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  2005年7月29日,35℃近い猛暑の中,大阪地方裁判所202号法廷で,薬害イレッサ第5回裁判は午後1時15分開廷しました。202号法廷に上がる正面階段のところで,ある二人連れの女性の方のお話が聞こえてきました。・・<この抗がん剤の裁判は他人事とは思えない,ずっと見続けてつづけて行きたい>,と話しながら法廷に入って行かれました。原告の一人として,しっかりと頑張っていかなければと改めて感じました。
●この日の裁判は
西日本訴訟としては三人目の原告となった,神戸在住のSさんが意見陳述を行いました。誰もがそうだと思いますが,人生の中で,裁判所に係わるような出来事など起こり得ないのが普通だと思います。この日,意見陳述をされた原告の方も・・大阪地方裁判所の大法廷で,裁判長や左陪席,右陪席が威厳をもって身動ぎもせずに見据え,たくさんの傍聴人と,原告側訴訟代理人の弁護士の方達15人ほど、被告側代理人弁護士の方達も15人ほどが居並ぶ中で,意見陳述書を読み上げることには相当の覚悟や決心がいるものです。読み上げる声は震え,喉は乾いて,自分で自分の声すら聞こえないほどの状況の中を,原告のSさんは,か細い声ではありましたが廷内に澄み渡っるような凛とした声で亡くなられたご主人への思いと,イレッサの副作用被害の悲惨さを,そしてこのような被害が二度と起きないように国も,製薬会社も医療の現場も,たとえ肺がん患者であっても,少しでも長く生きたいと頑張っている命の重さを考えて欲しいと,何度もなんども,涙を堪えながら意見陳述を行いました。
この日の裁判には,肺がんの四期と診断されて抗がん剤治療の後に,他に治療方はないかといろいろ探している時に,2002年当時,夢のような新薬と言われたイレッサを知り医師の進めも信じて服用した暫くの後,重篤な間質性肺炎被害に遭いまさに九死に一生を得たという,運良く生還された,西日本原告のお一人,四日市の清水さんご夫妻も傍聴,他の西日本原告の皆さんやご家族の皆さんも傍聴しました。東京からは,東日本訴訟原告の近澤氏も駆けつけ傍聴,報告集会に参加しました。
●裁判終了後、近くのいきいきエイジングセンターで報告集会が開かれました
弁護団より,これまでの裁判の経緯と概要など説明して頂き,本日行われました意見陳述の中身の説明がありました。
この報告集会は,参加は自由でどなたでも発言もできます。私達の会に連絡をして頂き初めて裁判を傍聴したと言う方や,裁判の傍聴が初めてと言われた看護士の方達,薬学部の学生さん,そして,お母さまを抗がん剤の誤投与で亡くされたと言う方で未だ悲しみの癒えない方も参加されていました。
いつも私達の裁判を支援していただいている皆さま。また,私たちとは考えが違って・・イレッサの副作用は果たして薬害と言えるのかとお考えの方も参加されるなど、さまざまな方達の傍聴と参加で,西日本訴訟第5回裁判の報告集会は平成17年7月29日の猛暑の中を終了致しました。
報告集会の司会進行は、原・国分法律事務所の、弁護士・国分妙子先生に務めて頂きました。

●次回・西日本訴訟裁判期日
イレッサ薬害西日本訴訟の第6回裁判の期日は大阪地裁で9月20日(火) 午後1時15分より,202号法廷で開かれます。

イレッサ副作用死亡被害
(1)イレッサとは
イレッサ(一般名ゲフェチニブ)は、アストラゼネカ社が開発した肺ガン治療薬で、それまでの殺細胞的な抗ガン剤と異なり、癌増殖にかかわる特定の分子を標的とする分子標的薬として、承認前後から、入院の必要のない飲み薬という手軽さも手伝い、「副作用の少ない画期的な夢の新薬」として大々的に宣伝されました。イレッサの標的は、細胞増殖に関わる上皮成長因子受容体(EGFR)とされています。
(2)販売直後から副作用被害が多発
しかし、販売開始直後から、宣伝とは異なり、急性の間質性肺炎(ステロイドパルス療法が効を奏さない場合には、治療法のない致死的な疾患)等の急性肺障害の副作用症例が多数報告され、2002年10月15日には、厚労省の指示に基づき、アストラゼネカが緊急安全情報を発出し、添付文書の警告表示を改訂してきました。その後も、2003年4月までの間、アストラゼネカは、合計4回にわたり添付文書の記載を改訂し、その都度、急性肺障害に対する警告をふやしていき、原則入院処方とし、さらに急性肺障害の危険因子を記載するなどしていったのです。
(3)急性肺障害の予見可能性
イレッサにより急性肺障害が発症する可能性については、すでに臨床試験や承認前の個人輸入による使用により副作用症例が報告されており、、予見可能性があったことは明らかです。しかし、アストラゼネカは、臨床試験により急性肺障害を発症したという副作用報告やイレッサ投与により肺障害が悪化したという動物実験の結果などを厚労省に正確に伝えていませんでした。また厚労省も、海外等の臨床試験症例で重篤な肺障害を発症した事例が報告されていたにもかかわらず、そうした症例について検討をほとんど行わないままイレッサの承認をしました。
(4)アストラゼネカと国の責任
以上のように、イレッサにより致死的な急性肺障害等の副作用が発生することは、承認以前からアストラゼネカ、国ともに十分予見可能な事柄でした。したがって、アストラゼネカと国はともに、イレッサの承認、販売開始にあたっては、最低限、間質性肺炎等の急性肺障害の危険性につき、厳重な警告を行い、入院処方に限定するなど、急性肺障害の発症を抑止するためのあらゆる方途を取るべき注意義務がありました。にもかかわらず、これを怠ったために、イレッサの副作用により多くの被害者の生命が奪われたことは、きわめて深刻であり、この点でアストラゼネカと国の責任はまことに重大です。

・・ お問い合わせ ・・
イレッサ薬害被害者の会

電話・048-653-3998
FAX・048-651-8043
mail: iressa-higainokai@nifty.com
薬害イレッサ訴訟西日本弁護団
弁護団事務局長 永 井 弘 二
京都市中京区鳥丸通御地東入
アーバネックス御地ビル東館6階
御池総合法律事務所
電話075−222−0011
Fax075−222−0012

西日本訴訟(大阪地裁)・第6回(2005年9月20日)裁判報告