僅か5ヶ月という短期審査で承認されて、同年8月、特定療養費制度という特例を付けて、世界のどの国より先に日本で販売が開始されました。
承認当時は、副作用がほとんどないので自宅でも手軽に服用出来る。それで延命の効果は大きい、まさに画期的な夢の新薬と宣伝されて販売が開始、日本の殆どの医療現場で使用されたのですが、販売直後から副作用の間質性肺炎による死亡被害が報告され、発売開始から僅か2ヶ月余で危険情報を伝える、「緊急安全性情報」が発出される事態となりました。この被害は、訴訟が提起された2004年末までに集中して557名の死亡が確認され、これまでに787名もの死亡が厚生労働省に報告されています。
抗癌剤による副作用死亡なのに、なぜ訴訟なのか
全国的に発生したイレッサの副作用である間質性肺炎による死亡は、アストラゼネカ社の販売方法に問題があったのではないかと、2004年6月・安全・安心とされて販売がなされ、危険情報の説明がまったくない安易な処方により家族を亡くしたと考える私達遺族は、大阪市北区のアストラゼネカ日本本社に赴き、被害の実態と説明を求める申入れ書を提出しました。この時、アストラゼネカ社は、新聞やテレビ等で報道されているイレッサによるとされる副作用被害について、「イレッサが原因の副作用被害とは考えていない。夫々の患者さんのガンの悪化・進行による死亡と考えている」、「仮に、イレッサが原因としても、抗がん剤使用による死亡は全て患者が納得しての使用であるのだから製薬会社にその責任は無いと考えている。」との回答がなされたのです。
この時期、イレッサによる副作用の死亡被害は拡大の真っ只中にも関わらず、開発・販売の製薬会社がこのような考えの下での対応では患者の命は危険に晒され失われ続けると危惧を抱き、・・被害の拡大防止と、被害者への謝罪、承認制度、抗癌剤医療の改革を求め、承認した国と、販売したアストラゼネカ社を相手として訴えを起こしました。
これが薬害イレッサ訴訟です。
すべての情報の開示によるしっかりとした説明を受けての使用を・・・
しかし・・・
イレッサによる副作用死亡の裁判と、イレッサの継続使用は、まったく別の問題と意図的に捉えられたために、イレッサの被害は拡大しています。その大きな理由として、厚生労働省が、使用継続を許可しているのであれば何の問題はない筈、といった臨床現場の理解が、一部の安易な処方に繋がり、依然として「副作用の少ない手軽に自宅で服用出来る効果の大きな薬」として医師管理のないままに、患者の希望であるとされた適応外の処方等も生じ死亡被害が拡大しています。
たとえ、末期と言われる癌患者の命であっても、このような命の軽視が許されて良いはずはありません。私たちは、信じられる医療の中で、納得出来る抗癌剤治療を願って、その実現のために訴え続けてまいります。
次回の東京地裁・裁判期日のお知らせ
日時・・10月15日(木) 午後1時30分〜午後4時 
場所・・東京地方裁判所103号法廷
次回期日は、追加提訴原告に対する本人尋問が行われます。多くの皆さまの傍聴のご参加をお願いいたします。
・・ お問い合わせ ・・
イレッサ薬害被害者の会
代表・・近澤 昭雄
電話・048-653-3998
FAX・048-651-8043
mail: iressa-higainokai@nifty.com
薬害イレッサ東日本訴訟弁護団
城北法律事務所
弁護団事務局長・弁護士 阿部哲二
弁護士 津田二郎
担当事務官  新 庄 聖
東京都豊島区西池袋1-17-10
エキニア池袋6階
電話:03-3988-4866
FAX:03-3986-9018
次回東日本訴訟・第27回(2009年7月16日)裁判報告