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2011年12月15日・午前11時より,大阪高等裁判所202号法廷において
薬害イレッサ西日本訴訟控訴審第2回裁判が開かれました
 裁判は,11:00に開廷,まず一審原告代理人の武田弁護士より意見陳述が行われました。
1. イレッサによる被害の本質 (本訴訟で問われているもの)について
2. イレッサ承認時までに間質性肺炎の副作用に関しどのような事実が判明していたかについて
3. イレッサ承認時までに判明していた事実を踏まえると承認時点でどのような注意喚起を行う必要があったかについて
4. 承認時における第1版添付文書の記載は,注意喚起として十分であったかについて
2002年7月のイレッサ承認時において,少なくとも23人が間質性肺炎の発症と報告され,その内13人が死亡しているという,極めて具体的な危険性が判明していた。したがって,イレッサの添付文書における指示・警告としては,こうした具体的な危険性が実質的に医療現場の医師に伝わるものである必要があった。しかし,実際には,イレッサの第1版添付文書は,一般に薬剤性間質性肺炎が概して予後良好であり,イレッサのような分子標的薬は副作用が少なく安全な薬であるという認識がなされている中で,上記のような承認時に判明していた具体的な危険性を医療現場に伝えていなかった。そして,その結果,このイレッサ訴訟の被害者を始めとして承認直後にイレッサによる副作用被害が集中的に生じる結果となったのである。これらのことからすれば,イレッサの第1版添付文書に指示・警告上の欠陥があり,そのような指示・警告上の欠陥のある医薬品によって生じた被害について,一審被告らの責任があることは明らかである。・・・と陳述が行われました。
 続いて,一審原告代理人の住田弁護士より意見陳述
被告国の,添付文書に関する指導的権限の行使の裁量を広げようとする主張は,いずれも誤っているのは明らかであること,東京地裁判決は,医薬品添付文書の重要性とこれに対する国の権限行使に重要性を指摘した上で,「医薬品の安全性確保のために必要な記載が欠けているのに放置したり,一応の指導をしたのみで安全性確保を貫徹しないままにすることは,医薬品による国民の健康被害を防止する観点からは許されない」として,一審被告・国の責任を認めている。この判断は,クロロキン最高裁判決の枠組みの中で,筑豊じん肺,関西水俣病の両最高裁判決にみられる国民の生命,身体の安全のために求められる一審被告・国の責任を的確に判断したものである。一審被告・国が,イレッサの添付文書の記載に関する適切な指導を怠ったことは,著しく不合理であり,国家賠償法上の違法は免れない。と,第1版添付文書の記載に関する一審被告・国の主張に対する反論を踏まえながら陳述が行われました。
 続いて,一審原告代理人の永井弁護士より意見陳述
東京高裁判決の問題点,副作用症例の評価と安全性確保義務,添付文書の対象となる医師等の認識について延べました。・・・東京高裁判決は,これまでの公害,薬害事件の裁判判例からすれば,極めて異質且つ得意なものと位置づけられることは明らかで,大阪高裁がこのような誤った判断をされるとは考えられないが,このイレッサ被害の本質を理解され,これまでの薬害被害の教訓をふまえた,公正,適切な判断をされるよう求めますと陳述を行い,原告側による意見陳述は終わりました。
 この後,被告国による陳述が行われ
原告等は,このイレッサの被害は国に責任があると主張しているが,イレッサの処方は専門医が行っていたのであり,他の薬剤でも間質性肺炎は発症していること,医師であれば当然危険性は認識出来たし肺がん治療に携わる医師は認識すべきである。国として,アストラゼネカ社に対し指導を行い,また,各・医療現場に対しても指導を行って来た。この訴訟は速やかに棄却されるべきものと考える。と述べました。
要するに,国としては危険性について十分に指導を行って来たことで,このイレッサは癌医療の専門医が処方していることで,専門医であれば当然危険性は認識出来たし肺がん治療に携わる医師は認識すべきで,このイレッサの被害は医師側に全ての責任があると主張しています。
 つづいて,アストラゼネカ社の代理人も意見を述べ
原告等の高裁判決に対する主張は誤りで,東京高裁判決は,注意喚起の適否を述べているものである。イレッサの承認当時のデータをありのままに見て頂きたい。2002年7月承認当時は,警告欄までの記載は必要なかったと主張,イレッサを市場から無くさないで下さいと述べました。
このアストラゼネカの主張,前回の裁判でもアストラゼネカの代理人が述べていましたが・・必要としている患者のために,このイレッサを残してください,と世間を欺いた主張を繰り返し行っていますが,私たち原告は,イレッサの販売停止とか回収などをこの裁判の中で求めてはいません。私たちが求めているのは,販売当初のあの被害について,指示警告上の違反があったために被害が起き,拡大したのではないか,承認前に明らかとなっていた危険情報の隠蔽,そして誇大な広告宣伝の違反によって全国の医師,患者が信じて処方・服用,結果大きな死亡被害が発生したのではないかと訴えているのであって,私たちの訴えの何処にも,イレッサの回収とか販売停止等は求めていません。
約1時間の原告側,,被告側の陳述が終了して,裁判所より次回期日について説明がありました。
次回の期日は来年の1月27日午前11時,次回期日で結審しますと述べられました。
・・●・・ 次回裁判で結審となります ・・●・・
期日は,1月27日(金)11時00分からです。
◆報告集会
裁判終了後,大阪高裁隣の弁護士会館において報告集会が開かれ,傍聴に引き続き,たくさんの方に来ていただきました。
医療関係では,たくさんの薬剤師のみなさんに,また,公害被害で日夜戦いを続けておられる皆さん,薬害被害者の団体からは,HIV被害の方,スモン被害,薬害ヤコブ,薬害C型肝炎の原告団からは温かな励ましのコメントを頂きました。他にも様々な団体からたくさんの方たちが応援に駆けつけて励ましのメッセージをいただき,東京高裁の判決が再び出されるとは努々思えないが,この被害の悲惨さと薬害根絶のために大きな力を結集して裁判所に訴えましょうと励ましのメッセージを頂きました。

