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薬害イレッサ 西日本訴訟・第14回(1月31日)期日
福島教授への被告側反対尋問のご報告
薬害イレッサ訴訟 西日本弁護団
弁護士 中島 康之
1 平成19年1月31日午後1時15分から,前回に引き続き,京都大学医学部附属病院 外来化学療法部部長,福島雅典教授の反対尋問が行なわれました。
2 アストラゼネカ社の反対尋問。
 まず,福島教授が部長を務めておられる外来化学療法部での治療目的が,患者のQOL(生活の質)を維持すること点にあるのではないかという質問がありました。これは被告会社の「イレッサは患者のQOLの改善に役立っている。」という主張を意識したものです。これに対して,重視しているのは癌の国際的標準治療を提供することであって,QOLが改善されるのはその結果に過ぎないという証言がなされました。
 また,イレッサの使用については,基本的に使用すべきでないこと,アメリカでもヨーロッパでも使用されていないこと,承認は取り消されるべきであることを,主尋問の際と同様証言されました。
 抗がん剤の死亡率の許容範囲は2〜3%ではないのか,との質問に対しては,敢えて高容量の抗ガン剤を試すような臨床試験では,結果として死亡率が2〜3%になることがあったとしても,本来,死亡率の許容範囲などという概念はないということを強調されました。
 腫瘍縮小効果に関する反対尋問では,腫瘍が縮小しても完全に消失すること(CR)は極めて稀であること,腫瘍が一部縮小(PR)しても一時的なものであれば意味がない,と証言がなされました。
 PRの場合でもQOLの改善につながるのではないか,との質問に対しては,腫瘍の縮小とQOLの改善とは関係ない,仮にQOLが改善したとしても死亡したのでは意味がない,全くナンセンスな議論であると切って捨てました。
3 国の反対尋問
 添付文書の記載について,承認以前に出た有害事象については添付文書に記載すべきである,特に間質性肺炎のように致死的な疾患については警告欄に記載があれば全ての医師が注意するので絶対に必要であること,警告欄に記載があるのとないのとでは医師の受け止め方が全く違うことなどが再度強調されました。
 市販後の調査について全例登録調査でなくても,イレッサは市販直後調査をしているのではないのかとの質問に対しては,副作用情報を全て収集し被害を最小限に食い止めるためには,精度が高く調査対象が多い全例登録調査が必要であったことを証言されました。
 適応限定については臨床試験時の患者適格基準に従って適応を限定すべきであることが改めて指摘されました。これに対して,適応をはずれた患者さんにはイレッサを投薬されるという選択肢がなくなるがそれでもよいか,との質問がなされましたが,有効性が証明されておらず,安全性にも大きな問題があるイレッサが使えなくても構わないこと,抗がん剤の真のエンドポイントは延命効果であり,PRでは延命に直結しないこと,PRがあっても安全性−副作用を考慮しなければならないこと,そして,イレッサは回収されるべきであること,が再度強調されました。
 間質性肺炎の重篤性について。間質性肺炎は酸素濃度が低下して七転八倒する苦しみである。ステロイドに反応しなければ対処が出来ない。例えば,イレッサと同様に間質性肺炎を引き起こす可能性のあるブレオマイシンは蓄積毒性であることから管理が可能である。しかし,イレッサは経口薬であり間質性肺炎が発症した時点では薬の血中濃度が最高になっているので管理できないと証言されました。
4 再主尋問
 イレッサは,EUではISEL試験の結果を受けて承認を取り下げた。アストラゼネカの本社があるイギリスでも使用されていない。アメリカでも新規患者への使用はされていない。ICH(日米EU医薬品規制調和国際会議)加盟国でイレッサを使用しているのは日本だけである。このような状況は,日本人がカモにされて収奪されていると言っても過言ではない。日本が科学立国を目指すのであれば日本国民を守る手だてをとる必要があるという言葉で尋問を締めくくりました。