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■ 2007年10月9日・薬害イレッサ西日本訴訟反対尋問報告 ■
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薬害イレッサ西日本訴訟弁護団
弁護士 中島 康之
 平成19年10月9日午前10時から被告側の証人である福岡正博証人の反対尋問が行なわれました。9名の原告側弁護士が福岡証人に対して尋問を行ないました。最初に,中島晃弁護団長が,ヘルシンキ宣言(ヒトを対象とする医学研究の倫理的原則)を示して,福岡証人とアストラゼネカとの金銭的なつながりについて追及しました。反対尋問の中で福岡証人が代表を務める西日本胸部腫瘍臨床研究機構(WJTOG)が,アストラゼネカ社から毎年2000万円もの寄付を受けていることが明らかになりました。

 次に,吉田弁護士が,被害を拡大させた大きな要因の一つであるアストラゼネカ社の広告宣伝について−イレッサが認可される前から有効かつ安全な薬である旨の宣伝を行なったことについて追及しました。

 その後,永井弁護士が,抗ガン剤の有効性評価の基本は延命効果の確認であることを確認するための尋問を行ないました。福岡証人は主尋問で,抗ガン剤の有効性は延命効果だけでなく,腫瘍縮小,QOL等も総合評価する」と述べていたのに対し,延命効果が最も重要な指標であることを認めざるを得ませんでした。

 さらに,冨増弁護士は,腫瘍が縮小しても延命効果には結びつかないことについて追及しました。福岡証人が,腫瘍縮小効果と延命効果との相関について執筆した論文が,背景因子や症例登録数,試験前の治療方法も異なる,本来は単純比較できないような臨床試験を集めてきたものにすぎないことが明らかになりました。

 また,住田弁護士は,第U相試験のIDEAL1・2試験及び第V相試験INTACT1,2試験について追及しました。IDEAL1,2試験ではイレッサの反応率について,ドセタキセルの他の臨床試験の結果みられた反応率と比較していることが,従来から「怠け者の比較法」として批判されている方法であり,およそ医薬品の有効性の根拠となりえない旨の指摘をしました。

 続いて,中島(康)弁護士は,ISEL試験におけるサブグループ解析の問題点について,探索的な仮説に過ぎず,有効性の根拠となり得ないことを追及しました。さらに,対ドセタキセルとの比較試験においても,福岡証人の意見は統計学的にも間違った見解である旨の指摘がなされました。長谷川弁護士は,イレッサにはスーパーレスポンダーという非常に顕著な効果が得られる患者がいるという福岡証人の意見に対して,有効性は比較臨床試験でしか確認できないこと,未認可の丸山ワクチンにおいても完全寛解(CR)がみられた症例が多く報告されている旨の指摘がありました。

 午後からは,まず武田弁護士が,イレッサの臨床試験においては,その有害事象例について,イレッサとの因果関係の評価が適切になされず,また,間質性肺炎の副作用報告の検討が不十分であったことについて,福岡証人を質しました。そのなかで,イレッサの臨床試験においては,「医薬品の臨床試験の実施に関する省令」(GCP省令)に違反していた事実が国に対しても報告されていたことや,承認前に間質性肺炎による副作用死亡例が相当数報告されていたにもかかわらず,アストラゼネカ社はこれらを全く軽視していたこと等が明らかになりました。

 最後に,玉村弁護士から,イレッサについては市販後全例調査をすべきであったことについて,塩酸イリノテカン(承認前における日本人データ415例),S−1(承認前における日本人データ129例)と比較しての追及がなされました。その中で,福岡証人は,副作用として頻度が5%程度なければ添付文書の警告欄に記載しなくてもよいといった,驚くべき証言がなされ,原告弁護団から厳しく追及を受けました。
以上