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2010年7月30日・大阪地方裁判所202号法廷において
薬害イレッサ西日本訴訟の31回期日で最終弁論が行われ結審されました
 これまで幾多となく繰り返されてきた薬害訴訟は,裁判が開始される前には問題となった薬は既に販売が中止されていたり,回収がなされています。しかし,この薬害イレッサ訴訟では,裁判が開始されて6年が経過しても尚,一部の肺がんの患者さんに対しては欠くことのできない必要な薬剤として販売は継続され,多くの医療現場で使用されている点でこれまでの薬害裁判と大きく異なってます。
 販売から僅か2年半で557人もの死亡被害者を出しながら,抗がん剤による副作用死はある程度は仕方がないとされてこれまで見捨てられて来ましたが,何処までが仕方のない死亡とするのか,仕方がないとして済まされ続けてよいのかを問うています。世界でも初と言われ,死亡被害も仕方なしとされる抗がん剤による副作用の死亡被害が,法廷の中で何処まで審理を尽くしていただけるのか分かりませんが,それでも私たちはこんなことが許されて良いのかと,「がん患者の命の重さ」について訴えを起こしました。
これまでの多くの皆さまのご支援を心より感謝申し上げます。
■9時55分・・開廷
報道用に2分間のカメラ撮りの後・・提出書証の確認が行われました。
■10時05分〜原告の意見陳述
原告の稲垣さんより意見陳述が行われました。・・・国と製薬会社は事の真実をしっかりと受け止め納得の出来る対処と被害に対する救済を行って欲しい。患者が安心して使用できるよう安全で有効な薬を販売するよう切に望みます。・・と陳述しました。
続いて原告のKさんの意見陳述が行われ・・主人はがんと宣告されても常に気丈に抗がん剤治療を受けるなど前向きに戦っていた。効果が大きくて副作用が少ない薬といわれ信じて服用したのにこんなに苦しみ死んでいった,この悲しみは消えないと声を詰まらせながら最後の訴えをしました。
■10時15分〜原告側最終弁論
原告側代理人による最終弁論が,スライドを使用して画面に大きく映し出しながら行われました。
まず原告側代理人から・・イレッサの審査について,余りにもずさんであった。この被害をしっかりと検証しないと同じ薬害がまた起こされるであろうと述べました。
プレゼンでは,185ページものスライドを使用して,これまで裁判の中で主張してきたさまざまなイレッサについての問題を,更に詳しく分かり易く説明が行われました。
■11時40分〜
つづいて,薬害C型肝炎訴訟,薬害HIV訴訟の原告代理人による関連した意見陳述,つづいて,薬害B型肝炎訴訟の原告代理人による関連した意見陳述,そして,泉南アスベスト被害訴訟の原告代理人による関連した陳述が行われ,午前中は終了休憩となりました。
■13時10分〜原告の意見陳述
原告のSさんによる意見陳述が行われ・・ご主人ががんと宣告されたときから抗がん剤治療との戦い,イレッサを服用に至った経緯について陳述しました。・・イレッサは国が認めた治療薬だから何の疑いもなく主人は服用しました。しかし,悲惨な副作用の被害に苦しみ亡くなりました。このイレッサが,本当に一部の患者に対して効果があると証明がなされるのであればそれを取り上げようなどとは思いません。しかし・・何も知らされず信じて服用する患者の命をこれ以上奪うようなことはしないで下さい。と訴えました。
つづいて,生存原告の清水秀喜さんが意見陳述を行いました・・私はイレッサを服用して悲惨な副作用被害に遭いながらも運よく助かって今も肺がんのW期と宣告されながらも戦い続けています。イレッサは当時・副作用はないとかガンによく効くと言われみんなが服用しました。しかし,このような被害が起きたのに国も,アストラゼネカも何一つ対策を取らず多くの患者が死んでしまいました。がん患者の身になって考えなかったのでしょうか。何故,こんなに大勢の人たちが死ななければならなかったのでしょうか。づっと,何故・何故と思い続けています。答えが欲しいです。・・と訴えました。
■13時25分〜原告代理人の最終意見陳述
薬害イレッサ西日本弁護団団長の中島晃弁護士が,この訴訟に対すす最終の思いとして陳述を行い,13時30分,本訴訟の原告側による弁論はすべて終了しました。
■13時30分〜被告国側代理人による最終弁論
被告・国側による最終の意見陳述が,パワーポイントを使用してスライドをスクリーン画面に映し出しながら行われました。プレゼンの内容は,国がこれまで何度となく主張してきた点,
●承認に際しての拙速はなかったこと
●間質性肺炎に関しても,当時・知見は混乱していて判断するには時間は必要である
●医学的,薬学的・知見についての争点整理・・抗がん剤の有効性評価の方法論・歴史について
などについて従前の主張を繰り返し行ない,15時20分,国側の最終弁論は終了しました。
■15時25分〜被告アストラゼネカ社代理人による最終弁論
アストラゼネカ社の最終弁論がパワーポイントを使用して行われました。
●本件訴訟の特質
●イレッサの有用性
●イレッサの間質性肺炎に関する注意喚起の妥当性について
このイレッサについては,何ら問題はなく,東洋人に対しては特に高い効果を示し,ISEL試験でも,IPASS試験でも統計学的に証明されている。平成16年になってEGFR遺伝子変異のある患者に対して高い効果を示すことも判明され,安全性についても有効性についても科学的証明がなされている。とこれまでの主張を繰り返し述べました。
弁論の最後にアストラゼネカ社の代理人が最終陳述を行い・・このイレッサでは多くの患者の命が永らえられて来た,市場に残して頂きたいと訴え,16時17分,この訴訟の全ての弁論は終了しました。
■判決日は来年2月25日
ざわめきで聞き取り難い中でしたが,・・これで最終弁論とします,判決は来年2月25日午後3時です,と裁判長より申し渡されて結審されました。