一休み
東京⇔大阪間の移動旅費が往復で7000円という魅力に惹かれ68歳の体力の不安をはねのけて,経費節減にはうってつけと今回も高速バスを利用して大阪に行くことにした。新宿を23時20分に発車して大阪には翌朝8時過ぎに着く約9時間の長旅である。乗車のためにと到着した新宿駅南口は夜11時近い時間になると人もまばら,この時期の夜の寒さがさすがに身に凍みる。
新宿を発車してからは,只ごうごうとタイヤの音だけを響かせ夜の高速道路を大阪に向ってひた走る。MP3のイヤホンから流れてくる音楽を聴きながら,色んなことを考え,いろんなことを思い出す。経費節減のための夜行ではあるのだが,思えは何と贅沢なことか。座席の窮屈さ,隣のイビキを我慢さえすれば大阪までのたっぷりとした自分の時間を満喫できるのであるから,亦楽しからずやと考えて,「娘の命の重さを問う」戦いが終わるまでまだまだ走り続けなければ。
・・ お問い合わせ ・・
イレッサ薬害被害者の会
薬害イレッサ訴訟原告団団長
近 澤 昭 雄

電話・048-653-3998
FAX・048-651-8043
mail: iressa-higainokai@nifty.com
薬害イレッサ訴訟西日本弁護団
弁護団事務局長 永 井 弘 二
京都市中京区鳥丸通御地東入
アーバネックス御地ビル東館6階
御池総合法律事務所
電話075−222−0011
Fax075−222−0012


西日本訴訟(大阪高裁第3回裁判) 判決・(2012年5月25日)裁判報告