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 薬害イレッサ東日本訴訟
 薬害イレッサ東日本訴訟(東京地裁)は、第一回期日が2005年2月16日に開かれて、今回期日で13回目となりました。ガンの中でも特に死亡率の高い肺がんの新薬として販売された、イレッサによる間質性肺炎という聞きなれない副作用被害の裁判ということで、支援の輪や、ご理解して頂くのは難しい中、皆様にはいつも傍聴に駆けつけて頂き有難うございます。この日も雨模様の中を、裁判開始前の裁判所前での街頭宣伝、チラシ配りなどとさまざまにご支援をいただき有難うございます。
 この日のイレッサ裁判に傍聴にこられた方たちは80人ほどでした。東京地裁103号法廷は満席で97席だったと思いますので、ほぼいっぱいになる程の傍聴ということで多くの皆様に興味を持っていただき嬉しく思います。
今日の裁判は、開廷が15分早まり13:15分より開始されました。前回2月7日の第12回期日では原告側証人の別府宏圀医師に対し、原告側代理人による主尋問が行われましたが、本日は、被告・国と製薬会社のアストラゼネカ社代理人による別府宏圀医師に対する反対尋問が行われました。
12:00〜裁判開始前に、東京地裁前において、この裁判へのご理解を訴えてチラシ配りました。
雨模様の中、学生さんや薬剤師の皆さん、弁護団の皆さんなど20人が参加していただきました。
裁判報告
アストラゼネカ代理人による反対尋問
 13:15分開廷。アストラゼネカ側の反対尋問は3人の代理人弁護士により行われました。まず別府宏圀先生への一般的な質問、ガン治療の経験の有無などから始まりました。特に時間を割いて行われた尋問は、これまでの臨床試験(INTACT・ISEL)についてで、この臨床試験でイレッサの有効性は証明されたと主張し、有効性を納得させるための質問であろうと思われる尋問が延々と続き、しかし、多くの傍聴人を納得させる内容にはほど遠く、時には聞くに堪えないあまりにも拙稚で耳を塞ぎたくなるような事柄もみられて、この裁判で、この質問に何の意味があるのかと訝る別府証人が言葉を詰まらせると、この質問に証人は知識がないから証言ができないのですか・・などと言った低レベルな質問をして、このアストラゼネカ側の代理人は、<得意満面の顔>、さも自分が行っている尋問が素晴らしいものと勘違いも甚だしい情けない自己満足を繰り返し、日本の裁判そのもののレベルを下げた時には軽視したような堪えられないものでした。
 また、証言をしようとする別府証人に対して、不利となる内容の発言には意図的に証言を中断し、「結構!」と挑発を持って切り捨てる行為を繰り返し、原告側代理人より異議ありとの抗議に、裁判長より、「証人には最後まで発言をさせるように」、と注意を受ける一幕もありました。・・・反対尋問を行う立場とその役目は理解するとしても、弁護士としての品格を勉強し教養ある内容で議論を戦わせて欲しい・・、そう願うのは私だけではないはずです。
 尋問の中で、「東洋人には効果が現れている」、と主張するアストラゼネカ社の代理人に対して、何処にその様なデータがあるのか、また東洋人とは「どこ?」を指しているのか、「この東洋人論に日本人は含まれているのか」、と原告側代理人よりの反論に対して、何一つ証拠も示せず、的確な陳述も出来ずにすり替え論でウヤムヤにする有様。
 また、発売当初の第一版の添付文書の問題に関して、原告側よりの尋問に対して、アストラゼネカ社の代理人は、「冒頭ではないにしろ中ほどに『間質性肺炎』は記載されているので問題はない。記載場所が何処であろうと、このように記載しているのだから、医療従事者であれば、間質性肺炎の知識は持っているはずで、副作用の対応は個々に行うのは当然、アストラゼネカ側にはまったく過失はない」、と処方した医師への責任を主張しました。
 2時間に及ぶ尋問は、責任逃れに終始し、その主張を証明できる明らかなデータを示すことが出来ないまま、3時8分に、被告・アストラゼネカ社代理人による尋問は終了しました。
 国側代理人による反対尋問
 国側代理人による別府宏圀医師への尋問は、5分休憩の後、15:13分より始まりました。
まず、国がイレッサを承認した問題で、・・アメリカ(FDA)においても、我が国同様、抗がん剤の承認には腫瘍縮小効果をみて承認する場合もあり、我が国の抗癌剤の承認制度が特異ではないと主張。また、イレッサの安全性、作用機序、有用性、有効性について、別府医師に対して見識をもとめる質問・尋問が行われました。
 また、このイレッサによる死亡被害は、患者が使いたいと希望しているからで、止むを得ないものである。と、副作用で死亡する事は仕方がないのではと言わんばかりの主張を繰り広げて、致死的な副作用についても、安全性についても、国としてのはっきりとした説明はありませんでした。
