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●今回の裁判は、原告側証人の・医薬ビジランスセンター理事長で医師の浜六郎先生への被告側代理人による反対尋問が午後1:30分より午後5:10まで行われました。
この日の裁判に、東京から約30人の支援の皆さんが駆けつけ傍聴席をいっぱいに埋めました。 |
薬害イレッサ西日本訴訟は、提訴から既に5年が経過して全ての証拠書類は提出され、残るは原告の本人尋問のみとなりましたが、今回の裁判では、文書提出命令で出た膨大な臨床試験の資料に基づき新たに判明した点について、原告側証人の医薬ビジランスセンター理事長で医師の浜六郎先生に対する被告、国とアストラゼネカ社からの反対尋問が行われました。
今秋には、結審を向かえると予想されるこの時期に、再び行われる浜六郎医師への反対尋問が、何故このようにダラダラとくだらない尋問を被告側は行わなければならないのか理解に苦しみます。同じ質問を何度も繰り返し、意味のない時間稼ぎの質問で裁判時間を長引かせ、証言する浜六郎医師が少しでも発言ミスを犯さないかと、証言ミスでも犯せば少しでもネチネチと突付いて好転の糸口になるかも知れないみたいな何とも情けない戦術?とも感じられて、重箱の隅をつつくようなお寒い尋問に終始する聞くに堪えない内容でした。
このような裁判状況でしたので、特に取り上げてご報告する事がございませんでした。 |
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薬害被害裁判では、
本当に薬害被害が起きたのかが一番肝心なことですが、イレッサ副作用被害の裁判では、薬害被害が起きて多くの患者が副作用により死亡していることは、国も、製薬会社のアストラゼネカも初めから認めていることですからもこの点について、副作用被害があったか、無かったかの論争は無駄な事は双方が一致しています。では、何故・このように被害が拡大したのか、何故患者たちは服用に至ったのかについて、国の責任、アストラゼネカの責任、患者側にどのような責任があったのかなどについて審理されるべきです。 |
イレッサの副作用被害は、
議論される一つに、効いている患者がいるという問題があります。肺がん治療に、患者が使用できる薬はあまりにも少なく延命の効果についてもそれほどに期待できる薬剤は未だなく、僅かの効果を期待して大きな副作用に苦しみながら治療を続けているのが現状です。このイレッサのように、死亡に至る被害は他剤よりはるかに高いことは分っていながら使用できる薬が少ないことと、劇的に効果を表す患者がいることを理由として必要な薬剤であると、国も製薬会社のアストラゼネカも主張しています。しかし、この主張には無理があります。1000人に効いているから100人の死亡者が出ても認められるべきと主張している被告側の考えがどのように認められるでしょうか。 |
厚生労働省は世界のどの国より先に半年という短い審査で2002年7月5日、イレッサを承認しました。厚生労働省では、保険適応されるまで時間が掛かるからとして「特定療養費制度」を初めて適応し一錠9.000円で販売を許可しました。同年8月30日に保険適応され一錠 7216.10円で全国の医療現場で使用されました。この二ヶ月の後、多くの副作用死亡被害が出ているとして緊急安全性情報が出され、以後死亡は拡大して現在までに787人の死亡が報告されています。 |
・・アメリカは日本の承認から1年近く経って承認
2003年5月5日、アメリカ、FDA(食品医薬品局)がイレッサの販売を承認しました。標準治療では効果がなかった患者に限って使用などの厳しい条件付きでの承認となりました。
しかし、日本での死亡被害が拡大していることを知ると、いち早く、2005年6月17日FDA(米食品医薬品局)は、イレッサの投与について・・新規の患者には投与しないように・・新規症例への処方は臨床試験への参加を前提とすることという内容の警告を発表し素早い対応で被害拡大を防ぎました。 |
・・韓国では、日本の承認から2年後に承認
2004年4月21日、韓国の食品医薬品安全庁がイレッサの販売を許可しました。 この時点でのイレッサ承認国は、日本・米国・豪州・シンガポール・アルゼンチンに次いで、韓国が6番目の承認となりました。 |
・・アストラゼネカ社の本社がある自国・イギリスでは...
イレッサを開発したアストラゼネカは、 日本の承認から7年が経過してようやく、自国・イギリスも含むヨーロッパ諸国(EU)において承認を受けました。
自国・イギリスにおいては、死亡に至る被害が大きいと一度提出していた承認申請を自ら取り下げたままでしたが、副作用被害のメカニズムについての解明が進み死亡被害も減少が見られだしたとして、2008年5月5日に、再び、欧州医薬品庁(EMEA)に承認申請を提出、2009年7月1日に承認されたという経緯があります。適応は局所進行または転移性非小細胞肺がんの成人患者で、上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ(EGFR-TK)遺伝子に変異を有する人々と条件つきです。
このように、アメリカやイギリスで取られた措置こそが、本来医薬品の副作用被害に対して求められる安全対策の姿だと思います。 |
肺がん治療に、効果が期待出来る薬が少ないのは世界どの国においても同じです。何故、日本だけが見切り発車をしてしまったのか、何故、被害が現れても拡大を防ぐ対策を取らなかったのか、自国・イギリスなみの対応を日本では何故取らなかったのか、多くの疑問が残ります。日本人だけが、実験台にされたかのようにこんなにも多く被害に遭って死亡している事実。肺ガン患者は予後がないのだから死亡被害は仕方がないと公言する製薬会社ですが、予後がないのは日本人だけではない筈です。このような問題について私たち原告は「がん患者の命の重さ」を問い、裁判所に審理をお願いしました。 |
長い戦いを経て、この薬害イレッサ裁判もいよいよ大詰めを向え、残すは原告本人尋問のみとなりましたので、せめて、被告・国とアストラゼネカは最後くらいはジタバタしないで患者の身になって納得出来る裁判の進行を願うばかりです。 |
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