■この日の裁判に関連してさまざまな行動が行われました。
裁判所入廷シーンの撮影・・9時30分〜大阪地裁正面入り口に東西原告の代表として近澤が,そして弁護団の皆さんによる入廷シーンを数台のテレビカメラにより撮影が行われました。
この裁判には,東京から支援や弁護団など72名が傍聴に駆け付けました。
大阪の支援の皆さんを合わせると200名を越す傍聴となり整理券が配布されましたが,傍聴出来ないたくさんの方たちで溢れました。この大阪地裁202号法廷は,傍聴席は90席余り,この日は記者席として15席ほど用意されましたので休憩を利用して,入れ替えをお願いしたりで対応されたようです。
17:30〜18:30 報告集会が開催されました。
場所は梅田スカイビルタワーウエスト36階会議室space-Lで,数台のテレビカメラの取材の中を大勢の支援の皆さんに参加して頂きました。
・・報告集会と同時に,アストラゼネカ本社ビル周辺において,支援の皆さんや弁護団,原告など200人が,仕事帰りの皆さんや通行の方たちに被害のチラシを配り訴えました。多くの支援の皆さんが訴えをつづける中を,原告代表として近澤,そして公害被被害者総行動実行委員会の森脇代表や加盟する団体のメンバー7名で,アストラゼネカ本社ビルに出向いて対応の総務部長に要請書を提出しました。
18:40〜19:40 パレードが行われました。
約400人近い支援の皆さんが,大淀中公園に集結してアストラゼネカ周囲を,数台のパトカーに先導されて一時間の抗議のパレードを行いました。
戦い済んで・・・
酷暑の中,午後8時近くまで行われましたさまざまな行動スケジュールは無事に終わりました。参加されました皆さんのお顔は疲れきって,汗とホコリにまみれています。
お疲れ様でした。ありがとうございました。・・・この後,大阪駅近くの居酒屋に移動してお店を埋め尽くすような参加者の中で,冷たいビール・ウーロン茶などで乾ききった喉を潤し懇親しました。
・・・
午後10時散会 m(_ _=)m


●あしあと
今回の裁判のために,前日の夜9時20分,さいたま市の大宮駅西口発のJR高速バスに乗車して大阪に向かった。この高速バスは大阪に出掛ける際に時々利用しているが歳を取り過ぎた私には少々身体に負担を感じつつも,利便性重視と節約第一と腰の痛みに耐え,不眠の辛さに耐えながら再び乗車した。大宮駅を発車して暫くは一般道を走る。東所沢駅に立ち寄り,所沢駅から東大和市駅,そして立川駅に立ち寄りながら乗客を拾って中央高速道に入り,翌朝7時25分に大阪駅の桜橋口に到着する。ちょうど10時間の長旅である。
大阪には何度も足を運んだ。裁判が開始されてから関連する用事も兼ねると40回,いや50回にはなるだろうか。今回の結審を期に振り返ってみると,いつも直線ばかりでほとんど何処にも立ち寄っていない。只ひたすら目的に向かって歩いてきた。寄り道もしないのにこの6年間,私にとって長く・長く感じる歳月であった。
原告の使命とは何か,原告の責任・義務とは何かを自分に問い掛けながら自分に鞭打って只ひたすら,亡くなった娘と同行二人で,黙々と歩き続けた。
疲れたが
もう少しでこの長旅は終わる。
もう少し頑張ろう。

・・ お問い合わせ ・・
イレッサ薬害被害者の会
代表 近 澤 昭 雄

電話・048-653-3998
FAX・048-651-8043
mail: iressa-higainokai@nifty.com
薬害イレッサ訴訟西日本弁護団
弁護団事務局長 永 井 弘 二
京都市中京区鳥丸通御地東入
アーバネックス御地ビル東館6階
御池総合法律事務所
電話075−222−0011
Fax075−222−0012


西日本訴訟(大阪地裁)・第32回・最終弁論(2012年5月25日)裁判報告