 いずれの質問においても迫力に欠けるもので、報告されている副作用被害者1708人と内・死亡患者767人に対する実質的な被害に対する問題の解決に関する尋問・審理はなされないまま、アストラゼネカ代理人同様、何一つとして科学的なデータを示す事がないままに国側の尋問は、16時:00分に終了しました。
この後、裁判所より、次回期日の提出書証の確認が行われて本日の裁判は閉廷しました。
別府宏圀医師に対する、被告・国と、アストラゼネカ社の反対尋問の報告を、前回に続き、原告側弁護団の木下正一郎弁護士に寄せて頂きました。
薬害イレッサ東日本訴訟 第13回期日
別府宏圀先生反対尋問報告
2007年4月25日・東京地方裁判所103号法廷 午後1時15分開廷
薬害イレッサ東日本弁護団
弁護士 木下正一郎
 平成19年4月25日,原告側証人である別府宏圀先生に対する被告側からの反対尋問が行われました。この日は雨天でしたが,多数の支援の方々に傍聴に来ていただきました。ありがとうございます。
被告側の不当な質問
 この日の被告側反対尋問では,揚げ足をとる質問,答えを途中で打ち切って別府先生の真意を述べさせないようにする質問,無駄に別府先生をテストする質問が続きました。
 例えば,2月1日発表された国内第V相試験(ドセタキセルとの比較試験)結果に関する尋問で,被告アストラゼネカ側から,統計学上の数字をいくつかあげ,この場合は非劣性が証明されたと言えるのか,劣性が証明されたと言えるのか,等という質問が繰り返されました。この試験では,イレッサのドセタキセルに対する非劣性(劣っていないこと)を示すことを主要な目的としていましたが,その目的を達成できなかったことはアストラゼネカ自身認めているのです。そうであるにもかかわらず,裁判では未だになりふり構わずイレッサに有効性が認められるという相反する主張を行っているのです。
 傍聴をしていた方にとっては,「証人が証言したいことを最後まで言わせろ!」という気持ちにさせられ,ストレスの溜まる時間が続いたことと思います。
 このような被告側の質問にも,別府先生は,冷静に,ご自身の考えを正しく伝える証言されていました。
再主尋問によって明らかになったア社・国の誤り
 被告側反対尋問後,原告側より再主尋問を行いました。ここで,反対尋問では説明できなかった別府先生の考え,すなわち,イレッサの承認は誤っていたこと,警告欄の記載がないことは誤りであったこと,ドセタキセルとの比較試験では非劣性を示すという主要目的を達成できなかったこと,等々を明確に述べていただきました。また,承認前の臨床試験段階から,イレッサによる間質性肺炎によって死亡したと考えられる症例が多く存在していたことも証言いただきました。
 それまで訳の分からない被告側反対尋問を聞いていなければならなかった傍聴人の方々にも,この再主尋問はとても良い評価をいただきました。
 これまでの別府先生の証言により,アストラゼネカ,国が,危険性情報等からイレッサを承認べきではなかったこと,そうであったにもかかわらず承認をして適切な警告もしなかったため,イレッサによる多大な被害を生んだことが,一層明らかにすることができました。
今後の証人尋問傍聴のお願い
 今後も,原告側証人である京都大学教授福島雅典先生,医薬ビジランスセンター代表浜六郎先生の証人尋問が行われます。被告側の不当な尋問を許さず,裁判を正しい結論に導くため,たくさんの方々に傍聴に来ていただくことをお願い致します。
以 上
●裁判終了後の報告集会
毎回裁判終了後に、近くで会場を設け報告集会を開いています。弁護士さんから、裁判の説明が行われ解り易く解説をしていただきます。裁判の感想や疑問などの質問も受けています。今回は、16:30過ぎより,TKP霞ヶ関会議室(港区西新橋1-6-6虎ノ門立川ビル3階) において開催いたしました。
◇本日の報告集会には、裁判を傍聴した被告側関係者を除いた65名ほどの皆さんに参加していただき、小池純一弁護士より、被告側代理人が尋問した内容について、解説していただきました。
◇原告側証人として出廷していただきました、別府宏圀先生よりご挨拶をいただきました。前回期日と今回、長い証言をしていただきたいへん有難うございました。心よりお礼申し上げます
●裁判後記
 「この余りにも虚しい尋問を聞いて」
 この尋問の中で,アストラゼネカの代理人も、国側の代理人も副作用で死亡している767人の被害者については一言も触れませんでした。触れることが出来なかったのでしょう。このイレッサは,これまでの薬害訴訟とは異なって初めから製薬会社のアストラゼネカ社も国も、副作用による死亡を認めている点です。私達の訴えもこの副作用で死亡したことに対する損害の賠償を求めています。
