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●浜医師反対尋問(弁護団報告)●
薬害イレッサ西日本訴訟弁護団
弁護士 中島 康之
 平成19年5月11日午前10時から,前回に引き続き,原告側証人・浜六郎医薬ビジランス研究所所長の反対尋問が行なわれました。
アストラゼネカ社の反対尋問
 QOLが改善すれば,抗ガン剤としての有効性があるのではないか,という質問に対して,QOLというのは,多義的であるので定義が難しい,客観的な指標にはならない。延命効果−生存期間や生存率という客観的な指標が優先されると証言されました。また,癌患者にとってQOLは延命効果と同じくらい重要ではないか,との質問がありましたが,QOLよりも延命効果の方が重要だとの証言がなされました。
 イレッサに関する意見について,アストラゼネカ社が因果関係がないとして修正を求めた点に関する質問に対して,動物実験の結果や全体の症例を見れば,因果関係が否定できない,ICHの基準によれば副作用死であると判断しなければならない,治験医師は動物実験のデータを知らされておらず,また全体の情報が与えられていないなどの情報不足の中で判断したものである,因果関係を否定すべきと主張するのであればケースカードなどの情報を公開すべきである,と証言されました。
 浜証人が主尋問で,EGFRについて組織再生について重要な鍵になっている旨の証言をされたことに対して,アストラゼネカ社が何か文献はあるのかという反対尋問をしていましたが,そもそも,EGFRに関する文献はアストラゼネカ社が提出した中に含まれていたものであり,奇しくもアストラゼネカ社が,イレッサの作用機序に関する重要な文献を全く検討していないことが露呈した結果になりました。
 アストラゼネカ社は浜証人の専門性を試すために,毒性病理学会などの会員かとの尋問をしましたが,浜証人からは,日本トキシコロジー学会(旧日本毒科学会)から招待されてシンポジウムで発言したこともあるなどと,証人の専門性が学会からも認められている旨の証言がなされました。
 統計学的に,有効性を判断する場合と危険性を判断する場合とで基準(p値)が変わってもいいのかという質問に対しては,副作用の重大性に鑑みれば,基準が変わることは何らおかしくないことで,現に厚労省もp値を0.2として判断したこともある(統計学的には,通常p値を0.05とすることが多い。)と証言されました。
 アストラゼネカ社の反対尋問は,全体的に証人を無意味に試すような質問,証拠を出していないにもかかわらずアストラゼネカ社の主張が間違っていないことを前提にした質問に終始していた。
国の反対尋問
 有害事象のうち,因果関係が否定できないものを副作用とすれば,承認ができなくなるのではないかといった質問に対しては,有効性と有害性のバランスが大事であり有効性の判断は客観的な生存期間を重視すべきであるとの証言がなされました。
 動物実験の結果が必ずしも人に当てはまらないのではないのか,という質問に対しては,動物で出た毒性はかなりの確率で人にも生じる,役に立つからこそ動物実験をすると反論がなされました。
 また,イレッサの毒性は永井教授の論文によって,このような被害が生じることは十分予見できた旨の証言がなされました。
 イレッサとドセタキセルとの比較試験において,イレッサは4件もの副作用死が出たが,ドセタキセルでは副作用死はでなかったこと,添付文書には間質性肺炎について死亡例があったことを記載すべきであった,との証言がなされました。
以上



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