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 薬害イレッサ判決報告
2011年3月23日、薬害イレッサ東日本訴訟判決
午後3時より、東京地方裁判所101号法廷において言渡されました。
2004年平成16年11月25日、東京地方裁判所に訴状提出して、第一回裁判が開かれたのが2005年2月16日
、6年の歳月をかけて年4回のペースで28回の裁判が開かれ、漸く控訴審の判決の日を迎えることができました。

●東京地裁101号法廷
午後3時,開廷してすぐに松並裁判長より判決が言い渡され,国・アストラゼネカの責任が認められました
主文
被告らは,原告に対し,連帯して880万円及びこれに対する平成14年10月17日から支払済みまで年5分の金員を支払え。
因果関係】 
イレッサの副作用である間質性肺炎について,添付文書の第一版に致死的となる可能性のあることなどが記載されていれば,イレッサの服用を開始してこれを継続することなく,イレッサによる間質性肺炎の発症ないし増悪により死亡することはなかったものと認められる。
結論
被告国は,厚生労働大臣がイレッサ承認当時,被告会社にたいして,添付文書に,イレッサの副作用である間質性肺炎が致死的となる可能性があることなどを記載するよう行政指導しなかったことにつき,原告 近澤昭雄及び○○に対し,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負う。
被告会社は,イレッサが販売開始当時,添付文書に間質性肺炎が致死的となる可能性があることなどの記載がなかったことにより製造物の欠陥を有していたことにつき,原告 近澤昭雄及び○○に対し,製造物責任法3条本文に基づく損害賠償責任を負う。
○○の姉である原告○○は,固有の慰謝料請求権を有しない。
○○については,イレッサの服用を開始した当時,既に添付文書にイレッサの副作用である間質性肺炎が致死的となり得るものであることが記載されており,被告らは損害賠償責任を負わない。
判決時間については,災害非常時であるからという裁判所の配慮で,言渡し開始から僅か10分で終了。・・閉廷されました。
●判決文の骨子と要旨は以下をご覧下さい。
薬害イレッサ訴訟 東京判決骨子   ◇薬害イレッサ訴訟 東京判決要旨    
先月の2月25日,大阪判決では,アストラゼネカ社の責任を認める判決が出されましたが,国に対しては責任があるとまでは認められないとされて全面勝利を勝ち取ることは叶いませんでした。私たちは,この東京地裁では全面勝利をと願ってより一層の訴え・活動を続けておりましたが,3月11日の東北・太平洋沖で発生した未曾有の大地震で,全ての活動や行動の自粛・停止を余儀なくされました。
頻繁に続く余震,崩壊した福島原発からの放射線の脅威,電力不足で交通の足は乱れ首都圏のJRや地下鉄は3〜4割本数を減らして運行するというそのような中で,果たして裁判が開かれるのだろうかと不安で一杯したが,傍聴券の配布が行われるほど大勢の傍聴者の中で判決が言渡されました。

●裁判開始前に集会を開きました。
午後2時より,東京地裁前において,大勢の支援の皆さんに参加して頂き判決前ミニ集会を行いました。

地震・原発の影響で交通機関が大幅に乱れる中を,たくさんの皆さまに駆けつけて頂き,連帯の励ましを頂きました。

支援者の中には,ガンを経験された方や,ご家族の中でがん治療を経験した方たちがたくさんいます。
その皆さんが一様に訴えています。
がん患者の命の重さを。
まだ数年は頑張るぞと治療に意欲的だった患者が,後1年以上は,あと半年以上は生きられると思われていた多くの患者が,次の治療薬として選択したイレッサによって,数日で,数週間で亡くなったという現実。
副作用は軽度のもので服用を中止すれば改善すると使用承諾書に示された情報を信じただけなのに,亡くなった被害患者に向けられた言葉は,自己責任であり,抗がん剤治療の副作用死亡は当り前な事と言う。
私たちの訴訟に批判的な人達の言い分は,国や,製薬会社を訴えるのは筋違いで処方した医師を訴えるべきであると言う。この訴訟は,ガン治療の改革を阻む行為であり,多くのがん患者を苦しめることであると言う。このような作為的に誘導された声に対して,大勢の皆さんが自分の事として支援に駆けつけ,共に戦ったのがこのイレッサ訴訟です。
15:30〜報告集会が開かれました
裁判終了後、裁判所に隣接する弁護士会館の中2階講堂クレオにおいて報告集会が開かれ参加の皆さまから,お疲れさま,良かったですね,とたくさんの言葉をいただきました。

弁護団より,先の大阪判決とこの東京判決についての相違点の説明が行われ,今回の東京判決では実に画期的な判決であるとの説明に喜びの声が挙がりました。

 戦い済んで・・・
判決を迎えてやっと一区切り,さまざまな思いが去来します。
長い長い,出口が見えないとてつもなく長い訴えの日々でした。
イレッサの副作用で娘を亡くしたこと,そして,この被害は拡大するばかりで止まる気配がないことに疑問を抱いて行動し関係各所に尋ねてみると,抗がん剤治療には副作用の死亡は当然で自己責任ですと皆が言います。そんなばかな。製薬会社より出された資料を基に国が承認し,医師が患者に対して説明して,患者は信じ安心して使用した薬で,それが例え抗がん剤ではあっても,数日で,数週間で苦しみながら亡くなる,そんなことが当然として許されるなんてあってはならないと,娘が味わった悲劇を胸に秘めて,得られない理解の中を連日訴え続けて8年が過ぎました。
慣れないことばかりの連続でした。要請に出かけ,支援の皆さんとの街頭宣伝,講演で地方に出掛けてはチラシを配って訴えました。・・冗談じゃない!! こんなことが許されてなるものか・・そんな憤りを胸に,被害の拡大を少しでも防ぐことができればと訴えてきましたが・・,まだまだ生きられる大勢の患者が亡くなってしまいました。
国とアストラゼネカに対する責任は認められましたが気持ちは晴れません。(近澤)
お問い合わせ
イレッサ薬害被害者の会
代表 近澤 昭雄


電話:048-653-3998
FAX:048-651-8043
mail: iressa-higainokai@nifty.com
薬害イレッサ東日本訴訟弁護団
城北法律事務所
弁護団事務局長・弁護士 阿部 哲二
弁護士 津田 二郎
担当事務員 新 庄  聖
東京都豊島区西池袋1-17-10
エキニア池袋6階
電話:03-3988-4866
FAX:03-3986-9018

次回・控訴審第1回裁判(9月6日)の報告