 販売直後から、安全で副作用が少なく効果が大きな画期的な新薬であり、患者たちが挙って飲みたい薬・・と近畿大の福岡教授、他著名な癌専門医の多くが推奨したこと等を患者たちは信じ服用した結果の被害です。当時・盛んに行われていたこのような広告宣伝を問うているのです。一方国側には、分子標的薬と言われる新薬で延命の効果が大きいとして承認した事に対して、どのようなデータをもって承認したのか、その責任の有無を問うているのです。
 私達は難しい主張をしているのではありません。希望を持って治療に頑張っている多くのガン患者の薬を失くそうとしている訳ではありません。国も製薬会社のアストラゼネカも効果について示す事が出来ない、その上副作用による死亡は僅か4年で767人も出ている事を問題にしているのです。単に、効果がないとしても、適正な使用方法での被害であれば問題にしないのです。僅か4年足らずで767人という死亡が何故発生したのか大きさを問題にしているのです。真の自己責任・自己選択による服用であれば、それはある程度は仕方のない事として受け入れなければならないと理解しますが、このイレッサ被害の自己責任論が果たしてどこまで使用患者に求められるのか、納得しての服用なのかを疑問としています。
 「これを飲まなければ余命の補償はありません。これを飲まなければ退院ということになります」等と言われ仕方なく飲んでいる患者が今も驚くほど多くいます。そして副作用に見舞われ死亡しても医師は何の責任も問われない。これが自己選択と言えるのでしょうか、納得しての服用として片付けられるのでしょうか。ガン患者の命はガン患者とその家族が守らないと見捨てられてしう、このような抗癌剤治療の考え方を危惧しています。
 アストラゼネカの代理人も、国側の代理人も、一体この裁判で何を審理しようとしているのでしょうか。患者のためになる、不安に感じている多くの患者たちのために努力すべきところを、子供の喧嘩にも劣る、下らない口撃のみで何が生まれると言うのでしょう。『効いている患者がいれば700人死んでも800人死んでも仕方がない事だから文句を言うな』とでも言うのでしょうか。少しでも人間の心を持っているのなら、これからの抗がん剤治療の発展のために、そして被害に遭って亡くなった被害者の為に、この訴訟を通して変えていく努力は出来ないのでしょうか。
 私達の訴えをご理解下さい
 私達は、イレッサと言う肺がん治療薬によって副作用被害にあったことに対して提訴しました。
イレッサの承認取り消しを求めて提訴したのではありません。しかし,審理の過程でイレッサに延命の効果はなかったとのデータが出てきた場合、また、死亡による被害が効果を上回るような事態がある場合は販売の見直しや規制を求めることも吝かではありません。
@販売前から行っていた宣伝広告によって患者たちは皆信じて服用した結果被害に遭った。この広告宣伝は違法でないのか。
A第2相試験の段階から副作用による被害報告が出ていたのにそれを無視して国はデータを隠蔽し承認した。違法ではないのか。
B副作用による死亡は製薬会社自ら認める所で、患者に対して謝罪と補償をすべきではないのか。また、今後抗がん剤によってこのような悲劇が起きないように抗がん剤による副作用の救済制度を早急に設けるべきである。と主張しています。
 ガンという忌まわしい病に罹り必死に生きようと苦しい治療に挑み、思い半ばで苦しみながら亡くなって逝った家族を持つ私たちが、単に損害賠償のみで辛い戦いを続けているのではありません。
何卒私達の訴訟へのご理解をお願い致します。
◆次回以降の裁判期日◆
東日本訴訟(東京地方裁判所)
◆5月23日(水)午後1:30〜 東京地裁(103号法廷)
原告側証人・京都大学 福島雅典教授への主尋問。
◆7月18日(水)午前10:20〜 この日は丸一日の予定です。
福島雅典教授への反対尋問・・浜六郎医師への主尋問。
西日本訴訟(大阪地方裁判所)
◆5月11日(金)午前10:00〜午後4:00大阪地裁202号法廷
浜六郎医師への反対尋問 開始

・・ お問い合わせ ・・
イレッサ薬害被害者の会
代表・・近澤 昭雄

電話・048-653-3998
FAX・048-651-8043
mail: iressa-higainokai@nifty.com
薬害イレッサ訴訟東日本弁護団
豊島区西池袋1-17-10
池袋プラザビル6階
城北法律事務所
電話・03-3988-4866
FAX・03-3986-9018
事務局長・弁護士 阿 部 哲 二
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