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薬害イレッサ 西日本訴訟・第13回(11月13日)期日
福島教授・原告側証人尋問のご報告
薬害イレッサ訴訟 西日本弁護団
弁護士 中島 康之
福島教授主尋問

  平成18年11月13日午後1時15分から,原告側証人として福島雅典教授の主尋問が行なわれました。福島教授は,京都大学医学部附属病院教授,探索医療センター検証部部長,京都大学医学部附属病院 外来化学療法部部長,併任 (財)先端医療振興財団・臨床研究情報センター 研究事業統括として活躍され実地医療としてガン化学療法に携わってこらました。また,他方で薬剤疫学の研究者として,薬害の防止をテーマとされてこられた方です。
1 まず,冒頭で福島教授は,イレッサの問題点について,本当の意味での信頼できるデータがないままに承認がされたこと,外国ではぜんぜん通用しない未熟なデータだけで承認された,延命効果について十分に証明されないまま承認された,ということを端的に指摘されました。

2 厚労省の対応について
  イレッサの承認については,臨床試験,臨床試験外の使用で急性肺障害・間質性肺炎による死亡例が出ており,安全性に問題があることが分かっていたこと,比較臨床試験の結果が出ていなかったことから承認すべきではなかったことは明らかである。自分が審査委員であったら絶対に承認しない,と断言されました。

  さらに,厚労省が承認前までに40例の肺障害とそれによる22例の死亡例という副作用報告を受けていたにもかかわらず「症例の集積を待って検討」としたことについても,「医師が(イレッサと)関連性ありとしているのに,『集積を待って』として添付文書に記載しなかったのか全く不可解である。医師として許し難いと今でも思っている。」「これだけ多くの副作用死亡例が出ているのが分かっていながら『症例の集積を待って検討』としてイレッサを承認したことは,言語道断である。医師と患者を騙したといえる。どういう意図の下で承認がなされたのか知りたい」と述べられました。

  全例調査しなかったことについて,一定の副作用が臨床試験の段階で起こっていたことは市販後にも起こるというシグナルなのだから全例調査をしなければならない,「(全例調査は)世界に誇るべき薬害防止のための手段である。薬害を根絶できる方法を開発し,過去に実行しておきながら,なぜ今回これをしなかったのか裁判で明らかにしてもらいたい。」と厚労省の対応を厳しく非難されました。

3 アストラゼネカ社について
  アストラゼネカ社が,EAP(治験外使用)症例の副作用報告について,GCP(医薬品の臨床試験の実施の基準)に準拠して実施されていないので信頼性が劣るなどと主張していることに対しては,@EAP症例は,市販後に近い状況で使用されるので,そこで報告された副作用は重視すべき。A臨床試験は環境のいい患者を選んで行っている。そのような臨床試験で出たデータはそのまま実地臨床に適用できるのが常識である,として一蹴されました。

  添付文書の警告欄に間質性肺炎を記載しなかったアストラゼネカ社の対応については,間質性肺炎の怖さを知っていればおよそあり得ない対応である,間質性肺炎は基本的に不可逆的であり,マネージできない副作用なので,見落としがないようにするためにも是非とも警告欄に表示することが必要であった,と証言されました。
  また,急性肺障害については頻度不明だから警告欄には記載する必要がないというアストラゼネカ社の主張についても,「事実と違う。頻度は明らかであった。厚労省の通知にも反することは明らか。」と厳しく糾弾されました。

4 抗ガン剤での副作用における死亡率について
  福島教授は,「抗ガン剤の副作用で2〜3%の死亡率が当たり前,などという見解は極めて非科学的で医者として許せない。医師が適切にリスクを管理すれば抗ガン剤の副作用で死亡することはほとんどない。京大病院の化学療法部の実績でも2005年度に抗ガン剤の副作用による死亡は0件である」と証言されました。

5 最後に,福島教授は,イレッサ薬害について「これまでの我が国で薬害を引き起こしてきた要因が全て含まれており,イレッサは最大の薬害である。」と証言されて,主尋問は終了しました。