HOME > 裁判関連資料 > 西日本訴訟判決のご報告
2011年2月25日・大阪地方裁判所202号法廷において
薬害イレッサ西日本訴訟の判決が言渡されました
薬害イレッサ西日本訴訟は,2004年7月15日に大阪地方裁判所に提訴,第一回裁判が2004年11月1日に開かれて以降,実に6年半に渡り31回もの審理が行われ,漸く待ちに待った判決を迎えました。
■2時〜判決直前集会が大阪地裁前の西天満若松公園で開かれました。
大阪地裁前の西天満若松公園には,ガン医療の改革を望む大勢の支援の皆さんや,たとえ末期と言われる肺がん患者でも,死亡に至る確立が高い薬の使用には情報の開示をして納得の上の治療は当然であると,がん患者の命の重さをスローガンにして戦うこの訴訟に,大きな理解を示すたくさんの皆さんで埋め尽くされました。
薬害肝炎の原告の皆さん,
薬害ヤコブの被害遺族の皆さん
薬害スモンの被害者の皆さん,
大阪じん肺訴訟の原告の皆さん,
北海道からも,HIV訴訟原告の方も駆けつけてより良い判決をとエールを頂きました。
多くの皆さんがマイクを握って訴えました。
一人一人の命は何物にも替えがたく尊いもの,これまでの薬害被害を見れば一目瞭然,国の薬事行政は信用できない。アストラゼネカは,営利のみ追求しての販売がこの被害を起した。責任と謝罪を行えと訴えました。
他にも,さまざまな団体の皆さまに理解・支援を頂き,170名の皆さまで溢れました。
薬害訴訟・・1955年に発生したスモン薬害事件以来,これまで何度繰り返されたことでしょう。
人間の命を救う薬が原因である訳ですから,常に使用して効果のある患者が多く存在しています。大勢の患者が使用する薬には,誰かに効果があるから,大勢の患者の命を永らえているくすりであるからとの理由で,例え一部の患者であっても生命に関るような被害が発生した時は,これを見過ごすようなことがあっては決してなりません。被害が判明したなら,速やかな検証と被害の拡大防止を図るのは,くすりを開発し販売する製薬会社,そしてくすりを審査し承認を与える国の責務です。
この裁判,薬害イレッサ訴訟は,まさにこの事を問題として責任の所在を追求し求めている裁判であり,決してこのくすりの販売の停止・回収を求めるものではないのです。ただ,2002年の販売当初に出されていた安全情報には誤りがあったのではないかと,信じて服用し数日,数週間で死亡した遺族が事の真相解明と被害の拡大の防止,賠償を求める訴訟です。・・・とこのように裁判開始から一貫して訴え,理解を求めて参りましたが多くのバッシング,非難から私たち原告は逃れることは出来ませんでした。
このように辛い6年半もの戦いを経て漸く判決を迎えました。
■2時30分より支援の皆さまと共に大阪地裁へ入廷しました。
202号法廷は97席の傍聴が可能ですが,メディア用に用意された席を引くと約70人しか傍聴が出来ません。この日の裁判に集まった傍聴希望者は170人ということで抽選が行われ,抽選にもれた皆さんは,裁判所に隣接の大阪弁護士会の会議室にて待機して頂きながら弁護団より逐一報告がなされました。
■午後3時,裁判が開始。
裁判長より判決の骨子が読み上げられ,続いて判決要旨が読み上げられました。
裁判が開始して,僅か30分足らずで申し渡しは終了しました。
アストラゼネカに対しては厳しく断罪をしながらも,国に対しては玉虫色の判決となり全面勝訴は叶いませんでした。
◆判決は
被告アストラゼネカ株式会社は,原告○○に対し1485万円の金員を支払え,原告○○及び原告○○に対し,各495万円並びに各金員に対する平成14年10月2日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払えと申渡されました。
◆被告会社の責任では
被告会社は少なくとも第一版添付文書の重大な副作用欄の最初に間質性肺炎を記載すべきであり,また,イレッサとの関連性が否定できない間質性肺炎が致死的な転帰をたどる可能性があったことについて警告欄に記載して注意喚起を図るべきであった。そのような注意喚起が図られないまま販売されたイレッサは抗がん剤として通常有すべき安全性を欠いていたものと言わざるを得ず,平成17年7月当時のイレッサには製造物責任法上のいわゆる指示・警告上の欠陥があったと認められる。と被告・アストラゼネカを断罪しました。
◆被告・国の責任では
平成17年7月の輸入承認当時,イレッサの有用性を認めることができ,また,輸入承認前後の安全性確保についての被告国の対応が著しく合理性を欠くとは認められないから,被告国には,イレッサの輸入を承認したことや承認前後に必要な安全性確保のための権限を行使しなかったことについて国家賠償法上の違法はないとの判決が下されました。
◆判決の骨子と要旨は以下をご覧下さい。
薬害イレッサ訴訟 <2011年2月25日> 判決・主文の骨子と判決理由の要旨
◆報告集会が開催されました。
午後4時より,中之島公会堂において,報告集会が開催され,ここでも大勢の皆さまに参加して頂きました。広い会場いっぱいに支援の皆さんで埋め尽くされました。
この支援の皆さんと共に,6年半もの長い戦いを続けて参りました。
多くの皆さまから勝利のメッセージを頂きました。ガン患者に命の重さはあるのか・・がん患者の最後の権利とは何か・・
安心・安全な抗癌剤として主治医により説明をうけて、自宅服用でも危険はありません・・の話しを信じて使用した薬。
自らが使用に承諾すれば例え翌日に間質性肺炎が発症して亡くなっても,それは,自己責任 ?
また・・・
一部の患者に効果があれば、一部の患者が被害に遭うのは仕方がないの ?
そんな疑問を、抗がん剤治療の不信や不満を、皆さまと共に訴え続けて参りました
私たちの訴えを裁判所は認めてくれました、そしてこの時間を皆と共に喜びを分かち合いました。
 戦い済んで・・・
2002年7月に販売が開始されて間もない頃に,私の娘もこのイレッサに大きな期待を懸けました。副作用等の問題は気にするほどでもなく、何よりすばらしい効果があることから次の治療薬として使用しても何も問題はないだろうとの医師の説明,そして,製薬会社から示されていた副作用に関する情報でも,軽い風邪のような症状があるが服用を中止すれば改善されると記されている使用に関する説明・承諾書を信じて,多くの患者たちは微塵の疑いも持たずに服用。しかし次々と倒れて行きました。みるも悲惨な苦しみを味わいながら亡くなっていきました。
あれから9年の歳月が流れました。
まだまだ解決したわけではありませんが,一先ずは安堵できる判決が得られてすこし嬉しく思っています。これまで多くの皆さまのご支援を頂き何より有難うございます。
・・ お問い合わせ ・・
イレッサ薬害被害者の会
代表 近 澤 昭 雄

電話・048-653-3998
FAX・048-651-8043
mail: iressa-higainokai@nifty.com
薬害イレッサ訴訟西日本弁護団
弁護団事務局長 永 井 弘 二
京都市中京区鳥丸通御地東入
アーバネックス御地ビル東館6階
御池総合法律事務所
電話075−222−0011
Fax075−222−0012

西日本訴訟(大阪高裁)・第1回裁判・(2011年10月27日)裁判報告