京都大学医学部附属病院教授 福島雅典先生の原告側証人尋問を傍聴して

医療被害者救済の会代表 野間幸子


 薬害イレッサ西日本訴訟が提訴されてから2年4ヵ月の月日が経とうとしている2006年11月13日、大阪地裁202号法廷で原告側証人として京都大学医学部附属病院教授の福島雅典先生の主尋問が行われました。

 医療現場でガン患者の苦しみを診ておられる福島先生は、阻止できたはずの薬害被害を防ぐことができなかった悔しさ、多くの被害者を出した現状に、医師として怒りを込めて証言されました。

 尋問は様々な角度から行われましたが、福島先生が訴えられたことは一貫しており、「イレッサが承認されたこと事態が信じられないことである」ということと、「間質性肺炎は警告とし、使用範囲を絞り、全例調査すべきだった」この三つのことを実施していればこの様な被害を生むことはなかったということであったと思います。

 医師の管理化のもと、適切な使い方をすれば抗ガン剤の副作用で患者が亡くなることはほとんどなく、国がイレッサを承認したことについては、科学的根拠に基づいておらず、科学を無視しており、科学を愚弄していると断言され、未だにイレッサを認可し続けている現状については、「答案を書いた人が採点をしてはだめでしょう」と述べられました。

 そして、イレッサは最大の薬害であり、薬剤疫学、薬害防止の点からも、どうしてイレッサが承認されたのか、「国は分らなかったのか、何らかの理由で承認されたのか」「過失か意図があってのことか」この裁判で明らかにしてほしいと強く訴えられました。

 「被害を防ぐことができたはずなのに」と悔しさの余り、尋問途中で言葉がつまり涙ぐまれた瞬間があったようにさえ感じられた証人尋問でした。

 私も支援者として、また一般市民としてイレッサが承認されるに至った状況を明らかにしていただきたいと思います。

 イレッサ薬害被害の生存患者である清水さんは、その苦しさの余り、奥さんに「俺を殺してくれと訴えた」と本人尋問で証言されました。イレッサ薬害被害者の会の代表である近澤さんはじめ家族を失った原告の方々は、愛する家族がイレッサにより苦しみ、苦しみながら亡くなった光景が未だに脳裏に焼き付いていることでしょう。その苦しみが、病によるものではなく人為的に及ぼされたとすれば、「絶対に許せない」と思うのは人として当然のことでしょう。

 本来、患者の苦痛を取り除くための薬が、更なるより一層の苦痛を与えることは許されないことです。

患者にとり苦しい副作用も、延命、治癒の可能性があってこそ耐えられることだと思います。

 企業の利益を優先し、薬剤の承認、販売が軽々しく行われること、患者の命や人権が軽んじられることは決してあってはならないことです。

 福島先生の証人尋問は、怒りと悔しさがひしひしと伝わる証人尋問でした。ガン患者の方にこそ聞いていただきたい証人尋問でした。薬害イレッサ訴訟を支援している私にとり、薬害イレッサ訴訟の社会的意義を再確認した証人尋問でした。今後もしばらくの間、証人尋問は続きます。現在イレッサを服用している方、また、イレッサを使用しようかどうかを迷っている方、薬害イレッサ訴訟に異議を唱えている方、様々な立場の方に傍聴していただきたいと思います。

 尚、今回の裁判傍聴に足を運んでくださったにもかかわらず、満席のために傍聴していただくことができなかった皆様には本当に申し訳ございませんでした。心よりお詫び申し上げます。

 薬害イレッサ訴訟は、まさに、「ガン患者の命の重さを問う」訴訟です。今後のガン治療薬の開発、承認の指針となるであろう薬害イレッサ訴訟を、「二度と薬害被害が起こらないように」との願いを込め今後も支援していきたいと思います。一人でも多くの方に支援の輪に加わっていただければと思います

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